(転生)悪役令息は、バックレたい!

葛城 惶

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フォークダンスしか知りません

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 俺、ラフィアン・ガルネク・サイラス、10歳になりました。

 今日も、士官学校から帰ってきたトニー兄さんに剣術の稽古をつけてもらって、しごかれた。でも楽しい。
 俺、前世の須藤裕一は、高校ん時、一応は剣道部だったからさ、好きなんだよね。チャンバラとかさ。まあちょっと違うけど。

『なかなか筋がいいな』

 なんて、トニー兄さんに誉められて気分は爆上がり。けどやっぱり、一緒に稽古をしてるマグリットの方が強いんだよな。体格もいいしな。

 最初のビジュアル設定のせいか、相変わらず華奢でひょろっこいラフィアン。筋肉もつきにくい。でも、細いなりに筋力もついてきたから、まあいいか。

 でも今や親友のマグリットが、

ー士官学校に行きたいー

って言い出して、ちょっとショック。トニー兄さんは、マグリットには士官学校は向いてるって言ってたけど。うん、確かに俺もそう思う。マジ強いもん、こいつ。

 けどさ、俺も士官学校行きたいって言ったら、トニー兄さんに、『無理』って言われた。ついでに何処から漏れたのか、スウェン兄さんや親父にまでバレて説教された。

『ラフィ、お前は身体が弱いんだ。士官学校なんて無理だ。殺されてしまうよ』

 これは親父。母さんと一緒にオロオロしながら、説得してきた。典型的な過保護だな。大丈夫、今の俺はちゃあんと腕立て伏せ二十回はできるんだから。
 それより問題なのは、ご長男のスウェン兄さん。

『ラフィ、何を考えているんだ。お前は王立学園に入るんだ。先頃、アントーレ殿下も無事入学された。同じ学舎で学んで親交を深めるんだ』

 とても厳しい表情で俺の両腕を掴んで揺すぶる。止めなよ、その眉間の皺、イケメンが台無しだよ。甘いマスクで宮中でもモテモテなんだから、イメージ壊したらいかんよ、君。

 て言うか、俺はその『殿下のご学友』てのがイヤなんだよ。
 堅苦しいかチャラいか、どっちかしかいないようなお上品ぶった貴族の子弟達にチヤホヤされてさ。とんでもない俺様なバカ王子のお守りなんてまっぴらだ。

 でも、そうは言えないからさ。そんなことを言ったらー不敬罪だ!ーって、一時間はみっちり説教されて、おやつ抜きになっちまう。メイドのマルタお手製の絶品チーズケーキを取り上げられるのは辛い。

『だって僕、勉強得意じゃないし......』

 上目遣いでお願い、懇願。あそこはイヤ。人間腐る。別な意味でも。
 可愛い弟の哀願に、スウェン兄さんは無情に首を振る。

『ワグナー先生は、とても出来がいいと言ってたぞ。魔法学校にも推薦入学で入れるって』

『じゃあ、魔法学校に......』

 言い掛けた俺に、スウェン兄さんはとても大きな溜め息をついて、頭に手をあてた。

『ラフィ......素直でいい子だったのに。王立学園の何がそんなにイヤなんだ』

 あのバカ王子がいるからです。いや、いなくても貴族のアホどもに弄られるの、嫌。

『僕、社交とか苦手だから......ダンスとかできないし』

 そう前世では、バッチリ庶民だった俺。
社交ダンスなんて知りません。せいぜいが学校の体育祭前に無理やり練習させられたオクラホマ・ミキサーとかジェンカくらいしか知らない。あれだって女子の手を握るのがすごく恥ずかしくてイヤだった。

『ダンスなら、これからいくらでもレッスンできる。そうだ、私が教えてあげよう』

 見事に墓穴を掘りました、はい。



 で、なんでいつもパートナー・ポジションなのか。敢えて聞くのも、墓穴をもっと深めそうでイヤなので、沈黙のまま、スウェン兄さんに優雅にしごかれる俺でした。

 たまに兄さんの足を踏んづけるのは、超下手だから。決して憂さ晴らしとか腹いせとかではありません、念のため。




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