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新たな決意ーアントーレside 2ー
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ラフィアンが学園に入学して、もう三年目になる。相変わらず彼は私の傍には寄ってこない。
純粋に彼は彼の学生生活を楽しんでいるらしい。今の彼には私はいないも同然だ。
いや、油断はならない。影で何か企んでいるか、そこまででなくても、私を悪し様に言っているかもしれない。
私は彼に優しくは無かった。
彼に愛情を示していなかった。
私は不安になって、時々彼の様子を伺った。
彼は......いつも笑顔で楽しそうだ。
私は彼の姿を見るたびに胸が苦しくなるのを感じた。それでも見ずにはおれなかった。
日の光をはじく淡い金色の髪、上気した薄紅色の頬、よく語りよく笑う薔薇色の唇、生気に満ちた瞳ーかつての彼とは百八十度ほども違う。
でも、彼は間違いなくラフィアン・サイラスなのだ。
ある日、こっそり剣の授業を覗きに行って、彼に見つかった。あまりに信じられない光景に油断したのだ。
彼に腕を掴まれて、私は狼狽した。
いきなり脈拍がはね上がった。
「離せよ!」
私は彼の手を振りほどいた。あの時の事を思い出して、身体が強張った。
彼の目に、一瞬、哀しげな色が浮かんだが、いつもの彼の顔に戻って、ぷくっと頬を膨らませた。
咄嗟に自習になったから息抜きに散歩に来た......と苦しい言い訳をしたが、剣術師範はそれ以上追及しなかった。代わりに彼の剣の稽古の相手をするように私に命じた。
そして、私は驚いた。以前の彼がそのままだったら、剣を握るのも怖がったろうし、まともに振り上げることもできないはずなのに。
彼は、ラフィアンは勢い良く斬りかかってきた。稽古用の剣とはいえ、その力強さに思わずたじろいだ。
いつしか本気になって受けていて.....体力と力の差はあるから敗けはしなかったけど、彼は本当に強かった。
私は改めて剣の稽古に本腰を入れることにした。父上に教官もつけてもらった。
けれど、もっと驚いたのは学園祭の時だ。
彼は同級生を庇って不良の上級生と喧嘩をしていた。
ラフィアンを探していた時.....いや、やましい気持ちではなく、どこで楽しんでいるのか知りたかっただけだ。
最初に絡まれていた学生ークリスと言ったか、彼が真っ青になって走ってきて、ラフィアンが危ないと叫んだ。
私は急いで現場に向かった。レイトン先生がついてきた。
そして現場に到着した時、事件は終わっていた。いや、終わった。私の目の前で長身の赤毛の少年が次々と不良を殴り倒し、もうひとりの黒髪の少年が主犯らしい生徒を魔法で縛りあげていた。
私がラフィアンを彼を助けたかったのに、彼らが先に私の役割を奪ってしまった。
「ラフィ、血が出てる」
せめて保健室には連れていきたかったのに、
「大丈夫、大した怪我じゃないからひとりで行ける」
そう言って、私に同級生の少年を預けて、ふたりの友人と立ち去っていった。
そして、ラフィアン・サイラスはその美貌にも関わらず、ミスコンにエントリーもしてなかった。私が青薔薇の冠を被せたかったのに。
ラフィアンは客席で友人達と談笑しながら、私が彼の同級生に冠を被せると、大きな拍手をした。
私はラフィアンに冠を被せたかったのに。
前日にわざわざ級友にミートパイを作ってもらったのも、三年生の模擬店に並んだのも、彼の笑顔が見たかったからだ。
確かに彼は私に笑いかけてくれた。売り子として、実に愛想よく振る舞ってくれた。
でも、それでは私は満足しない。
傍らに座っていた赤毛の少年に笑い掛けるように、心から私に笑い掛けて欲しい。
私は冠を被せた少年を利用......ゲフンゲフン。
ラフィアンの同級生、クリスの協力を求めることにした。
彼ークリスの提示した条件は驚くべきものだったが、私は承諾した。
