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愚かなる人間どもよ覚悟しろ!
しおりを挟む「ふはははは! 愚かなる人間どもよ、泣け! 叫べ! 命乞いをせよ! 今日が貴様ら種の終わり! 我は魔王! 魔王ディアークである! ふはははは!」
訳。
人間の皆さんこんばんは。
私の名前は魔王ディアークと申します。
この世界の創世神に依頼されて、人間の皆さんを間引きしに参りました~。
と、言うわけでその世界、『クローラ=リディーア』に魔王が現れた。
人間たちは戦争の手を止め、魔王軍への対抗戦へと移行する。
…………しかし。
ちゅどーん!
という大爆発が、大陸の各地で起きた。
人間たちは魔王への攻撃と偽り、これまで戦っていた相手の国へ大量破壊兵器を落としたのだ。
人間はあっという間に燃えて消え、後に残ったのは魔王軍と焼け野原のみ。
愕然としてしまった。
これまでいくつかの世界を渡り歩いてきたけれど、こんなにあっさり自滅した世界をさしもの魔王も見たことがない。
「ど、どうなさいます? 魔王様……」
「と、とりあえず生き残りの人間がいないか探してみる?」
四天王の一人、レーガが魔王に耳打ちしてくる。
しかし、遠目の水晶で探せども探せども、人間どころか生き物もなかなか見つからない。
大陸のいくつかは形が変わっているし、森や湖も見当たらなくなっていた。
なんつー破壊兵器を使いやがったのだろう、ここの世界の人間たちは。
下手をすれば、自分たち魔族に使われていたかもしれない兵器。
そう考えると、自滅ザマァ、と思わないでもないが……。
「えー、どうすんの魔王サマー。この世界の創世神には「ちょっと落ち着く程度に間引いてもらえればオッケーなんでー」って言われてたんでしょう? 絶滅しちゃいましたよー?」
「えぇ、これ我のせいじゃないじゃんジーブ。なんで我のせいみたいになってるの」
「一度、創世神に連絡を取ってみたらどうかしらぁ?」
「そ、そうだね、ダッキちゃん」
他の四天王に言われて、早速連絡を取ろうとする。
しかし、創世神への連絡は方法が限られていた。
その連絡方法は以下の感じ。
・聖剣を持つ勇者がいる。
・創世神が選んだ巫女的な少女がいる。
・創世神と仲のいい神様的な存在がいる。またはその創世神と仲のいい神様の神子的な存在がいる。
などなど。
「つ、詰んでんじゃねーか」
「そんな事言わないでよガード!」
魔王から創世神への連絡は、基本最初の『依頼』の時のみだ。
後はそれっぽく倒されたり、封印されるふりをする。
魔王とは世界の脅威として生まれてくるが、ディアークのような下層魔王は創世神の依頼で増えすぎた人間を間引くのが主な収入源。
そのお礼に間引いた人間の魂を魔力に変換し、頂いて少しずつ力を蓄え強くなり、上を目指すのだ。
最初の頃は自分に合った世界でないとあっさり負けてしまうこともあるので、滞在先の世界は慎重に選ばなければならない。
ディアークは幸いにも、生まれて初めての世界で四人の部下を得ることができた。
それがレーガ、ジーブ、ガード、ダッキちゃん。
みんな優しくて、仕事のできる優秀な部下たちである。
そして、次なる依頼がこの世界だった。
また五人で力を合わせて頑張ろう!
そう、手を取り合ってやってきたのに、早々に人間たちが自滅。
これは困った。
どうしたものだろう。
創世神に百パー「やりすぎ」って怒られるやつだ。
いや、その創世神との連絡をとる方法がないんだが。
「あ! 見て見て魔王サマー! 島に集落が残ってるよ!」
「なんだとぉ⁉︎」
それなら戦争していた悪い人間たちを無事間引いた。
依頼終了って事になるのでは!
ジーブが指差した島を、全員で期待を込めながら覗き込む。
残念! もぬけの殻である!
「…………ど、どうしましょう……」
「むむむ、このままではディアーク魔王軍への信頼に関わる……! いくらここが『閉じた世界』だとしても、『ディアーク軍、やり過ぎ! 人間界完全破壊!』とか、魔王軍ネットワークで書かれかねない。我々魔王ってお互いの足の引っ張り合い大好きだもん」
「普通に『魔族』でくくれば良いのでは?」
「何言ってるの、レーガ! 異世界にはいい魔族だっているんだよ! 我たちのせいでそういう魔族に迷惑かけたら心苦しいでしょ!」
「さ、さすが魔王さまぁ! お優しい~! ダッキますます好きになっちゃったぁん!」
「魔族の定義とか、よくわかんねーもんな! さすが俺の見込んだ魔王たぜ!」
「でもじゃあどうするの」
「……………………」
振り出しに戻った。
「……レーガ、人間は生まれてくるのに何百年くらいかかるんだ?」
「え? ええと、猿がいれば環境にもよりますが……数千年ほど、かと……」
「猿かぁ」
では次に猿を探す。
残念! 生き物の大半も巻き込まれて確認できない。
「むむむ……」
「人間を育てるおつもりですか?」
「我々の評価を守るためにも、人間にはちょっとくらい生きててもらわねばならんからな。全滅してしまったのなら作るほかあるまい」
「さすが魔王サマー! 僕らでは思いつかないことを思いつくねー!」
「なんというど真面目! このレーガ、一生お供いたします!」
でも、実際人間はどう作るのか。
そもそも、数多の世界で人間は大体自然発生する。
創世神が人間から神化した場合でも、わざわざ人間を最初から作ることは稀だという。
なので、まずは人間が自然発生しやすい環境を整えることから始めるべきだろう、という結論を導き出した。
「つまり?」
ジーブが首を傾げる。
決まっている!
「世界を洗浄する! レーガ、まずは兵器使用で環境汚染された空気、大地、海を綺麗にするぞ! ヒュドラなどの毒竜部隊に、この世界の毒素を食べさせるのだ!」
「御意!」
こうして魔王軍による惑星の浄化が開始された。
毒の洗浄の後は、水の確保が必要になるだろう、とディアークはジーブへ水性の魔物たちを集めておくよう指示を出す。
それから、抉れて穴だらけになった大地を整えねばならない。
土竜や、蚯蚓型の昆虫系の魔物をガードに選りすぐるよう伝える。
そして空だ。
蔓延する毒霧が、雲の形になり雷を帯びながら世界を覆い始めていた。
これもなんとかしなければ、日光不足で生き物や植物が育つ事はないだろう。
ダッキちゃんに雷を食べる雷牛に乗って、お空を散歩してきてもらう事にした。
まずは危ない雷を食べてもらわねば、毒竜部隊に空を飛んで毒素のもぐもぐタイムにはありつけないだろうと踏んだのだ。
しかし、あんまり長時間食べさせたら毒竜部隊もさすがにお腹いっぱいになるはず。
急がず焦らず、毒を食べる魔物を交代で派遣する必要があるだろう。
その辺りの采配はレーガに任せた。
軍師でもある彼の采配なら間違いはないだろう。
「まずは毒抜きですね」
「うむ、皆の働きを期待するぞ!」
「「「「はっ!」」」」
これは魔王ディアークが、魔王として中堅ぐらいにレベルアップしつつ、その世界に救済王として君臨するまでの物語。
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