(転生)悪役令息は、バックレたい!

葛城 惶

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入学してしまいました......

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 結局、抵抗も虚しく、王立学園に入学してしまいました。俺、ラフィアン・ガルネク・サイラス、十三歳。トホホです。

 まあ寄宿舎に入らなくて済んだのがせめてもの救い。
 学園は王都のど真ん中にあるので、王都に屋敷のある学生はみんな通ってます。辺境に領地のある一部の子弟が寄宿舎住まい。まあノーマルな設定です。
 庶民の子もいます。成績優秀だったり、裕福な家の子も入学できます。

 マグリットはやっぱり士官学校へ、ルートヴィヒは魔法学校へ進みました。俺の我が儘で彼らの未来を閉ざす訳にはいかない。シナリオ変わって彼らには新しい未来が拓けてるんだから。

 な~んて士官学校は東に二ブロックいった先に、魔法学校は南に一ブロック行ったところにある。まあ王都の教育特区みたいなところに学校が寄せ集まっている感じ。
 
 元々のゲームのシナリオだと士官学校も魔法学校も、名前しか出てこない。ゲームはほとんど、学園の中か、サイラス邸、あとは王宮がちょびっと。マップもすんごく小さくて、β版のユーザーコメントでも散々指摘されてた。

 だから俺自身にとってもゲームのステージに出てこない場所は未知の世界。マグリットやルートヴィヒの学校が近かったのは超ラッキーだった。

 でも、それだって何時でも会える訳じゃない。マグリットの士官学校は団体行動を身に付けるために寄宿制だし、ルートヴィヒは研究に夢中になると、夜遅くまで学校に居残ってる。近くだけどなかなか会えない。やっぱり寂しい。

 だからと言って、あのバカ王子にすり寄る気には全くならない。
 アントーレ王子は僕よりふたつ年上で中等部の最高学年なんだけど、やっぱりアホです。

 いつも大勢の取り巻きを連れていて、問題起こしまくり。試験の後はいつも連中と一緒に補習を受けてる。街中でナンパしてる暇があったら勉強しろよ、な世界です。

 ゲームの元のシナリオだと、婚約者のラフィアンはそんなバカでも王子が好き。やっぱり取り巻き達を引き連れて、王子の気を引こうと一生懸命。
 悪い遊びを止めたり、すり寄ってくる下心ありありのビッチどもを蹴散らしたり、果てはカンニングの隠蔽いんぺいまでする。

 結局、それで鬱陶うっとうしがられて後から出てくる主人公に王子を取られて泣きを見るんだけど、今の俺は違う。

 まずラフィアン・サイラスは取り巻きを作らない。俺が欲しいのは本当の友達だけ。だから、おべんちゃらを言ってすり寄ってくるヤツはみんなガン無視。

 お茶の一杯も自分で淹れなかったラフィアンは、みんなのぶんのスコーンを焼いてくるぐらいに成長しました。もちろん師匠はマルタ。だから味も保証つき。
 
 でも、王子にはやらない。クラスの仲間とお茶会はするけど、学年違う王子は呼ばない。だって話が合わないじゃん?

 だから学園にいても王子とはまず会わない。すれ違った時に二言三言、交わすだけ。
 だって取り巻きいっぱい囲んでるし、悪巧みとナンパで忙しそうだし、俺の出る幕なんてありません。

 よくよく考えてみれば、一目惚れされたって、相手は五歳児だよ?
 五歳と三歳のままごと以前の会話をなんで大の大人が真に受けるの?
 で、なんで正式文書まで作るのさ。正気の沙汰とは思えない。

 まあ大人達の事情としてはさ、俺の親は王家に忠誠を示したかったろうし、王家は由緒ある公爵家を味方につけておきたい腹だろうけど、ちょっと気が早すぎないか?
というか短絡的過ぎるわ。

 俺も迷惑だけど、子どもの単純思考でつい言っちゃった王子はもっと後悔してると思う。あのポンコツぶりは、いわゆるグレてるのかもしれない。

 とにかく、どっちにしても俺は知ったこっちゃない。充分な知識と腕をつけたら、学園の卒業前に、断罪イベントの前に、この学園から、この都から、この国からバックレるんだから。


 で、学園でも友達出来ました。
 ひとりは貿易商の息子のニコル・シュタット。庶民だけど父親と船で海を渡ったこともあるタフで物知りなヤツ。だから同じ学年だけど、すこし年上。
 もうひとりはケヴィン・ターナー。辺境伯の次男坊で、冒険者を目指して家出した経験ありの無鉄砲だが、気持ちのいいヤツ。
 彼らのおかげで、俺の学園生活は楽しくなった。
 
 でも一番の楽しみはやっぱり週末に帰ってくるマグリットに士官学校の話を聞いたり、ルーの新しい魔術の成果を見せてもらうことなんだけど。


 


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