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いちごのコラボユニット(1)
しおりを挟む「もうー、笑ってる場合か。つまりそういうことでね、仕事の依頼は春先、先輩たちの卒業と同時に激減するの」
「「「え」」」
いや、なんとなくわかっていたことだけれど。
綾城と花崗は去年個人の仕事を中心にしていたので、宇月と後藤も今後そうなっていくだろう。
つまり星光騎士団の仕事は二年生、一年生がメインになっていくということ。
確かにそう考えると一緒に仕事していく相手として新入生を選ばなければならない。
「僕とごとちゃんもそうするけど、四月から六月は徹底的に営業して仕事をゲットしていかなきゃいけないの! 星光騎士団の名前はそれなりに知れ渡り始めているけれど、所詮は学生! 舐められるに決まってる! 六月の後半からは去年依頼したIG夏の陣用の新曲、三曲も練習しないといけない。ついでにIG夏の陣に向けて一年どものケツも叩かなきゃいけなし、やることいーっぱいあるからね!」
「言葉にされるとスケジュールがすでにゾッとしますね……」
「そうだよー。一応チェックシートまで作っておいたけどね。まあ、そんな感じで今年から頼れる珀先輩もひま先輩も卒業しちゃうんだから、来年を見据えて自分たちで頑張っていこう! って気合い入れ直してよぉ?」
「は、はい」
「はい」
「は、はぁい!」
綾城と花崗の卒業、別れを惜しむ時間もほとんどない。
スタッフが電話で宇月に『そろそろステージ脇に移動よろしくお願いします!』と連絡が入る。
今日のステージから、三年生のいない――一年生と二年生だけのライブが“通常”となるのだ。
寂しいけれど、仕方ない。
「やっほー! 星光騎士団第一部隊の宇月美桜ちゃんだよぉ~! 今月から僕たちが中心になるんだけど、引き続き応援してくれたら嬉しいなぁ~!」
「今年も頑張るから、みんな応援よろしくね~」
宇月と後藤がステージからファンへ呼びかけつつ、今年の『送祝祭』は現実とSBO内との二段構えであることを告知する。
配信を見ている層は、間近で“星光騎士団の綾城と花崗”に会える最後の機会。
特に花崗は“アイドル”そのものは卒業。
アイドルの花崗に会えるのも、その日が最後なのだ。
遠方のファンならぜひ、今のうちにフルフェイスマスク型VR機とSBOを購入し、最後のライブに来てくださいねー、と宇月がダメ押しの売り込み。
人間、最後と限定にはどうしても弱い。
推し相手ならむしろ仕方ない。
「~~~♪」
曲が終わり、ライブが終わると歓声に包まれる。
この一年で、ライブにも慣れたように思う。
初めてステージに立った時の、あの緊張感。
淳は舞台でそれなりに慣れていたが、ガチガチだった魁星と周の今の姿は一年前とは比べるまでもないほどに成長している。
(俺たちもこの一年でちゃんと成長できたんだな~)
などと感慨に耽っていると、魁星が「ねーねー、宇月先輩~」とマイクを持ったまま話しかけた。
ステージ上の宇月は猫をかぶっているので優しく「なぁに~、ブサー」と笑顔で対応してくれる。
「このあと午後一時からジュンジュンと御上がメインのコラボユニット第二弾がライブするじゃん? 負けたくないから俺と周も空きステージでライブしたいんだけど、時間被せても大丈夫かな?」
「お、なになに、どっちがお客さんを多く招けるかバトるの?」
「そうそう。やっていい?」
「いいんじゃない? それなら僕とごたちゃんも空きステージでライブしようか~?」
「ちょっ……コラボユニットは本当に今日限りなんですから、お客さん取っていこうとするのやめてくださいよ~!」
魁星と周ならともかく、宇月と後藤のコンビはやばい。
マジでお客さんが取られてしまう。
「お客さんたち、そんなわけでコラボユニット『いちご狩り』は午後一時からだよぉ~。僕らも応援に行くから、みんなも絶対観に来てねぇ~」
「普段では見れないメンバーによる、限定ユニットだからね。グッズはないけれど、いちごは売っているんだっけ?」
「はい、そうです。一時に講堂ステージでライブ予定ですが、今回のコラボユニット『いちご狩り』は毎年東雲学院芸能科と近隣のいちご農家さんとが提携して『新年♪ アイドルといちご狩り』イベントのためにコラボユニットを組んだものですので、講堂物販では新鮮ないちごが販売されています! ライブだけでなくぜひ、講堂物販でいちごをお買い求めくださいね~」
淳が宣伝して、星光騎士団のライブは終了。
すぐに講堂の方に移、控室で専用衣装に着替える。
準備を終えたところで他のメンバーも着々と揃っていく。
「お、音無くん、いちご農家の方が一時までに持ってきたいちごの数が足りないかもしれないので、追加で持ってきます、とおっしゃっていました」
「本当? コラボユニットの冥利に尽きるね」
「ですよね~。あ、あのあの、いちご、ぼくも購入して……その……フ、フルーツサンドを作ってきたのですが……も、もしよろしければ……あの……」
「え、もしかして俺も食べていいの?」
「あ、あの、もしよければ、はい……昼食のサンドイッチも、その、作ってみたんですけれど、はい……」
「俺もお弁当作ってきたんだ。一緒に食べない?」
「あ……! は、はい……」
二人で控室のテーブルにお弁当を広げて、少し早いお昼ご飯。
食べている間に飯葛と緋村が控室に入ってくる。
「あ、なにか美味しそうなの食べてる」
「音無が料理できるのは知ってたけれど、御上も料理できたんだ?」
「あ、え、ええと、いえ、あの……食パンに、生クリームといちごを挟んだだけなので……」
「天才じゃーん」
「あれ? 緋村くんと飯葛くんだけ? 長緒くんは?」
「長緒は二年生の会議に参加中。俺たち以外の一年の中で、日守みたいに蟲毒に巻かれて転科希望のやつが三人出たらしいからさ。四天王のグループの維持がむずいんじゃないかっていう話をしているっぽい」
「そうなんだ……渡辺くんと阿部くんと藤堂くんかな?」
「うん、そう」
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