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第四章:
ぎゃわずの如き凹むもの③
しおりを挟むみょーにデジャブを感じると思ったら、時代劇で囚人が拷問されるときの道具にそっくりだった。確かに氷なら気持ち的にちょっと柔らかそうだし、溶けていけば少しずつ辛くなくなるだろうけど……さてはショウさん、まだまだ怒ってるな??
昨日の別れ際にそれとなく聞いてみたときは、『思うところはありますが、結果的に助けられたことは事実ゆえ。矛を収めるとしましょう』って言ってたのだが。
実際本人にあれこれ聞き取りしてる間に、あれこれあってぶり返して来ちゃったのかもしれない。赤の他人のミスは許せても、身内のやらかしにはジャッジが厳しくなるものだしなぁ。真面目なうちのリーダーならなおさらだ。
何はともあれ、こっちから首を突っ込んだとはいえ、誰かが痛がる悲鳴を聞くのはしんどい。壁際でおろおろしているスコールくんも気の毒だ、いい加減落ち着いてもらうとしよう。
「えーっと、ショウさーん、今いいですかー」
「――はっ!? イブマリー嬢、何時からそちらに!?」
「ついさっきです、目が覚めて外に出たら声が聞こえたので。おーいスガルさーん、生きてますかー」
「うううう、あ゛り゛がどう゛~~~」
よしよし、まだ意識はあるな。ドゥーさんの下でよろよろと顔を上げたお兄さん、よっぽど痛いらしくて滝のように涙を流している。男の人がここまで人目もはばからずに泣くのは初めて見たな……
男女で差別する気はないけど、やたらと居たたまれない気持ちになるのは何でだろう。ごほんと咳払いして気持ちを切り替えてから、改めて口を開く。
「もう話した後みたいだけど、わたしも聞かせてもらって良い? ああいうものを作れって、そもそもどこで誰から言われたの?」
「うーん、どこから説明しようかな……オレは宵丸、じゃないや、ショウと同じで東邦の出身なのね。で、実家は代々要人の護衛を担当してる、いわゆる忍びの者なわけ」
「忍者さんなんですか!」
「うん、それそれ。冒ギルの職業では『野伏』ってのに分類されるね。――で、その手のしごとをしてる奴らだけに共有される、裏のネットワークがあるんだけど」
裏といっても、闇取引とか悪いことばかりしている、ということではない。表沙汰になる前にこっそり対処しないといけないとか、国の存亡に関わるような情報を扱うとか――そういった、『実力や心得のないひとにむやみに首を突っ込まれたらまずい案件』という意味らしい。
今回スガルさんに降ってきた依頼も、そんな筋から流れてきたものの一つだった。
「大至急、アスフォデルで蜜酒を作ってほしい、量は問わないから品質を優先してくれ、って。一応、某酒好きの神様に捧げる供物が足りない、って理由だったけど……どー考えたって怪しいよね。
なんせあの原っぱ、当の神様方面から生きもの立ち入り禁止って言われてるんだよ? 罰が当たる、なんて可愛いお仕置きで済むかどうか」
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