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第一章:
うちの家主が言うことには⑤
しおりを挟む「探すって、どうやって」
『うん。さっきも言ったように、天眼はおれの力の結晶だ。本来なら何百何千と月日を経なければならないところを、取り込むだけで一気に霊力や妖力を増幅できる。……まあ、その反動に耐えられるものはそうそういないと思うが、それが自分で判断できるものはそもそも無謀な真似はしないだろうし』
ふんふん、とうなずきながら聞いていた梓紗の動きが、ここでぴたっと止まった。ちょっと待て、いまさらっと恐ろしい発言がなかったか?
「……えーっと、つまり、そこら辺のザコ妖怪? が取り込むと、霊力妖力爆上げできるけど、やっちゃうとそのパワーに耐え切れなくて自滅しちゃう。ってことでしょうか」
『いや、自滅で済めばまだいい。過ぎたる力は身を滅ぼすが、そうなると力を押さえる者がいないから、天眼の力は野放図に広がり続ける。最悪、四方一畝が粉微塵に』
「紛れもなく大事じゃないですかあ!!!」
けろっと付け加えた白澤に絶叫した。一畝は確か、昔の単位で面積を指す言葉だったはずだ。具体的な広さは忘れたが、被害の規模を表す使い方をするなら、ネコの額みたいな狭い範囲を指すわけがない。確実に大惨事になる!
『――そこで、だ。おそらく、天眼のあるところには不穏な空気が満ちていると思う。アヤカシそのものがいなくてもその気配だとか、残滓を感じるかもしれない。それに、強い力に惑うのは人外ばかりじゃない』
「てことは……あ、霊感が強かったり、カンが鋭かったりする人間も危ない!?」
『そういうことだ。だから梓紗には、まず人の集まっているところに行ってみてほしい。良からぬ噂が立っていたら、その出所をたどって行くんだ』
すぐには見つからないかもしれない。なにせ大体百年以内に、経緯もわからず行方知れずになったものだ。今頃どこかの有力者にでも拾われて、家宝として大事にしまい込まれているかもしれないんだし。
思っていた以上にヤバい話だったことに戦慄しつつ、梓紗は思わず腕を組んでうなった。これはちょっと、のんびり二度寝なんてしている場合ではない。
(社畜街道から抜け出したばっかりで、危険物処理班に移籍するとは思わなかったなぁ……でも)
これは、生まれて初めてやってきたチャンス、かもしれない。身内の思惑も都合も関係なく、自分がやりたいからやる、という、今までしたくても出来なかったことをやる絶好の機会。
……清水の舞台から飛び降りるどころか、ナイアガラの滝からロープなしでバンジーするレベルの危険度だけども。
「――よし、わかった!! どれくらいやれるかわかんないけど、とにかくやってみる!!」
『本当か! ありがとう、助かる』
「うんまあ、これから一宿一飯どころじゃない期間お世話になるわけだし、その分はちゃんとお返ししなきゃ!」
ぱあっ、とつぶらな瞳を輝かせた白澤に笑ってみせつつ、勢いよく立ち上がった梓紗、だったのだが、
……ぐう~~~~……
「あ゛」
『……すまん、朝餉がまだだったな。それに着替えも』
「…………うう、すみません」
すかさず響き渡ったマヌケな音に、年長者らしくちゃんとフォローを入れてくれた家主の前で、何年ぶりかで顔を真っ赤にした梓紗は思わず正座で謝ったのだった。
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