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第四章:
森の迷宮(メイズ)にご用心⑤
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がぁん! と、金属がぶつかり合う硬い音が響き渡る。
真っ向から降り下ろされたスケルトンの剣を、刀の鍔元で受け止めて、ショウさんがすかさず身体を横にずらしながら手首を返した。押してくる力をうまく受け流したおかげで、相手が大きく体勢を崩す。
こいつに限らず、アンデッド系はもれなく怪力だ。一回でも攻撃に当たるとごっそり体力を持っていかれる。しかしその分だけ、ミスったり受け流されたりしたときの反動も大きくて、上手いプレイヤーはかわし続けるだけで自滅に持っていくことも出来るらしい。
今流された相手もまさしくそんな状態だった。思いっきりつんのめったせいで剣が半分くらい地面に突き刺さってしまい、ぐいぐい引いてるけどびくともしない。そこへ、
「『波濤千変』、破の段・青燕!!」
ざしゅっ!!
下からまっすぐ切り上げた一撃が、頭蓋骨を真っ二つにかち割った。おおっ、相変わらずすごいキレ!
――どごぉ!!
『きゃーっ!』
「っと、あっぶね! 石棺のフタなんか投げるなっての」
一方肩にティノくんを乗っけて、もう片方の骸骨とやりあってるディアスさんはちょっと苦戦していた。
どうもあっちは殴る蹴るの方が得意みたいで、さっさと得物を放り出して接近戦に持ち込んで来たのだ。重たい石のフタを投げつけてどや顔している(たぶん)辺りが憎らしい。
……ちなみに一応断っておくが、わたしだって決してのんびり見物していた訳ではない。必要に迫られて、まわりの状況を必死で把握しようとしていただけだ。何でかというと、
ぼしゅぼしゅぼしゅぼしゅ!!
『ほおおおおお』
「わあああまた来たー!!」
「いい加減にしつこいなあもうっ」
さっき乱入してきた幽霊モドキに、火の玉を投げつけながら追いかけられてたからだ。こんなもんに巻き込むわけにいかないので、リラが作ってくれた結界ごとダッシュで逃げてる最中だったりする。
……え? 神官がいるのに何で戦わないのかって?
「リラ、準備できた!?」
「ごめんまだ! ていうか走りながらだと集中できないーっっ」
『くわ~~~』
「ああっ、大丈夫だから! エルドくんのせいじゃないから!」
なんでも、リラの生得魔法は攻撃と防御が一体型になってるんだけど、切り替えるためにちょっと心の用意が必要らしい。だけどこれだけバタバタしてたら、集中する暇なんてあるわけがない。
相手が炎を使ってくるせいか、あんまり火の攻撃が効かないのも痛かった。照明を務めつつしょんぼりしている火の鳥さんが気の毒だ。
「おそらくあれは幽鬼でしょうね。少なくとも、この部屋にいたアンデッドたちはあの方が召喚している可能性が高いです」
「どんだけ高度なんですか、このダンジョン!」
いっしょに走りながら解説してくれた詩人さんに、思わずツッコミで返してしまった。
塚鬼と同じくらい高位のアンデッドで、威力の高い攻撃魔法やステータス異常なんかの黒魔法をバンバン使うやつだ。生前は腕のいい魔術師だったとかなんとかオタ友に聞いたけど、そこは死んだら素直に成仏してくれ!
走りながらそんなことを思ったとき、がっと腕に何か引っかかった。やけに冷たい感触に、おそるおそる振り返ったら――そこに案の定、さっきのとこから一歩も動いてない塚鬼その1が。
うげっと固まった瞬間、両目のくぼみに真っ赤な光が灯る。そして、
『ギィィエァァァァァァァァ!!!』
「「「ぎゃああああああ!!!」」」
耳まで裂けた口から恐ろしい絶叫が飛び出してきて、こっちも叫んだところで身動きが取れなくなってしまった。
これがこいつらのお家芸である金縛り攻撃で、盾や結界では防ぐことが出来ず、ついでにかかると数ターンは行動不能になるというイヤな追加効果つきだ。いかん、本格的にヤバいぞ!
