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第二章:
春ウサギに訊いてみろ①
しおりを挟む「あれっ、まんちゃん?」
「今悲鳴が聞こえたような……」
一撃必殺の絶叫ほどじゃないけど、かなり大きな声だったから、他の人たちの耳にも届いていたらしい。一斉にきょろきょろし始めたみんなといっしょに目を凝らしてみるけど、広いティールームの床にもテーブルにも、わたしの相方その三を見つけることは出来なかった。はて、この部屋にいないってことは……
『ふぃっ!』
「――あ、ほんとだ。ここ開いてる」
鋭く鳴いたリーシュにこっち! と促されてついていくと、さっきこの子たちが張り付いていたガラス壁の一部が細く開いていて、外に出られるようになっていた。なるほど、こうやって開けるのか。そしてこの隙間の幅からするに、マンドラゴラさんはここを通ったに違いない。
急いでガラスの扉を開けて外に出ると、ふわっと緑の香りに包まれた。相変わらずいいお天気で、太陽がさんさんと降り注いでいる。ときどき吹いてくる風は初夏らしく、からっとしていて涼しくて爽やかだ。
庭に作られたレンガ敷きの通路をたどっていくと、先ほど聞いたとおりあちこちで牡丹や芍薬が豪華な花を咲かせているのを見つけることが出来た。艶やかな深い紅や、ほんのり薄紅を帯びた白い花びらが目に鮮やかだ。
この前行った海辺の公園を思い出すなぁ。さすが公爵さんちの敷地内だけあって、手入れが行き届いていて心地よい空間になっている。こんな状況でなければ、いくらでも散歩していたいくらいだ。
《――そうね、とてもいいお庭だわ。いくつかめずらしい植物もあるようだし》
(え、そうなの? わたしは普通の花しかわからないけど、通ったとこにもあった?)
《ええ。もっとも、まだ花は付いていないようだったけれど――》
『――まあ~~~~っ!』
また話しかけてくれたアンリエットと心でお喋りしながら歩いていたところ、再びかん高い声がした。今度はうんと近くて、正面に向かって右側の辺りだとすぐわかる。
小走りでそっちへ曲がって、行く手にあった植え込みの後ろを覗き込んだら、
「ああ、いたいた! ――って、あれ? かわいい」
『まままーっっ』
『……きゅ?』
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