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第三章:
精霊花の守り人①
しおりを挟む静寂の中、ふと現れた気配があった。この場には相応しくない、生気に満ちたものがふたつ、みっつと寄り添っている。
気を凝らしてみたが、微妙にボケていて正確な位置は割り出せなかった。恐らくは単に迷い混んだか、こちらに来かかっているが強い未練があるか。
(――どちらでもいいか。こっちは役目に沿って動くだけだ)
迷いなく踏み出した人影の周囲で、白い帳が音もなく渦を巻いた。
ほっぺたが冷たい。真っ先に思ったのはそれだった。
というか、気がついたら全身がひんやりしている。また寝ている間に掛け布団を吹っ飛ばしたんだろうか、カッコ悪い。
唯一の救いは、どうにかベッドの上には残れているらしいことだ。敷き布団あったかいなぁ。
「――嬢」
ああでも、なんか所々が硬いな? あと関係ないけど、誰か呼んでる気がする。ティノくんたちかな……
「……マリー嬢! お気を確かに!!」
――あ、違った。こんな口調の知り合いは一人しかいないわ。
急に意識がはっきりしてきて、ぱっと目を開ける。すぐそばで、心配そうにのぞき込んでいるショウさんの姿があった。どうやら上半身を抱き起こしてくれてる体勢っぽい……って!
「うわっすみません! 重くないですか、イヤ重かったでしょ!! 下におろしてて良かったのにっ」
「いえ、むしろ華奢すぎて不安なのですが……何はともあれ、無事で良かった」
さすがうちのリーダー、コメントがいちいち良い人すぎる。謝りまくりなわたしから手を離して、ほっとした様子で笑ったショウさんはそのまま周りに視線をめぐらせた。そこでやっと気づく。
(……あれ、霧?)
ていうかどこだ、ここ?
さっきまでいた森の中、ではない。ついでに今思い出したけど、落っこちた縦穴から続いてそうな洞窟とかでもない。とにかく辺り一面、真っ白い霧で覆われていて、ほとんど何も見えないのだ。
『ごしゅじんおきた? どっかいたくない?』
「あ、うん、全然平気……ティノくん、あれからどうなったの?」
『うんとね、穴におっこちて、きがついたらこんなかんじだったの。
ここたぶん、あの世のいりぐちだよ~~』
「……はいっ??」
首元にくるっと尻尾を回して、マフラーみたいな体勢(かわいい)でとんでもないことを言ってくれたうちの相棒くんに、思わず目が点になった。何ですとー!?
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