真っ向から降り下ろされたスケルトンの剣を、刀の鍔元で受け止めて、ショウさんがすかさず身体を横にずらしながら手首を返した。押してくる力をうまく受け流したおかげで、相手が大きく体勢を崩す。
こいつに限らず、アンデッド系はもれなく怪力だ。一回でも攻撃に当たるとごっそり体力を持っていかれる。しかしその分だけ、ミスったり受け流されたりしたときの反動も大きくて、上手いプレイヤーはかわし続けるだけで自滅に持っていくことも出来るらしい。
今流された相手もまさしくそんな状態だった。思いっきりつんのめったせいで剣が半分くらい地面に突き刺さってしまい、ぐいぐい引いてるけどびくともしない。そこへ、
「『波濤千変』、破の段・青燕!!」
ざしゅっ!!
下からまっすぐ切り上げた一撃が、頭蓋骨を真っ二つにかち割った。おおっ、相変わらずすごいキレ!
――どごぉ!!
『きゃーっ!』
「っと、あっぶね! 石棺のフタなんか投げるなっての」
一方肩にティノくんを乗っけて、もう片方の骸骨とやりあってるディアスさんはちょっと苦戦していた。
どうもあっちは殴る蹴るの方が得意みたいで、さっさと得物を放り出して接近戦に持ち込んで来たのだ。重たい石のフタを投げつけてどや顔している(たぶん)辺りが憎らしい。
……ちなみに一応断っておくが、わたしだって決してのんびり見物していた訳ではない。必要に迫られて、まわりの状況を必死で把握しようとしていただけだ。何でかというと、
ぼしゅぼしゅぼしゅぼしゅ!!
『ほおおおおお』
「わあああまた来たー!!」
「いい加減にしつこいなあもうっ」
さっき乱入してきた幽霊モドキに、火の玉を投げつけながら追いかけられてたからだ。こんなもんに巻き込むわけにいかないので、リラが作ってくれた結界ごとダッシュで逃げてる最中だったりする。
……え? 神官がいるのに何で戦わないのかって?
「リラ、準備できた!?」
「ごめんまだ! ていうか走りながらだと集中できないーっっ」
『くわ~~~』
「ああっ、大丈夫だから! エルドくんのせいじゃないから!」
なんでも、リラの生得魔法は攻撃と防御が一体型になってるんだけど、切り替えるためにちょっと心の用意が必要らしい。だけどこれだけバタバタしてたら、集中する暇なんてあるわけがない。
相手が炎を使ってくるせいか、あんまり火の攻撃が効かないのも痛かった。照明を務めつつしょんぼりしている火の鳥さんが気の毒だ。
「おそらくあれは幽鬼でしょうね。少なくとも、この部屋にいたアンデッドたちはあの方が召喚している可能性が高いです」
「どんだけ高度なんですか、このダンジョン!」
いっしょに走りながら解説してくれた詩人さんに、思わずツッコミで返してしまった。
塚鬼と同じくらい高位のアンデッドで、威力の高い攻撃魔法やステータス異常なんかの黒魔法をバンバン使うやつだ。生前は腕のいい魔術師だったとかなんとかオタ友に聞いたけど、そこは死んだら素直に成仏してくれ!
走りながらそんなことを思ったとき、がっと腕に何か引っかかった。やけに冷たい感触に、おそるおそる振り返ったら――そこに案の定、さっきのとこから一歩も動いてない塚鬼その1が。
うげっと固まった瞬間、両目のくぼみに真っ赤な光が灯る。そして、
『ギィィエァァァァァァァァ!!!』
「「「ぎゃああああああ!!!」」」
耳まで裂けた口から恐ろしい絶叫が飛び出してきて、こっちも叫んだところで身動きが取れなくなってしまった。
これがこいつらのお家芸である金縛り攻撃で、盾や結界では防ぐことが出来ず、ついでにかかると数ターンは行動不能になるというイヤな追加効果つきだ。いかん、本格的にヤバいぞ!
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