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第三章:
精霊花の守り人⑭
しおりを挟むしばらく考えて思い切る、まではいかないけど、こうかなっていう方向性を決めてから、しょぼくれているお兄さんのそばにちょこんとしゃがむ。お行儀良くお座りの体勢で見守っていたうさぎさんを撫でながら、
「ねえ、そのお酒ってどこにどのくらいあるの? スガルさん」
『きゅう』
「へっ? ああ、うん、そんなに多くないよ? ほら」
急に声をかけられてびくっ、と振り返ったのが申し訳ない。それでも相手はすぐに応えてくれて、服の懐を探ると何かを取り出した。
わたしでも片手で持てそうな細身のビンで、中に透き通った金色の液体が八分目くらいまで入っている。はっきりした光源がないのに、傾けるとキラキラ瞬いてとてもきれいだった。
「え、これで全部?」
「そ、全部。巣箱ひっくり返してかき集めた蜜なのに、醸造が進むにつれてどんどん凝縮されてってさ。あのおねーさんたちはアスフォデルの魔力を追跡できるから、見つかるまでが勝負だったんだけど」
「……じゃあこれさえ何とかすれば、ウソついて隠してるって思われる心配はないんですね。よーし」
「いやまあそうだけど……え、何すんの君??」
しきりに瞬きして不思議そうな声を出すスガルさん。その背後で、こっちはとっくの昔に訳知り顔になっているショウさんににこっとしてみせてから、わたしは蜜酒に顔を向けていったん目を閉じた。ぱっと開くと、ちょうどビンの周りにおなじみのカーソルが出現している。よし、行ける!
「フォーカス・橙花蜂さんが集めた蜜と、それから作った蜜酒! 『天理反転』!!」
しゅばあっ!!!
唱え終わった瞬間、ビンがぱあっと内側から光った。景気のいい音がして、シャンパンの蓋を開けた時みたいに中身が飛び出し、まっすぐ上に噴き上がっていく。
一番高いところで花火のように弾けると、キラキラ輝く金色の雨になって下に降り注いだ。落ちてきた光の粒は、次々に背の高い花――アスフォデルにだけ当たって吸い込まれていく。
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