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第二章:
ティールームで昼食を⑤
しおりを挟む「――そのような経緯で、無事解決に至りました。これも公の、ひいてはグローアライヒ王室のお力添えのおかげです。改めて感謝の意を」
「いや、とんでもないことです。我々とて無関係ではいられない案件だったのだから、出来る限りの力を貸すのは当然だ。……まあ我が甥に関しては、少々自重を覚えた方がいいかもしれないのですが。陛下にもお伝えせねば」
ああ、そういえばマックスさんに離宮の結界維持する権利を一時的に預けてうんぬん、て作戦だったんだっけ。
つまりはあの人、バリバリ最前線で戦う気満々だったわけで、そりゃ身内としては気が気じゃなかろう。グレイさんも言ってたけど、元気がよすぎるのも考えものだ。
まあそうは言いつつも、叔父さんだっていう公爵さんが本気で怒ってる訳じゃないのは、どう見ても無理やり引き締めてる口許でよくわかる。あれは今にも笑いそうなのを我慢してる顔だ。
「さて、では堅苦しい話は全て済んだということでよろしいかな? 殿下もどうぞお好きなものを、そろそろ次の料理が出来上がる頃ですので」
「はい、ではお言葉に甘えて、……リック、どれがいいと思う」
「いやなんで僕に訊くんですか、好きなの選んでくださいって」
「……あいにく家庭の料理をよく知らない。お前の母君は料理上手だというから、選んだものに間違いはないかなと」
「あーもうっ、そーいうとこですよ本っとに!」
うん、ほんとそれ。
困った様子で意見を求めつつ、天然で相手と家族を誉めまくるという、この人にしか出来ない凄まじいデレにさすがのりっくんも折れた。取り皿片手に椅子からざっと立ち上がる姿が、やたらとカッコいいのは何でだろう。さすがはファンからお目付け役筆頭とか、子守り騎士とか、こっそり不名誉なあだ名をつけられただけあるなぁ。
「りっくんりっくん、これおいしいよ。ポテトとベーコンとチーズのキッシュ、ローズマリーも入ってるの」
「ああ、いいねそれ。頂くよ。……こういうの好きなんだね、君」
「ん? うん、パイとか焼き菓子的なのは大体好き」
そもそもガワの人もわたしも、好き嫌いってものがほとんどない。我がオタ友は小さい頃、貝にアタって大変なことになったので、わたしがひょいひょいアサリやホタテを食べるのを見て死にそうな顔してたけど。気の毒な話だ。
アンリエットもパイが食べたいって言ってたし、わたしたち結構気が合うのかもしれないなぁと嬉しくなっていたところ。殿下にキッシュを渡してあげたりっくん、ちょうど運ばれてきた出来立てのパイ(中に炒めたミンチと玉ねぎが詰まってるやつ)をさっとわたしに取ってくれつつ、
「じゃあさ、またうちに遊びにおいでよ。母がこういうの得意だから、きっと喜んでもらえると思うし。――いつでも好きなときに来られるように、頑張るから」
「……う、うんうん! 絶対いく、食べたいし久しぶりにお会いしたい!」
最後、わたしにだけ聞こえる声で囁いて、片目をつむってみせる。つまり何とかしてランヴィエル側の出禁を解消して、自由に行き来が出来るようにするからね、ってことだ。
感動のせいでちょっと声が大きくなって焦ったけど、相手はすぐにこっとして『了解、覚えとくよ』ってとっても嬉しそうに応えてくれた。相変わらず律儀で仲間思いないいやつだなぁ。
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