323 / 372
第七章:
ごきげんよう、『六連星』③
しおりを挟むそんなやり取りをしながら無事に《妖精の路》を通り抜けて、端っこにある別のゲートまでたどり着く。ユーリお母さんが無造作にひょい、と手をかざすと、音もたてず静かに内側に動き出した。すき間から、どこかの光が漏れてきて、
――ぱああああんっ!!!
「うわあ!?」
開いた、と思った瞬間、乾いた大きな音がいっせいに鳴った。続けて頭の上から、色とりどりのリボンと紙吹雪、ついでに光で出来た花とか鳥の羽根とかお星さまとかが山ほど降って来て、前が見えない。なんだなんだと必死でかき分けて脱出すると、
「イブいらっしゃーい! 元気になってよかった~」
「それからおめでと。家族が見つかって良かったわね」
「もうとっくの昔にお祝いされてると思うんだけど、俺たちずっと会えなかったからさ」
「今ここで言わせてください! 本当に良かったです!!」
『ひっぽー!』『まままー!!』
片手で辛うじて持てるくらい大きい、大砲みたいなクラッカーをこっちに向けたポーズで、口々にお祝いしてくれる『紫陽花』のみんながいた。その後ろでは、日頃お世話になりまくりのシェーラさんをはじめとするお店の人たちが、にこにこして拍手しながら見守ってくれている。今日遊びに来ること、ばっちり伝達済みらしい。
……あ、まずい。何日かぶりに泣きそう。
「……み、みんな~~~」
『きゃー! ごしゅじん~~!!』
「わ゛ー!! ごめんっ、何かやりすぎた!?」
「音!? 音なのね!? いくら景気づけだからって、ウチで一番でっかいクラッカーをまとめて鳴らしたのは耳痛かった!?」
「うう、ちがうから、嬉しいだけだから……あ、これってお店の商品なの……?」
「そうそう。リボンと紙吹雪だけじゃ物足りないってときのために、光とか音とかいろいろ詰めてあるやつなんだ。わりとご好評いただいてるんだよ?
とにかく、丸く収まって良かったね。三人とも」
「うん、本とに。……いろいろありがとう、シェーラ」
「何言ってんだい、元パーティのよしみだろ。ま、うちの人が聞いたら参加したかった! って拗ねられるの確実だけどねぇ」
「ははは、それは違いないな」
これまた優しく頭をぽんぽんしてくれるシェーラさんと、大変仲良さげなうちの両親である。うん、話に聞いてはいたけど、こうやって和気あいあいとしているのを見てると、付き合いが長くて気心知れてるのがよーくわかるなぁ。
と、無事に涙も引っ込んでほっこりしたところで、遅ればせながら気づいた。メンバー、ひとり足りてなくない?
「……あれ? そういやショウさんは?」
「ん? それはねー、後ろのドア開けたらわかるわよ、うん」
「うーふーふー。すぐに見てみて! ねっ」
さっき慌てまくりだった女子コンビ、すでに復活して大変楽しそうにニヨニヨしている。何なんだろう、とちょっと心配になりつつ、言われるままにそっちのドア――中庭に通じるお勝手口のノブを回してみた。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
巻き戻り悪女の復讐の首飾り。妹が偽りの聖女なので私が成り代わります!
影津
ファンタジー
お父さまがかわいがるのはお母さまと似ている妹ばかり。ないがしろにされた私は私を愛してくれたお母さまの形見の首飾りが欲しかった。血のつながっていない妹は聖女になって、私をはめた。冤罪で処刑された私。ちがうの、あれは事故だったの。お母さまの首飾りが欲しかっただけ。処刑された私の目に最後に飛び込んできた聖女の妹の姿は――えっ?魔族!?
ルビーの首飾りの力で成人前に時が巻き戻った世界で、私は魔王崇拝者の妹の正体を暴く決意をする。その為には私の処刑を命じたドS王子や不仲な父親とより良い関係を築いていかなきゃ。そして見返してやるのよ。
嘘つきぶりっ子聖女を黙って見ているわけにはいかない。私が本物の聖女になってやる!
※姉妹の確執と、劣等感を抱えた主人公の成長物語です。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
婚約破棄の場に相手がいなかった件について
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。
断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。
カクヨムにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる