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イベント終わって日が暮れて......
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楽しかった学園祭も終わって、全力で脱力モードの俺、ラフィアン。
ぼーっと外を眺めてると、アントーレ王子と主人公が中庭て仲良くお話し中。良かった。良かった。
後は断罪イベントまで、みっちり親密度を上げてもらうだけ。つまりは、俺は実質、お役後免なんだよね。
主人公に敵対しない敵役って存在意義無いよね。でも、人に意地悪するの嫌いだしなぁ......。
はぁ......と大きな溜め息が漏れる。
「どうしたんだよ、ラフィ。元気ないじゃん」
ケヴィンが俺の顔を覗き込んで言う。
「学園祭、終わっちゃったな~ってさ。後は試験だけだろ?」
「学園祭って言えばさ、ラフィどうしてミスコン出なかったの?学園のアイドルなのに」
ニコルがずいっと椅子を寄せてきて俺の顔を覗き込む。
「よせよ。僕はアイドルなんて柄じゃない」
そう、俺にとってアイドルは見るもので、なるものじゃない。
両手に七色のサイリウム持ってステージでキラキラ輝く可愛い子を力いっぱい応援して、ニコニコの笑顔を見るのが、明日の活力。やれと言うならオタ芸だって披露するぞ。下手クソだけど。
「そんなことないだろ。学園イチの美形って評判なんだぜ。出てくれたら、ダントツで優勝だったのに」
「出ません!......アイドルってのは、クリスみたいな子を言うんだよ」
俺は親指の先で、くいっと庭先を指差す。そう、彼みたいに可愛くて、いたいけで、守ってあげたくなるような子がアイドルに相応しい。
アイドルは、上級生相手に喧嘩なんかしない。金蹴りやら頭突きなんてご法度だ。そうだろう?
「そう言えばさ......」
ケヴィンが急に神妙な顔をした。
「ラフィって、アントーレ殿下の婚約者なんだろ?」
「そうだけど......子どもの頃のままごとみたいな約束だから」
そう、元のゲームでは、来年の学年末、アントーレ王子は卒業パーティーで俺に婚約破棄を突き付けて、主人公に対して行ってきた数々の罪を断罪する。
でも、今の俺は彼になんの悪さもしてないから、きっと断罪は無いよね。わかんないけど、ヤバいイベントはもう無いはず。ただ婚約破棄されるだけ。
「けどさ......」
ケヴィンが声をひそめて言ったのは意外な言葉だった。
「ラフィは、アントーレ殿下のこと、嫌いなの?」
「別にそんなこと無いけど、なぜ?」
そんなに表に出てきてたのか?ヤバいな。いや、そんなに大嫌いってほどじゃないけど、アイツ、ポンコツだし、ガキだし。それ以前に俺は男の嫁になる気は無い。
「なんか......ラフィはいつも王子に会うと苦しそうな、泣きそうな顔してたから.....何かあったのかと思って」
「え、何も無いよ」
俺、そんな顔してたのか?知らなかった。ゲームの企画書のキャラ書き見て、ゲーム作りながら、やなヤツだな~ポンコツだな~とは思ったけど、そんなに深く思い入れるようなことは無かった。
少なくとも、前世を思い出してからは。
チクリ、と胸が痛んだ。
ー何かあったのか?ー
前世を思い出す前、ラフィアンが俺の記憶を取り戻す前に、なにがあったんだろう。
俺のラフィアンとしての記憶は、あの階段から転げ落ちた後から始まっている。
それでも、俺の中に確かに、アントーレを怖がっている自分がいる。アントーレを見ると、何故か哀しい気持ちになってしまう俺がいる。
ー何故だ......?ー
このストーリーは、と主人公とのハッピーエンドは俺が望んでいる事なのに。
でっかい夕日が空を真っ赤に染め上げていた。
ぼーっと外を眺めてると、アントーレ王子と主人公が中庭て仲良くお話し中。良かった。良かった。
後は断罪イベントまで、みっちり親密度を上げてもらうだけ。つまりは、俺は実質、お役後免なんだよね。
主人公に敵対しない敵役って存在意義無いよね。でも、人に意地悪するの嫌いだしなぁ......。
はぁ......と大きな溜め息が漏れる。
「どうしたんだよ、ラフィ。元気ないじゃん」
ケヴィンが俺の顔を覗き込んで言う。
「学園祭、終わっちゃったな~ってさ。後は試験だけだろ?」
「学園祭って言えばさ、ラフィどうしてミスコン出なかったの?学園のアイドルなのに」
ニコルがずいっと椅子を寄せてきて俺の顔を覗き込む。
「よせよ。僕はアイドルなんて柄じゃない」
そう、俺にとってアイドルは見るもので、なるものじゃない。
両手に七色のサイリウム持ってステージでキラキラ輝く可愛い子を力いっぱい応援して、ニコニコの笑顔を見るのが、明日の活力。やれと言うならオタ芸だって披露するぞ。下手クソだけど。
「そんなことないだろ。学園イチの美形って評判なんだぜ。出てくれたら、ダントツで優勝だったのに」
「出ません!......アイドルってのは、クリスみたいな子を言うんだよ」
俺は親指の先で、くいっと庭先を指差す。そう、彼みたいに可愛くて、いたいけで、守ってあげたくなるような子がアイドルに相応しい。
アイドルは、上級生相手に喧嘩なんかしない。金蹴りやら頭突きなんてご法度だ。そうだろう?
「そう言えばさ......」
ケヴィンが急に神妙な顔をした。
「ラフィって、アントーレ殿下の婚約者なんだろ?」
「そうだけど......子どもの頃のままごとみたいな約束だから」
そう、元のゲームでは、来年の学年末、アントーレ王子は卒業パーティーで俺に婚約破棄を突き付けて、主人公に対して行ってきた数々の罪を断罪する。
でも、今の俺は彼になんの悪さもしてないから、きっと断罪は無いよね。わかんないけど、ヤバいイベントはもう無いはず。ただ婚約破棄されるだけ。
「けどさ......」
ケヴィンが声をひそめて言ったのは意外な言葉だった。
「ラフィは、アントーレ殿下のこと、嫌いなの?」
「別にそんなこと無いけど、なぜ?」
そんなに表に出てきてたのか?ヤバいな。いや、そんなに大嫌いってほどじゃないけど、アイツ、ポンコツだし、ガキだし。それ以前に俺は男の嫁になる気は無い。
「なんか......ラフィはいつも王子に会うと苦しそうな、泣きそうな顔してたから.....何かあったのかと思って」
「え、何も無いよ」
俺、そんな顔してたのか?知らなかった。ゲームの企画書のキャラ書き見て、ゲーム作りながら、やなヤツだな~ポンコツだな~とは思ったけど、そんなに深く思い入れるようなことは無かった。
少なくとも、前世を思い出してからは。
チクリ、と胸が痛んだ。
ー何かあったのか?ー
前世を思い出す前、ラフィアンが俺の記憶を取り戻す前に、なにがあったんだろう。
俺のラフィアンとしての記憶は、あの階段から転げ落ちた後から始まっている。
それでも、俺の中に確かに、アントーレを怖がっている自分がいる。アントーレを見ると、何故か哀しい気持ちになってしまう俺がいる。
ー何故だ......?ー
このストーリーは、と主人公とのハッピーエンドは俺が望んでいる事なのに。
でっかい夕日が空を真っ赤に染め上げていた。
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