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第六章:
ファイター・イン・ザ・ダーク⑧
しおりを挟むおそらく現在、街のあちこちで同じようなことが起こっているはずだ。ギルドに聖職者として登録しているものはもちろん、ヴァイスブルクの郊外にある神殿に籍を置く神官たちは、言うまでもなく浄化や回復のプロフェッショナルである。現場での活動経験はまちまちだが、無理に単独行動したり功を焦ったりすることさえなければ、大事には至らないだろう。
が、しかし、彼らが心配しているのはそこではなかった。
「リュシーさん、神様から直接ご加護もらってるんでしょ? それって相当レベルが高い光属性なんじゃ」
「もしかしなくてもめっちゃ高レベルだよ! 聖女称号って認定される条件がものすごく難しくて、ちょっとやそっとじゃもらえないんだもん」
「だよね・・・・・・うーん、うちも心配だけど、もしかして帰ってるヒマないかも・・・・・・」
「いいえ。この不死者たちを振り切ったら、まずは商会へ戻りましょう」
眉間にしわを寄せてつぶやくフィアメッタに、思いのほかきっぱりと言い切ったのは、黙ってやり取りを見守っていたフェリクスだった。
「桜草の君を気遣って下さるのは、とても有り難いことです。が、まずはお母様を安心させて差し上げましょう」
「いや、でも、あの人まだ本調子じゃないし。昨日の今日でこんなことになって不安だろうし・・・・・・」
「大丈夫。離宮には騎士殿と、我らが殿下がおられます。――それにここだけの話ですが、マックス殿は王都からとんぼ返りして下さるだろう、とオズヴァルド殿が」
「えっほんと!? じゃあちょっとだけ安心かも、オズさんナイスー!」
「あのひとって何者なんですか、まじで……」
口調とか物腰からして、見た目より永く生きて(?)いるのは間違いない。前回大破した離宮だって、結局ほぼひとりで直してしまったし、数百年は存在しているだろうグレイ女史と顔見知りだし。何よりこうやってちょこちょこ顔を出す『実はまだ本気出してないだろ、このひと』的な後出し情報が多すぎる。例の白光に包まれた本のことも聞きそびれたままだ。戻ってきたら絶対質問攻めにしてやる。
王太子そのひとにどれほどの実力があるかはわからないが、あのひとが直で送り込んでくるなら相応のものと思っていい。なにせ思いもよらないアシストで、『紫陽花』一同はさんざん助けてもらっているのだから。
「……えーと、じゃあ離宮はひとまず何とかなるか。ありがと、フェリクスさん」
『くわあ』
「いえ、とんでもない。では先を急ぎましょうか」
「はーい! そろそろエラちゃんも戻ってくるかなー」
『――きゃ~~~~!!!』
「って、あれ!?」
だいぶ元気を取り戻したリラが口にした直後。響き渡った悲鳴は、先の様子を見に行ってくれていた妖精蜂のものに間違いなかった。
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