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第五章:
主役(ヒロイン)前線異常あり①
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「あんなに長いこといっしょにいたのに、なんで気づかなかったんだろ……ごめんなさい」
「いいって、気にすんな。うちは外で苗字を名乗るって習慣があんまりねえからな」
「おれと兄貴、全然似てないって身内にもよく言われるからな~。まあ似なくてよかったけどさ」
「いっつも一言余計なとこが全ッ然直ってねえな、てめぇは……!!」
「いだだだだだだ」
ついついいつもの調子でやらかして、お兄さん渾身のコブラツイストをかけられてギブギブ! とじたばたするディアスさんだ。うん、こうやって見てると確かに弟っぽいなぁ。
衝撃のトリプル再会から、時は流れて数十分後。あれだけ目立ってしまった上でふらふら出歩く勇気はさすがになかったため、急遽母屋に引き返してリビングに陣取り直したわたしたちである。
ちなみにシェーラさんは、午後からよそで商談があるとかでお出掛け中。出掛けにゆっくり話すといいよ、て声をかけてくれたのが本当にありがたかった。オズさんたちはお疲れなのか部屋に引き上げ後だったので、後ほど様子を見に行こうと思う。
「ていうかアニキ、お兄さんいたんだねぇ。ちっちゃいイトコがたくさんいるのは聞いたけどさ」
「実家が旅回りしてて大人数だ、ってのは知ってたけど。つかあんた、よくよく考えたらフルネーム名乗ってなかったわよね」
「まあ取り立てて不便はなかったし、姓を伏せているのは何か事情があるやもと問い質したりもせなんだが……うっかり失念しただけか、この分だと」
「あっはっは、ごめん! 実はそうだったりして」
「……いや、まあ、大事がなくて何よりだ。うむ」
あっけらかんと笑って言われて、肩を落としたショウさんがため息をついている。この人のことだからいろいろと気を回しまくったんだろうに、気の毒な。
そんなやり取りを、相変わらず弟さんにヘッドロックかけながら聞いていたアルバスさんだ。ひとしきり締め上げて気が済んだのか、ぽいっと放すと居住まいを正し、改めて口を開いた。
「すまん、うちの弟が迷惑かけたな。それとアンリ……じゃねぇ、イブマリーを助けてくれてありがとう。ランヴィエルに残ってる奴らの分も併せて礼を言わせてくれ」
「いや、とんでもない。我々は当然のことをしたに過ぎませぬ」
ひざに手をつき、正面に座るショウさんに向かって丁寧に頭を下げてくる。こういう、相手が誰であっても義理堅くて真っすぐに接してくれるところが、このひとの一番の良さだよなぁと改めて思うわたしだ。
見た目も声もカッコいいけど、何よりもとにかく生き方というか、生きることへの姿勢が素敵なんだよな。あとさっきもそうだったけど、意外と照れ屋で不器用なのも人気だ。それこそショウさんと同じくギャップ萌えというやつだろうか。最推しはライバル(幸せになってほしいって理由で)、次点でフェリクスさん(見ていて和むという理由で)というわたしだが、盗賊さんルート攻略中は画面見ながらにやにやが止まりませんでしたとも、ええ。
そしてそんな御仁と現在進行形で仲間な詩人さんはやっぱり同席中で、みんなのやり取りをいつものふんわり笑顔で眺めていたりする。というのも、どうやらアルバスさんがグラディオーレ商会に顔を出したのは、このひとが事前に連絡していたから、だったそうで。
「急に手紙が届いたんで何ごとかと思ったぞ。しかもハトじゃなくて風の眷属使ってきやがるし」
「すみません、もうじきこちらへ着く頃合いだと思ったものですから。取り急ぎお伝えせねばと」
「あ、フェリクスさんて風霊の言伝が使えるんだ。やっぱあれですか、本性繋がり?」
「ええ、そんなところです。……が、そのお話はちょっと。せっかく直ったご機嫌を損ねますので」
「……あ~~、はいはい。そういや膨れてましたっけ」
