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第三章:

森の光はすべて星④

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 そんなこんなで。事情の説明は、まず車座になってお互いに自己紹介をするところから始まった。

 「おれはスコールといいます。ご覧の通り獣人で、自分たちでは天狼族と名乗ってます。一族はグローアライヒが出来た頃、大体三百年くらい前からこの連峰で暮らしているそうです」

 相変わらず礼儀正しい獣人さん、改めスコールくんが言うには、天狼族にはうんと昔から続く役目がある。相応の資質がなくては務まらず、選ばれること自体が大変な名誉なんだそうだ。その内容というのが、

 「地上で生まれた星の子どもを育てて、空に返してあげること、です」

 「ほしって、夜になるとキラキラ光るあれだよね? 空だけで生まれるんだと思ってた」

 「ええ。ホントのことを言うと、実は大半がそうなんです。星降峰で生まれる星の子は、かつてこの連峰に降りてきた流れ星が生まれ変わったものらしくて」

 高い山々が連なって山脈を形成していて、『グローアライヒの大天蓋』とか呼ばれるこのあたりは、昔から流星群がたくさん見られることで有名だったらしい。

 流れ星として地上に降ってきた星は、たどり着くと同時に燃え尽きてしまうことも多いのだけど。消えてしまったあとで地面に沁み通って、長い時間をかけて水脈や地脈をめぐり、やがて新しい星に生まれ変わる。そうして現れるのが、星降峰の星の子どもなのだ。

 ただこの子たち、生まれたての頃は本当にホタルみたいに小さいらしい。しかも身体が柔らかくて動くのもゆっくりなため、放っておくとすぐ外敵に食べられてしまう。そこで、無事に空へ還っていくまで彼らを護る役目――スコールくんいわく『星守』の任務が生まれて、代々受け継がれてきたんだとか。

 「じゃあ、このほわほわしたのが星の子どもか。そういやうっすら光ってるもんなぁ、お前」

 「最初はもっと、光り方も淡いんです。何ヶ月かかけて、山の気とかを吸収して少しずつ大きくなります。そうやって育つ星の子を、おれたちは妖精玉フェアリーソウルと呼んでいます」

 「きれいな名前だね、優しい光にぴったり」

 「……あ、ありがとうございます」

 彼らも喜びます、と照れくさそうにお礼を言う守護者さんである。ほっぺが赤いところを見ると、ちょっと恥ずかしがり屋さんなのかもしれない。微笑ましいなぁ。

 なんて一人で和んでいたところ、黙って聞いていたフィアメッタがほい、と軽く片手を掲げてみせる。身を乗り出して、ディアスさんのところへ移動していた星の子をもふもふ撫でてやりながら、

 「ところでさ、どのくらい育ったら還すの? まだまだかかる感じ?」

 「いえ、それはあらかじめ日時が決まってまして……星の子はある程度育つとみんな天河、いえ、天の川に集まる習性があるんです」

 星の子はある程度の時期まで、山河草木の良い気を栄養にして育っていく。ある時を境目に、元々地上で生まれたものも空へと還って、仲間たちとともに天河の水を飲んで大きくなっていく。だから頃合いになったら、必ずあっちからお迎えが来てくれるんだそうで。

 「お迎え??」

 「はい。実はそれが今晩で」

 「えっほんと!? 見たい見たい!」

 『ぼくもー!!』

 はいはい! とそろって手を挙げるわたしとティノくんに女子コンビが続く。さすがに大事なシーンはだめかな、と半分くらい諦めの気持ちがあったんだけど、意外なことにスコールくんはにっこり笑って、首を縦に振ってくれたのである。
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