若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝

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瑠璃も真実も照らせば光る⑧

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 「行けっエイル! レシーブ!」

 どっかん!!!

 『ぐはあっ!?』
 呼びかけに応えて飛び出したユフィの手元、いつもの巾着モドキから、青々と葉を繁らせた世界樹ユグドラシルの梢が突き出した。避ける間もなく吹っ飛ばされてもんどりうつ堕神だが、こんなのはまだまだ序の口だ。
 「うーちゃん、トス!!」
 『めえええええ!!!』

 ばこーん!!!

 『ふぎゃッ!!』
 走り込んで来ざまに巨大化した、バロメッツの頭突きが真下からヒット。常人なら絶対大変なことになっているが、器をやられては自分の身まで危うくなる。どうにか残った煙を集めてしのぎ切った。――と、思ったら、
 「そこだパール!! アターック!!!」

 どごしゃあッ!!!!

 『ほんげぁ……っ!?!』
 宙を舞っている最中に、真上から情け容赦なく叩き落された。ガレキの上に墜落して半分伸びたのを確認して、つい今しがた出した得物――巾着モドキから伸びた、さっきの数倍以上の太さとリーチに成長しているアムリタのツルを手繰り寄せつつ、ユフィがさらに畳みかける。
 「今だよまーくん! あれ突っ込んじゃって!!」
 『はいよお嬢! あらよーっと!!』
 ぴょいん、と同じく飛び出してきたマイコニドが、どこからともなく取り出したのはラズベリーによく似た木の実だ。しかし大きさはその倍ほどあり、色も随分と黒みが強い。それを目を回しかけている堕神の口に放り込み、えいっとばかりにカサでアゴをどついてやる。すると、
 『がっ、……「に、苦ああああああああっっ!!!」
 掛け値なしの絶叫が上がった。後半部分は完全に意識がなかったはずの器、もといエリオットの悲鳴である。勢いよく下あごを叩かれたせいで、謎の木の実を思いっ切り噛み砕いたばかりか、そのまま飲み込んでしまったらしい。頻りにゲホゲホやっているのに全く出てくる気配がないのを確かめて、仁王立ちしたユーフェミアが堂々と言い放った。
 「堕神とやら、よーく聞きなさい! いまエリオット様に食べさせたのはね、わたしが育てた庭園に生えてた、あんたたちがクワの実だと思ってたやつよ。正式名称は扶桑木フソウノキ、うちで付けた名前はトキワさん!
 健康な時ならとっても甘いけど、具合が悪い時に食べると口がひん曲がるほど苦い、強力な解毒かつ浄化薬にして、対魔物の最終兵器よ!!」
 ヴァネッサもエリオットも、ユフィがやることなんてはなから馬鹿にしていたし、そもそも草木にそこまで詳しい貴族はめずらしい。だから説明するのも面倒でクワの木、ということにしていたのだ。ちなみに昨日、クライヴに示した選択肢の前者でもあった。
 「エリオット様は虫に刺されたと思ってたんでしょうけど、通りすがりの蛾とかでもない限りはあり得ないんですよね。トキワさんは生えてきた時から元気いっぱいで、そこら辺の害虫はむしろ避けて通るくらいだったし。そんでもって名前がいっしょなだけあって、扶桑ではらしいし」
 そんなものに触って皮膚が爛れたのなら、それは間違いなく尋常の症状ではない。ここに来るまで気づけなかったのはちょっと悔しいが、まあ一矢報いたから結果オーライである。ちょっとだけ日頃の仕返しも出来たことだし。
 「うわああああん苦い~~~~、口の中がびりびりする~~~~~!! おかーさまああああああ」
 よっぽど耐え難い苦さだったのか、ユフィの解説も聞こえていない様子で号泣しながら転げ回るエリオットから、すごい勢いで黒い煙が噴き出してくる。ぼんやりと、スープを掬う時に使う杓子のような形が見えるようになった辺りで、待ち受けていたクライヴが方向転換させて、巨大な両開きの扉の中に転がし込んだ。
 「よし、行った! 賢者様、あとはお願いしまーす!!」
 《はーい、初の共同作業お疲れさまでーす。――さて堕神、この期に及んで覚悟が出来ていない、なんて言いませんね?》
 終着点である礼拝の間で待ち受けていた賢者のセリフは、相変わらず念話だ。……だというのに何故か、ああこれは大変お怒りなんだなぁ、と確信できてしまうほど、後半部分が凄まじい気迫に満ちていた。

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