申し訳なさそうに勘弁して、の仕草をされて、察したらしきフィアメッタがちょっと遠い目になった。あんたらホントこの子に甘いですよねと、その表情に大書きしてある。その手の文句はデッドエンドを仕掛けた黒幕さんに言ってくれ、頼むから。
「いいって、気にすんな。うちは外で苗字を名乗るって習慣があんまりねえからな」
「おれと兄貴、全然似てないって身内にもよく言われるからな~。まあ似なくてよかったけどさ」
「いっつも一言余計なとこが全ッ然直ってねえな、てめぇは……!!」
「いだだだだだだ」
ついついいつもの調子でやらかして、お兄さん渾身のコブラツイストをかけられてギブギブ! とじたばたするディアスさんだ。うん、こうやって見てると確かに弟っぽいなぁ。
衝撃のトリプル再会から、時は流れて数十分後。あれだけ目立ってしまった上でふらふら出歩く勇気はさすがになかったため、急遽母屋に引き返してリビングに陣取り直したわたしたちである。
ちなみにシェーラさんは、午後からよそで商談があるとかでお出掛け中。出掛けにゆっくり話すといいよ、て声をかけてくれたのが本当にありがたかった。オズさんたちはお疲れなのか部屋に引き上げ後だったので、後ほど様子を見に行こうと思う。
「ていうかアニキ、お兄さんいたんだねぇ。ちっちゃいイトコがたくさんいるのは聞いたけどさ」
「実家が旅回りしてて大人数だ、ってのは知ってたけど。つかあんた、よくよく考えたらフルネーム名乗ってなかったわよね」
「まあ取り立てて不便はなかったし、姓を伏せているのは何か事情があるやもと問い質したりもせなんだが……うっかり失念しただけか、この分だと」
「あっはっは、ごめん! 実はそうだったりして」
「……いや、まあ、大事がなくて何よりだ。うむ」
あっけらかんと笑って言われて、肩を落としたショウさんがため息をついている。この人のことだからいろいろと気を回しまくったんだろうに、気の毒な。
そんなやり取りを、相変わらず弟さんにヘッドロックかけながら聞いていたアルバスさんだ。ひとしきり締め上げて気が済んだのか、ぽいっと放すと居住まいを正し、改めて口を開いた。
「すまん、うちの弟が迷惑かけたな。それとアンリ……じゃねぇ、イブマリーを助けてくれてありがとう。ランヴィエルに残ってる奴らの分も併せて礼を言わせてくれ」
「いや、とんでもない。我々は当然のことをしたに過ぎませぬ」
ひざに手をつき、正面に座るショウさんに向かって丁寧に頭を下げてくる。こういう、相手が誰であっても義理堅くて真っすぐに接してくれるところが、このひとの一番の良さだよなぁと改めて思うわたしだ。
見た目も声もカッコいいけど、何よりもとにかく生き方というか、生きることへの姿勢が素敵なんだよな。あとさっきもそうだったけど、意外と照れ屋で不器用なのも人気だ。それこそショウさんと同じくギャップ萌えというやつだろうか。最推しはライバル(幸せになってほしいって理由で)、次点でフェリクスさん(見ていて和むという理由で)というわたしだが、盗賊さんルート攻略中は画面見ながらにやにやが止まりませんでしたとも、ええ。
そしてそんな御仁と現在進行形で仲間な詩人さんはやっぱり同席中で、みんなのやり取りをいつものふんわり笑顔で眺めていたりする。というのも、どうやらアルバスさんがグラディオーレ商会に顔を出したのは、このひとが事前に連絡していたから、だったそうで。
「急に手紙が届いたんで何ごとかと思ったぞ。しかもハトじゃなくて風の眷属使ってきやがるし」
「すみません、もうじきこちらへ着く頃合いだと思ったものですから。取り急ぎお伝えせねばと」
「あ、フェリクスさんて風霊の言伝が使えるんだ。やっぱあれですか、本性繋がり?」
「ええ、そんなところです。……が、そのお話はちょっと。せっかく直ったご機嫌を損ねますので」
「……あ~~、はいはい。そういや膨れてましたっけ」
申し訳なさそうに勘弁して、の仕草をされて、察したらしきフィアメッタがちょっと遠い目になった。あんたらホントこの子に甘いですよねと、その表情に大書きしてある。その手の文句はデッドエンドを仕掛けた黒幕さんに言ってくれ、頼むから。
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