桜の木の公園

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オレンジ色の空

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  僕は、そっとあの手裏剣を見せた。
「持っていてくれたんだね。有難うね」 懐かしそうに微笑んだ佳奈ちゃんに、丹精込めたケーキを見せると 驚きの声があがる 。
「わー。たもっちゃん! プロじゃん。苺がいっぱいある」
「お誕生日おめでとう。ケーキの中にも沢山入っているよ。今パティシエ目指しているんだ。帰って皆で食べて」
「本当にいいの? 将来のカリスマパティシエのケーキを貰って」

 話し出してどれくらいの時が経っただろう。ベビーカーの中で眠っていた子供が目を覚まして泣いた。 
「あー。ユズ起きたのね」 手慣れた動作で抱きかかえる佳奈ちゃんを見て、何故か胸がキュンとした。
「泣き止んだね。抱っこしてもいい?」
「いいよ。重たいけど」子供を託されると、ミルクの香りが漂ってきた。
「重くないよ。可愛い。泣かないんだ」
「人見知りはまだ先なの」佳奈ちゃんは母親の顔になって微笑んで答えてくれた。
「この桜の木って、こんなに小さかったっけ?」佳奈ちゃんは空を見上げて、思わず言った言葉を受けて、僕は微笑まずにはいられなかった。
「僕達が大人になったからかな」って、話してみたら、まだ冷たい風が頬を掠めた。

 連絡先は聞かずに 、幸せな親子三人を笑顔で見送り、公園を後にした。 帰途につく道中に、何故か視界がぼやける。 気が付くと頬を濡らしていた。逢えて凄く嬉しかった。本当に。
「今はもう、佳奈ちゃんの誕生日に、ケーキを与えてくれる人物がいる。もう寂しくないんだね」
 僕は一人で言葉を発すると、  涙が溢れて止まらなくなった。 安堵の涙なのか。失恋に似た涙なのか。僕にはよく判らなかったんだ。涙を拭いた手を下ろし、空を見上げると、青色だった空がオレンジ色に変化していく様子が、しっかりと瞳の奥に映った。
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