彼が、ラフィアンが笑顔を向けるべきなのは、婚約者の私なのだ。あの赤毛の少年じゃない。
私は、それを、彼に思い知らさねばならない。
純粋に彼は彼の学生生活を楽しんでいるらしい。今の彼には私はいないも同然だ。
いや、油断はならない。影で何か企んでいるか、そこまででなくても、私を悪し様に言っているかもしれない。
私は彼に優しくは無かった。
彼に愛情を示していなかった。
私は不安になって、時々彼の様子を伺った。
彼は......いつも笑顔で楽しそうだ。
私は彼の姿を見るたびに胸が苦しくなるのを感じた。それでも見ずにはおれなかった。
日の光をはじく淡い金色の髪、上気した薄紅色の頬、よく語りよく笑う薔薇色の唇、生気に満ちた瞳ーかつての彼とは百八十度ほども違う。
でも、彼は間違いなくラフィアン・サイラスなのだ。
ある日、こっそり剣の授業を覗きに行って、彼に見つかった。あまりに信じられない光景に油断したのだ。
彼に腕を掴まれて、私は狼狽した。
いきなり脈拍がはね上がった。
「離せよ!」
私は彼の手を振りほどいた。あの時の事を思い出して、身体が強張った。
彼の目に、一瞬、哀しげな色が浮かんだが、いつもの彼の顔に戻って、ぷくっと頬を膨らませた。
咄嗟に自習になったから息抜きに散歩に来た......と苦しい言い訳をしたが、剣術師範はそれ以上追及しなかった。代わりに彼の剣の稽古の相手をするように私に命じた。
そして、私は驚いた。以前の彼がそのままだったら、剣を握るのも怖がったろうし、まともに振り上げることもできないはずなのに。
彼は、ラフィアンは勢い良く斬りかかってきた。稽古用の剣とはいえ、その力強さに思わずたじろいだ。
いつしか本気になって受けていて.....体力と力の差はあるから敗けはしなかったけど、彼は本当に強かった。
私は改めて剣の稽古に本腰を入れることにした。父上に教官もつけてもらった。
けれど、もっと驚いたのは学園祭の時だ。
彼は同級生を庇って不良の上級生と喧嘩をしていた。
ラフィアンを探していた時.....いや、やましい気持ちではなく、どこで楽しんでいるのか知りたかっただけだ。
最初に絡まれていた学生ークリスと言ったか、彼が真っ青になって走ってきて、ラフィアンが危ないと叫んだ。
私は急いで現場に向かった。レイトン先生がついてきた。
そして現場に到着した時、事件は終わっていた。いや、終わった。私の目の前で長身の赤毛の少年が次々と不良を殴り倒し、もうひとりの黒髪の少年が主犯らしい生徒を魔法で縛りあげていた。
私がラフィアンを彼を助けたかったのに、彼らが先に私の役割を奪ってしまった。
「ラフィ、血が出てる」
せめて保健室には連れていきたかったのに、
「大丈夫、大した怪我じゃないからひとりで行ける」
そう言って、私に同級生の少年を預けて、ふたりの友人と立ち去っていった。
そして、ラフィアン・サイラスはその美貌にも関わらず、ミスコンにエントリーもしてなかった。私が青薔薇の冠を被せたかったのに。
ラフィアンは客席で友人達と談笑しながら、私が彼の同級生に冠を被せると、大きな拍手をした。
私はラフィアンに冠を被せたかったのに。
前日にわざわざ級友にミートパイを作ってもらったのも、三年生の模擬店に並んだのも、彼の笑顔が見たかったからだ。
確かに彼は私に笑いかけてくれた。売り子として、実に愛想よく振る舞ってくれた。
でも、それでは私は満足しない。
傍らに座っていた赤毛の少年に笑い掛けるように、心から私に笑い掛けて欲しい。
私は冠を被せた少年を利用......ゲフンゲフン。
ラフィアンの同級生、クリスの協力を求めることにした。
彼ークリスの提示した条件は驚くべきものだったが、私は承諾した。
彼が、ラフィアンが笑顔を向けるべきなのは、婚約者の私なのだ。あの赤毛の少年じゃない。
私は、それを、彼に思い知らさねばならない。
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