アロマおたくは銀鷹卿の羽根の中。~召喚されたらいきなり血みどろになったけど、知識を生かして楽しく暮らします!

古森真朝

文字の大きさ
37 / 38

エピローグ①

しおりを挟む



 「――では、これを以ってオパール・イレイン・フォン・グランフェルト陛下、並びにルビアス・フォン・エーデルハイム閣下のご婚約を宣言いたします。
 どうぞ幾久しくお二人が御手を取り合い、歩んでゆかれますことを祈って」
 厳かに、そして温かく締めくくった司祭のことばに、見守っていた面々からわあっ、という歓声と拍手が巻き起こる。皆の祝福に包まれて微笑み合う二人は大変幸せそうで、やはり参列者である理咲は心がぽかぽかした。……のだが、
 「陛下、おめでとうございます。やっぱりとってもお似合いですねえ」
 「まあリサ、ありがとう。ほらルビアス、当代の賢者殿よ。わたくし専属の薬師さんでもあるの、どうぞよろしくね」
 「、へっ」
 「ああ、君がそうなのか! 、ご挨拶が遅くなって申し訳ない。つい先日まで国外に出ていたものだから……陛下共々よろしく頼む!」
 「は、はい、はじめまして……こちらこそ……」
 普通にあいさつしただけのはずが、そのままみんなの前で面通しするハメになった。きらーん、と光の粒が輝くほどにこやかに、なおかつ礼儀正しく握手を求めてくれるルビアスに、若干引きつった笑顔で応えつつ思う。何の打ち合わせもしてないのにすぐ合わせられるなんて、王侯貴族のひとってスゴイ。
 (……まあ、そのくらいじゃなきゃ、できないよなぁ)
 こっそり肩越しに振り返った先では、おそらく同じことを思っているだろうノルベルトが沈痛な表情で頷いてくれていた。ですよね、はい。



 ――さて、召喚の儀をめぐる大騒動から、時は流れてはやひと月。その間、王城では大小様々な変化があった。
 まず、オパールを退位させて王太子を即位させ、後見人として実権を握ろうとした宰相たちが軒並み更迭された。領地運営や家庭環境で困っているなら、中央は気にせずそちらに専念なさい♪ と、すっかり元気になった現王陛下に肩ポンされた結果である。もっともクーデターに加担しかけたわけで、より重い刑に問われなかったのは運が良かった。多分。そう思っておいた方がいい。
 続いて、外交官として隣国に赴いていたルビアス卿が帰国した。赤みがかった金髪に明るい碧眼、爽やかかつ凛々しい正統派の美青年である。気さくで明るい性格の彼は、前々からオパールと懇意だったそうで、体調が安定したのを機に正式に婚約する運びとなった……というのが、表向きの事情なのだが。
 「現王三傑、っていうから、最後の一人はどこにいるのかと思ってたんですけど……まさかずっと一緒にいたとは……」
 「……お教えできず申し訳ない。かの御仁が殿ということは、陛下を含めたごく一部の方しか知りませなんだゆえ」
 「いや、だから、ノルベルトさんは悪くないんですって」
 婚約の儀式が終わって、参列者は徐々に解散しつつある。そんな中、やや疲れてしまった理咲は人の流れに逆らって歩いていた。周りに人気がなくなった所で、ついて来てくれたノルベルトが心底申し訳なさそうに謝って来る。だからもう良いんだってのに。
 ――ルビアス卿、実は現王三傑のひとりである。そしてその称号は『赫貉公かくばくこう』――貉はムジナ、つまりアナグマとかタヌキを指す言葉だが、そのイメージ通りに変身呪文のエキスパートだった。それをフル活用してみせたのが、今回の一件だったのである。
 「召喚されてきた子が性格に問題あって、王家のひとに言い寄って大変だったこと、これまでもあったんでしょ? ついでにクーデターの気配まであったんだから、それに備えて動くのは当然ですって。最初から殿下に変身し続けてるとは思わなかったけど」
 「そう言っていただけると……陛下によりますと、本物のクリスティアン殿下もお元気で過ごされているそうです。ルビアス殿の後任として」
 「ああ、外交官ですっけ? 忙しそうだけどやりがいあるんだろうなぁ」
 相変わらず申し訳なさそうな隊長殿だが、ルビアス本人はネタバラししたとき丁重に謝ってくれたし、星蘭の守護者が復活しかけたのからも護ってくれた。あの時のセリフはそういう意味だったのかと納得したものだ。だからもう、理咲は全然気にしていなかった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった

風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」 王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。 しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。 追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。 一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。 「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」 これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

処理中です...