ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

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Frenzyメンバーの顔合わせ(1)

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「Vtuberとコラボするのは慣れてので大丈夫です。人とするゲーム、好きですし」
「そうなんだ。じゃあ聞いてみるね。それはそれとして、智子が言い争ってた他校の子って……」
「チコさんは顔見知りっぽかったです。なんか、芸能科に行くべきとかなんとか」
「ああ……やっぱりそういう話をされてたのか」

 首を傾げる鏡音。
 きっと智子に会いにきたのはLARAだ。
 執着されているとは思っていたが、別の学校に通い始めたのにまだつきまとうとは。
 一度LARAの親御さんも交えて、しっかり話し合った方がいいかもしれない。
 女同士だと警察に行ってもあまり真剣に取り合ってもらえないかもしれないが、このままだと生活に支障が出そうだ。

「多分智子の……妹の幼馴染だね。俺の妹は昔劇団に所属しながら読者モデルなんかもやっていたんだけれど、その時の昔馴染みがずっと執着しているんだ。智子も、我が家もみんなちょっと困ってて……」
「そうなんですね。確かに……困ってましたね」
「まあ、鏡音くんには関係のない我が家の事情だから気にしないで。コラボの件、放課後顔合わせがあるから聞いてみるよ」
「……顔合わせ?」
「あ、えーと、事務所が同じで――同期扱いになる人だから」

 と、ごまかす。
 まだVtuberとリアルのアイドルが一緒になってアイドルグループをやる、なんて言えない。
 そのあたりは守秘義務の中だ。
 それに鏡音にはあくまでも明後日のお披露目に集中してほしいと思っている。

「鏡音くんはお披露目の練習、今日が最後だもんね。本当は見ていてあげられたらと思うけど、難しいから本番を楽しみにしているね」
「あ……はい」

 実際割とガチで楽しみにしているドルオタ。
 デビューするために努力しているアイドルもまた最高。
 柳も鏡音も非常にスペックが高いので、おそらく転科しなくてもやっていけるとは思うが……。
 一応智子にメールだけして、いつも通りに日中は過ごす。
 放課後になってからすぐに春日芸能事務所に向かい、案内されたスタジオに入る。
 そこにいたのは石動上総いするぎかずさ
 東雲学院芸能科を今年三月に卒業したばかりの、元『勇士隊』君主リーダー
 そしてその対面に佇む癖毛の眼鏡男子が松田春樹まつだはるき
 さすが元東雲学院芸能科に在籍経験があるだけあって、スラリとしたスマートな長身イケメン。
 アイドルとして十分にやっていけそうな容姿だが、彼はVtuberとしてデビューする。

「揃いましたね。では各自自己紹介を」
「石動上総だ」
「松田春樹でース」
「音無淳と申します。よろしくお願いします!」

 春日社長に促されて各自が名前だけを告げる。
 しかも石動と松田は顔を合わせようともしない。
 出だしから空気が悪すぎて、淳と春日社長は困惑。

「えっと、喧嘩とかしました?」
「いや別にぃ? そんなことより別に個人で練習しててもいいんだろう? 全員集まる必要なくねぇ?」
「来年のIG、初日一発目でトドメを刺す――そういう曲を全員で練習してもらわねばなりません。別に仲良くする必要はないですが、去年のように知名度の高い栄治と一晴の超高難易度曲をぶち込むわけにはいきませんからね。三人で超高難易度曲をやってもらいます。そもそも、一人Vtuberが入る、というだけでは絶対舐められます」

 キッパリ言い切る社長。
 その根拠として、大手のVtuber事務所がすでに3Dでライブイベントを開催していること。
 松田がVtuberとしてデビューするのは五月一日。
 来年の夏の陣まで時間はあるので、それまでに登録者数を伸ばしたいところだが春日芸能事務所はマルチのタレント事務所であってVtuber事務所ではない。
 実質、松田は個人勢のようなもの。
 もちろん、Vtuberは今年さらに増やす予定らしいが、一期生として松田は一人ぼっち。
 色々準備はしているが、個人勢のような扱いで登録者を増やすのは大変。

「3Dやら歌ってみたやらは準備がほぼ終わっていますし、曲とダンスもこちらで確認していただきますが……まあ、とにかく最初の一曲で他の参加者の心をボッキリ折っていただかねばなりません。Blossomブロッサムのメンバーにも言ってきましたけどね。相手の心を折り、自分たちは折れない。そういう実力を、この一年で徹底的に磨き上げていただかねばならないので――個々で練習していただく分には構いませんけど、三人で練習した方がいいこともあります」

 と、言ってタブレットを壁にプロジェクターを向け、モニター代わりにしてプロの見本と電子音声の歌声を流して見せた。
 去年の神野栄治と鶴城一晴の『異なる歌を、一つの曲として昇華した楽曲』を、三人で歌うという鬼畜仕様。
 あの石動上総が目を丸くして沈黙した。

「本気で言ってる? これ」
「もちろん」
「しょ、正気の沙汰じゃない、こんな曲。誰が作詞作曲したんだ」
「僕の旦那が作った作曲AIだそうです。流行りや過去に人気の楽器を分析して作っているらしくて三十分で一気作ってしまうんですよ。もちろんベースをAIに任せて作曲してもらい、プロがブラッシュアップして仕上げていますけれど」

 顔を見合わせてしまう淳たち。
 かなりエグいことを言っている気がする。
 しかし、AIに著作権は発生しない。
 権利はブラッシュアップした人のものになる。
 歌詞も同じくAIで生成されたものを、組み換えていく作業を経て完成させていくらしい。
 なお、歌詞の方はAIが本当にポンコツなので春日社長が添削して作り直しているそうな。


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