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第二章:

春ウサギに訊いてみろ⑥

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 触るってどんなふうにすればいいんだろ、なんて、至って普通なことを考えながらつぼみに手を伸ばす。

 そーっと撫でた花びらは瑞々しくひんやりしていて、軽く持ち上げるようにするとやっぱり少し重たい気がする。八重咲きのバラに似てるから、たくさん花びらが詰まってるんだろうか……

 と。

ぽおんっ!!

 「うわあ!?」

 突然、目の前のつぼみが弾けるように咲いた。至近距離でクラッカーを四、五個くらいまとめて鳴らしたみたいだ、爆音と衝撃波のせいで頭がくらくらする。しかし何よりも驚いたのは、

 『――んー、なあに、もう朝なの……?』

 開いた花の中は、予想通り花びらがいっぱいでふわふわだ。そして鮮やかなオレンジピンクの真ん中で、むにゃむにゃいいながら起き上がろうとしている子がいた。

 大きさは、わたしが両手ですっぽり包めるくらい。薄紅色で花と同じくふわふわした長い髪、黒目がちで大きな瞳は淡い金色。シンプルな白いドレスの背中からは、虹色に透き通った細長い羽根が生えていた。どこから見ても文句なしに可愛い妖精さん……なんだけど。

 『きゅーっ』

 「わあ、妖精蜂!? 初めてナマで見た、可愛いー!」

 「え、かーさんに話聞いたこのタイミングで蜂が来るとか……って、どしたのイブマリー、顔色悪くない?」

 「いや、あの、ちょっと頭が……」

 『ふぃっ?』

 フィアメッタといっしょに大丈夫? と言いたそうに顔を覗き込んでくるリーシュに、どうにか答えを返しつつ、心のなかで思いっきり叫ぶ。叫ばざるを得ない。

 (うわああああデッドエンド回避したと思ったら来たーっ!!)

 《……ええと、水を差すようで申し訳ないのだけど、フラグって?》

 唯一聞いていたアンリエットが、魂の絶叫に冷静なツッコミを入れてくれていたんだけど。完全なる不意打ち展開で混乱していたわたしに、現代オタク用語を解説する余裕なんてものは全くなかったのである。

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