上 下
80 / 372
第五章:

進撃の巨竜③

しおりを挟む

 「――おい、撃ってくるぞ! もっと結界を広げろ、街に当たる!!」

 「やってますってば、何人かがかりでもこれが限界なんです!!」

 どんどん大きくなるとかげの口の光に、集まってきた冒険者たちにも緊張が走った。矢継ぎ早に指示が飛び交うなか、作りかけの結界上空を何かがすさまじいスピードで通り過ぎる。

 もちろん言うまでもなく、わたしたち『紫陽花』プラスアルファな御一行様だ。

 『――おいてめぇら! 陸に沿って水を固めろ、氷で堤防作れ!!』

 「はっ!?」

 『いいから急げ、波だけ防げりゃそれでいい!!』

 どおん!!

 ドラゴン姿のアルバスさんが指示を出している背後から、とうとう攻撃が発動した。口から飛び出した真っ赤なビームが、ヴァイスブルクの町めがけて一直線に飛んでいく。

 「イブマリー、来たわよ!」

 「はい! フォーカス・とかげビーム! 『天理反転』!!」

 しゅばっ!! ばぢゅっ!!

 『あいえーっっ』

 間髪入れずにわたしがかけた生得魔法で、向かってきた光線が鏡に当たったみたいに跳ね返った。そのまま吐いた張本人、いやとかげにデッドボール状態で直撃して、踏ん張り切れなかった相手が海の中に倒れ込む。

 「よしっ、うまくいった!」

 「ナイス動体視力! リラ、波はどんな感じ!?」

 「うん、大丈夫! ちゃんとアルバスさんのいうこと聞いてくれたみたい」

 十メートル級の大怪獣が倒れたわけで、水のうねりは津波まではいかないもののなかなか大きい。振り返ると、さっきまではなかった白っぽい壁がちゃんと防いでくれていた。魔法を使える人たちが団結して、水を凍らせてくれたようだ。ありがとうございます!

 『さてと、ちったあ効いてりゃいいんだが。ディアス、どうだ?』

 「ちょっと待って、いま見てるから――て、げっ」

 ディアスさんの声がいきなりひきつる。どうかしたのか聞くよりも、海面を突き破って長い尻尾が横殴りに飛んでくる方が早かった。大急ぎで回避する飛べる二人だったんだけど、満月とエルドくんの明かりでも足りないのかフェリクスさんの方がちょっとだけ遅い。尾の先が脚を掠めてばぢっ! と痛そうな音が響いた。

 「だっ、大丈夫!?」

 『……はい、どうにか。尻尾に毒は無いはずですから』

 「ってまた来たー!!」

 『がお~~~!!』

 早くも立ち直ったか、水面から丸っこい顔を出したとかげがまた吠える声を口で言う。さっきのピッチャー返し戦法はあんまり効いてなさそうだ。まだまだ戦う気満々みたいだし、落ち着かせようにも話を聞いてくれない可能性が高い……というか、至近距離であんなのを撃って来られるのはご免被りたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...