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第四章:

野バラを摘んだらごはんにしよう①

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 ――突然ですが皆さん、パンを手作りしたことってありますか?

 お恥ずかしながら、わたしは全然なかった。小さい頃お母さんといっしょに作ったホットケーキとかクッキーが、かろうじて残っている手作りの記憶だ。高校に入ってからというもの、休みの日は部活とゲーム三昧で、お菓子作りなんてするヒマもなかったしなぁ。

 初めてやってみてわかったのは、小麦粉を練るのって意外と力がいること。そして作った生地を伸ばして、中身を包むのにもいろいろとコツがいることだった。というか、現在進行形でわかっているところだった。

 「ああああ、なんかあっち側が破けそう~~~~」

 「平気平気。ほら、見た目より丈夫だしよく伸びるから、落ち着いてやってごらん」

 「はいー!!」

 『ごしゅじーん、ふぁいとー!』『ふぃーふぃっ』

 引っ張ったら引っ張っただけ伸びていく生地にビビりまくるわたし。そんな初心者にも丁寧に教えてくださっている人と、お行儀よく待っている小動物さんたちから、あたたかな声援が送られていたりした。






 さて、ここがどこかを説明する前に、時はちょっとだけさかのぼる。

 スガルさんの自供、もとい情報提供と、リックの解説のおかげで、わりとまずい状況なのは理解できた。

 すでにグローアライヒ側があれこれ動こうとしているけど、わたしたちにも何か出来ないかなぁという話になったのは、今までの経験からすれば十分予想できる流れだった。

 なんせ『紫陽花』メンバー、リーダーを筆頭に面倒見の良さがカンストしてるひとたちばっかりだから。

 「りっくん、そっちの王子様ってどうしてるの? お忍びだからあんまりハデに動けないよね」

 「近々虹竜笛でゲートを作って、僕たちを入れた何人かで様子を見に行こうと考えてるらしい。リュシーもだいぶ持ち直してきたから」

 「あれ、いっしょに帰るんじゃないのか? お妃候補だろ、一応」

 「……あのねえ。あの子がこんな話聞いて、静かに療養しててくれると思う?」

 「あー、うん、無理っぽいわね。めっちゃ良い子だもん」

 「類は友を呼ぶって言いますけど、さすがイブマリーさんと仲がいい人ですよね」

 「え、そう? むしろ逆のような気がするけどなぁ」

 この場合、核になってるのって絶対リュシーだと思うんですが。そんなことを思って首をかしげてたんだけど、

 「つーかイブマリー、あんたも人のこと言えないからね? あの世ぎりぎりのとこで一晩さ迷って帰って来て、まだ一日しか経ってないんだから」

 「えっ」

 「そうそう。大体イブ、こないだの騒ぎだって最後ひとりで収めてたじゃん。なんか顔色も悪いし、絶対疲れてるってば」

 「ええ?」

 「俺たちがやるとしたら、聞き込みとかの地道なやつからだろうしな。昨日の今日で走り回るのは止めといた方がいいって、うん」

 「ええー!?」

 「……お気持ちは大変ありがたいのですが、皆の言い分にも一理あるかと。イブマリー嬢はまず、体力の回復に努めていただきたい。
 そもそも今回の件、大半が自分の身内の不始末ゆえ……」

 「ええええええ」

 口々にお手伝いを拒否られたあげく、当のスガルさんよりもよっぽど沈痛な顔をしたショウさんにそう申し出て来られたら、うんと言う選択肢しか存在しない。

 そんなこんなで。わたしはパーティ加入からわずか数日目にして、小動物さんたちの監視付きで、一人寂しく養生に勤めることとなったのである――なぜか、山の上の公爵さんのお宅で。

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