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第四章:

吟遊詩人、かく語りき③

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 「とにかくそういったわけで、出来るだけティノのような性質のいい相手を探したいところだな。イブマリー嬢の人柄は文句なしなのだし、見つかりさえすればきっと先方も気にいるはずだ」

 「この辺にいるとなると、やっぱり海に関係のあるひとたちじゃない? セルキーとかメロウとか」

 さすがに地元のひとらしく、フィアメッタがどんどん候補を挙げてくれる。
 ちなみにセルキーはもっふもふのアザラシに変身する獣人族で、メロウは上半身が綺麗なお姉さんの姿をしている人魚の一種だ。ゲーム中ではマップ上やイベントに登場し、主人公たちにアドバイスをくれたり、逆に頼みごとをしてきたり、というシーンがあった。わたしは両方とも大好きです、はい。

 「うむ、セルキーはいいな。温厚な御仁が多い。メロウも水棲の一族だが、人の姿を取って陸上でも行動することが出来るはずだ」

 「あー、専用の帽子があるんだっけな。まあ同性ならあんまり心配ないだろうし」

 「心配? って、なんかあったっけ」

 「うん。たま~にだけど、オトコより可愛い女の子の方が好きよ♪ ってお姉さまに気に入られすぎて、海ん中に連れ去られることが」

 「『ぎゃーっいや~~~!!!』」

 「却下よ却下ぁ!! それ妖精じゃなくって魔物だからね!? あんた何てモン勧めてんのッ」

 「あだだだだ! 勧めてないって、ただリスクを上げただけだってー!!」

 真面目に目星をつけようとしていたはずが、いつの間にかちょっと怖い話になりかけてティノくんとリラの悲鳴が上がる。フィアメッタに容赦なくシバかれた上で逆エビを極められてギブギブ、と床を叩いているディアスさんが気の毒だ。

 話の腰を折られたショウさんが、参ったなぁという感じで苦笑していた。大丈夫です、私はいたって楽しいので問題ないですよー。

 そんなにぎやかすぎるやり取りを、きょとんとした様子で眺めていたフェリクスさんだったんだけど、やがて目を細めてふんわり優しい笑い方をした。見ている方まで笑顔になりそうな、とっても温かい表情で口を開く。

 「……そうですね。この近辺におられて性質が良い、ということであれば、お一方心当たりがありますよ」

 「えっほんと!? フェリクスさん、それどんなひとなの?」

 「はい。ティノさん同様、とても希少な霊獣の一種でして。穏やかで聡明で、病気や怪我で苦しんでおられるひとたちを助けるのが生きがいという、慈しみと愛情に満ちた素晴らしい方ですよ。――ただ、お会いするために少々苦労をするかもしれません」

 なんでもそのひと、あまりにもレアすぎて付け狙うハンターがものすごく多い。そのため、普段はダンジョンや地下神殿などの最奥部で息をひそめていて、たどり着くには怒涛のトラップ地帯を突破していかないといけない。

 が、一旦契約すれば命が続く限り他の人と縁を結ばなくて済むので、わたしが行くことがそのひとにとってもきっと助けになるだろう、とのこと。

 「常に方々を移動している一族ですが、たまたまこの近辺に棲み処の一つがあります。私が同行して入口の場所をお教えしましょう。ですが、そこから先は」

 「自力でがんばるしかない、ってことか」

 「やってやろうじゃないの。イブマリー、それでいい?」

 「もちろんです!」

 「よし、決まりー! そんじゃ準備してさっそく行ってみようっ」

 わーい、初ダンジョンだ初ダンジョン! しかも推しキャラと一緒ですよ、これでテンション上がらないオタクなんてこの世に存在しませんて!!

 そんな心の声に正直に、握りこぶしを固めて元気よく答える。かくしてチーム『紫陽花』+αによる、異世界初のダンジョン攻略がスタートしたのだった。
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