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第四章:
野バラを摘んだらごはんにしよう③
しおりを挟むえ? なんか小動物さんたち、数が足りないんじゃないかって? 実は深……くはないけど、ちゃんとそこそこの理由があるのだ。
『まんちゃんたちも来れたらよかったのにねー』
「本人が嫌がったからねえ。よっぽど怖かったんじゃないかな、かじられかけ事件」
『だねえ。春ウサギさんもおなかこわさなくてよかったね』
「うんうん、ほんとそれ」
『ふぃー』
待ってましたとばかりに肩へ飛び乗って、定位置へ落ち着いたティノくんがしっぽをふりふり言ってくる。反対側にとまっているリーシュもしみじみした風にうなずいていたので、だいたい言いたいことは同じらしい。
最初に公爵さんちへお邪魔したとき、庭園に迷い込んだ春ウサギに危うく花をかじられそうになったまんちゃん、もといマンドラゴラさんである。幸い寸前で止めてあげられたし、お互いとりあえず仲直りもしたんだけど、まだここのお邸に行くのは何となくイヤらしい。
『まままー(ぶんぶん)』と丁重に全身でお断りされたので、今は寝落ちしたドゥードゥーさんと共に商会でお留守番中なのだった。ウサギさんとエラちゃんはもちろん、『紫陽花』のみんなと聞き込みしながら、怪しいところはないか見回ってくれている。
代わりに、というか、今日こそは絶対お外に行く! と元気に主張してくれたのが、この子だ。
「こんちゃーん、お待たせしました。お腹すいたでしょ、ごはんにしようね」
『こんっ!』
この前も通された、太陽の光が降り注ぐ明るいティールーム。その窓辺でちょこん、とお行儀よく座って待っていた、紅い毛並みのキツネさんが元気よく鳴き返した。ティノくんに負けず劣らずふっさふさのしっぽが、ゆらゆらと機嫌よさそうに揺れている。
ふつうの動物さんなら、油ものなんて確実にNGだけど、この子たちは霊獣。幸い特に食べ物の制限はなくて、好き嫌いもなくなんでも食べてくれるので助かっている。揚げたてのパンをお皿に乗せて出してあげると、軽く匂いをかいでからぱくっ、とかじりついた。さすが火属性、猫舌とは無縁だ。
「おいしい? 味が濃いとかない?」
『こんこん』
『だいじょーぶだって。トマト大好きだからうれしいって言ってるよー』
「そうなんだ。熱いものが平気なのは知ってたけど……お野菜好きなのかぁ、えらいね」
『こんっ♪』
「――ああ、火狐は赤いものを好んで食べるそうだよ。野菜や果物のほかに、旬の花なども喜ぶというが」
「お花もですか? 甘くておいしそうだけど、お腹になかなか溜まらなさそう……」
「食物として、というよりは、花そのものの生命力や精気を好んでいるんだ。赤は五行思想で火を表す色だ、例えそのものでなくとも、吸収すると心地いい――と、私の友人が教えてくれた」
嬉しそうにしっぽを振るこんちゃんを見守る公爵さん、これまたとても嬉しそうだ。
特に友人、て言った時、レオナールさんがマックスさんを紹介してくれた時みたいに誇らしげだった。これはもしかすると、昔一緒に冒険してたっていうひとたちのことかな?
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