ヒロインに攻略されないと死ぬゾンビホラー乙女ゲーの攻略対象に転生したんだが!?

古森きり

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再探索開始

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「残りは飲み水にするけど、いいよな?」
「あ、ああ、もちろんだ……すまん」
「いや。外がダメとなると、建物の地下を目指すしかない。覚悟はいいな?」
「「「…………」」」

 水の残りがない。
 食糧もない。
 昨日の昼から誰もなにも食べてないのだ、いずれ二日目のような限界が来る。
 外へ出ることを試してもいいが、ドアを壊せば外に手に負えないような怪物がいた場合建物内へ逃げ戻ってもドアを閉められなくなり、逃げきれないかもしれない。
 なにしろ、墨野すみや真嶋ましまは武装したゾンビに追いかけられたのだ。
 ドアを壊したら武装ゾンビが傾れ込んでくる可能性もある。
 それはさすがにヤバすぎるだろ。
 地下を探索して、水と食糧を探して他の出口を探すのがまだ安全性が高いだろう。
 ちなみに建物内を探索するのを俺が提案・推奨したのはもう一つ理由がある。
 ……建物内の電気が、ついたのだ。
 まるで建物の中に迎え入れられたかのように、通路の天井の電灯が点滅しながらも薄く点いた。
 一部は床の電灯だったりもするが、建物内に電気が通っているのが確認できたということになる。
 ゲーム終盤、この建物に戻ってくるが……どうやら俺たちはゲームよりやや早く終盤に差しかかっているようだ。
 俺が覚えている範囲だと、建物最下層で部屋の前にいるボスを倒し千代花ちよかのパワードスーツ胴体分を手に入れて、最後の部屋に進む。
 そこでラスボスを倒して、好感度が一番高いキャラと脱出する——だったはず。
 ただ、これは無料版のエンディングだ。
 DLCはお高い上、千代花ちよかの秘密も、この施設がどうのも全部の謎が解ける。
 俺はそっちをやってない。
 無料版だとフワフワしていたが、多分俺たちはこれからDLC版に挑まねばならないんだろう。
 つまり俺もこの先は未知数!
 最終確認とばかりに三人へ問うと、三人とも複雑そうな表情。
 わからけれども。

「で、電気がつくということは、人がいるってことですもんね」
「そ、そうですよね。調べてみる価値はあると思います。もしかしたら、この建物はこの事態を想定したシェルターかもしれません。それなら水や食糧、医療道具が保管されている可能性もゼロではないですし……建物が地下に潜っているのも、人為的でなければ説明がつきません」

 うんうん、千代花ちよかも賢い。
 実際学校みたいな建物が地下に潜ってるって、それだけで異様だろ。
 この建物はなにかある。
 というか、なにもないわけがない。
 普通に最終ステージだ。

墨野すみや真嶋ましまはこの部屋で待ってるか?」

 安全かどうかはわからない。
 しかし、片手が使えない墨野すみやは足手まといに磨きがかかっているはず。
 ぶっちゃけ置いていきたい。

「僕はついていきますよ! 置いてけぼりは嫌です!」
「じゃ、じゃあ俺も行く! 一人で待つのは嫌だ!」
「そうですね、やっぱりみんな一緒の方が安全ですよね」

 千代花ちよか優しすぎん?
 まあ、俺も別に見捨てたいわけじゃないしなぁ。

「じゃあみんなで行くか。先行は俺と千代花ちよか、真ん中に怪我した墨野すみや、一番後ろを真嶋ましまでいいか? それとも一番後ろは俺が務めるか?」
「きゅ、究極の選択すぎません……!?」

 そう?
 危ないのはどっちも同じよ?
 どちらかと言うとこの先——主に地下には武装したゾンビ以外にも三つ巴という強めの敵も出る。
 三つ巴はマジで強いし、千代花ちよかのアーマーがある部屋のボスもかなり強かった記憶があるんだわ。
 後ろからも襲われるし、前も後ろも左右も安全な場所はない。
 連れて行く人数が増えると千代花ちよかの負担も増える。
 かといって置き去りにした攻略対象が、クリア後どうなるのか知らんし……見捨てないというのなら、連れて行くしかない。
 千代花ちよかは見捨てるつもりもなさそうだし。
 しかし、この先には“人間”の敵が出るはずだ。
 味方の攻略対象やヒロイン千代花ちよかを囮にして逃げる、などの裏切り行為を行う以外のガチ目の裏切りの可能性が出てくる。
 地下へ進むとこの施設の研究者が何人か接触してきて、攻略対象と二人きりになると千代花ちよかを一人にして罠にかけようとする、だったな。
 なお、『おわきん』プレイ時俺は高際たかぎわ義樹よしきに八回中七回裏切られてモンスターハウスみたいな個室に閉じ込められた。
 アイテムうまうまだったがシンプルに許せんよなぁ?

「では、一番後ろは高際たかぎわさんにお願いします!」
「ああ、わかった。千代花ちよかちゃん、前を頼む。真嶋ましま、その代わりお前は墨野すみやを見ててやれよ」
「わかりました!」

 元気いっぱい返事をしてくるけれど、不安が拭えねぇ。
 ともかく、四人でいざ建物内探索を開始する。
 若干、久方ぶりに感じるぴりぴりとした緊張感の探索だ。
 静まり返った建物内に響くのは、俺たちの足音だけ。
 しかも蛍光灯がいちいちブチブチ……と点滅するから腹が立ってくる。怖くて。
 地味にホラゲー感出しやがって……!
 本当地味にちゃんと怖くしやがって……!
 わかってるよ?
 これ、俺の逆ギレだって。
 でも怖くて逆にキレてないとやってらんねぇんだよ。
 俺一番後ろだしさぁ!

「部屋は一つ一つ確認してみよう」
「はい、そうですね」
墨野すみやは一休みしてていいぞ。真嶋ましまは窓際を探してくれ」
「わかりました」

 ゲーム通りならアイテムが増えているはずだ。
 アイテム……水や食糧がな!


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