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第4章:リンゴに交われば赤くなる

エルフの郷へ②

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 ちなみに村を出る前には、ちゃんと予定通りにリュカの妹の様子も見に行った。念のためにとベッドに寝かされてちょっぴり退屈そうにしていたが、お兄ちゃんから説明されるとぱあっと青い目を輝かせて『おねえちゃん、やくそうくれてありがとう』なんてにこにこしてたのがめちゃくちゃ可愛かったです、はい。

 「しかしまあどこぞのエルフといい、さっきの巨大イノシシといい、ついでに今の話といい……お前、とんでもない縁にばっかり恵まれてるな」
 「え、とんでもないんですか? ありがたいなぁとは思ってますけど」
 「……今までも神様とか、位階の高い精霊とかにあったことあるのか?」
 「いえ、全然」

 生まれてからこっちに来るまで、心霊体験も神秘体験も全くのゼロだった。ついでに、あまりにもイズーナが普通の女の子だったので神様だというのをついつい失念しがち、というのが正直なところだ。
 元気よく首を横に振ったところ、深々とため息をつかれてしまった。その隣で楽しそうにくすくす笑ったフェリシアが言い添える。

 「人の魂がめぐるとき、その行き先を決めるのは運命の三女神と言われていますの。ティナさんのように、他の神様が直接命を与えて下さるというのはとっても珍しいケースですわね」
 「あ、そうなんだ。それってあとから怒られたりとかは……」
 「うーん、大丈夫なんじゃありません? うちの神様たち、わりとえこひいきとかも頻繁にされてらっしゃるみたいですから。ね、叔父様」
 「そこで俺に振るな! ……あー、まあ、多神教だからなこの辺は。地上との行き来は減ったが、気まぐれで干渉してくることはたまにあるらしいし」
 「えこひいき……」
 『ぴ』

 初めて聞いたこっちの生まれ変わりシステムに、少々微妙な顔になった転生組である。ありがたかったのは確かだけど、今ごろ上のひとに捕まって叱られまくってないだろうか、イズーナ。帰りが遅いので少々心配になってしまう。

 「あと、さっきお前んとこの野菜を山ほど土産に持って帰ったイノシシとかも滅多に会えるもんじゃないぞ。あのデカさの魔獣を軽々吹っ飛ばして人語も操るなんざ、少なくとも数百年単位は生きてる精獣で間違いない」
 「それは何となくわかります。要するに長生きして、霊力とか魔力とかがアップして進化したってことですね」
 「そういうこと。ついでに、本来ならエルフってのも人前にほいほい出てきたりしないもんだ。アンノスで騒ぎにならなかったのは、あそこがファンドルンの玄関口で昔っから交流があるから、だな。だからあいつもひとりで言伝てしに行っただろ」

 確かに。よくも悪くも特別視されるなら、生真面目なシグルズはこんな真っ昼間から単独行動などしないはずだ。堂々と村長のお宅に直行していた姿を思い出して、ティナはうんうんと頷いてみせた。


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