カマキリ人間

カマキリ人間

先日、祖父の家に行ったのだが
元気に歩いていた祖父の姿はなく
無情にも両手で杖をつきながら
喜ぶ顔を見せる祖父の姿があった
その姿はまるで「カマキリ」のようだった。

あまりにも曲がった腰を痛みながら
こちらへと歩み寄ってくる祖父
「大きくなったね」
その一言はいつも帰るたびに言われる
また、僕が大きくなるとともに
祖父の腰は曲がっていく

私は祖父に長生きして欲しいと思うが、
あまりにも曲がった腰を痛みながら
歩いてくる苦しそうな祖父を見ていると
言葉にならない深い悲しみに近いものが
心に溢れ出してくる
もちろん父の方が
祖父に迫る「死」という存在を
深く認識しているだろう。

大切な人が突然死ぬ悲しみは
想像もできない大きさの悲しみだろう
ただ、明確に一歩一歩近づく「死」を
認識させられ続ける苦しみも
とても大きいものだと感じさせられた
大好きな祖父には
突然死んでほしくないが、
苦しんで死んでほしくない
自分でも矛盾しているとわかる
この考えへの
反論が出せる気がしない

僕はまだ、祖父母の死を体験していない
体験したくもない
だけど、その時は必ずやってくる

ゆっくりゆっくり、歩み寄ってくる