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十月の定期ライブ(1)
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十月末、定期ライブ。
「うわぁ~、モンブランだ~!」
綾城珀、好きなケーキ:モンブラン。
「さすが先輩たち! 完璧なショコラケーキ! ありがとうございます!」
音無淳、好きなケーキ:チョコレート系全般。
「まあ、このくらい余裕よな」
「余裕余裕! この二年で僕らのケーキ作りの腕も上がったよねぇ」
「珀先輩と淳くんに喜んでもらってよかったです」
ドヤ顔の花崗と宇月。
SD越しで微笑む後藤と、心底安堵したような魁星と周。
未だに料理は練習中の魁星と周は、今回誕生日月の綾城と淳のために必死にお菓子作りの上手い先輩たちの足でまといにならないように頑張ってくれたのだろう。
綾城も淳もそういう心遣いが一番嬉しい。
「あ、そうだ……今日の夜なんですけど――」
「うん、大丈夫。二十時にログインしてくれるって」
「ありがとうございます」
こっそりと淳が隣の綾城に耳打ちする。
実はとあることを綾城に依頼していた。
無事に実行できそうで、胸を撫で下ろす。
「お、なになに。SBOの話?」
「うん。魁星たちも今日、ログインする?」
「なにかイベントがあるのですか?」
「ううん。いや、まあ、イベントといえばイベントなんだけれど」
と、濁す。
首を傾げつつ、魁星と周もSBOの中での戦闘はダンスと歌の同時タスクを行わねばならないのでとてもいい練習になるので「ログインするー」と即決。
遊びながらダンスも歌も練習できるので、本当にアイドル向きのゲームだ。
「ほな、星光騎士団の“客寄せ”ライブから始めて……一年生ズのコラボユニットは午後一番、十三時の野外大型ステージやっけ」
「はい。人数が多いので二つのユニットに分かれて『決闘』をすることになっています」
「告知はちゃんとしてきたぁ?」
「一応、SNSでは毎日告知してきました。自宅のプリンターですけどポスターも作って学院の入り口にも貼り出しましたし、東雲学院公式チャンネルにショート動画にして、あげてもらいましたよ」
「……結構ガチで上手い告知しとる……」
「僕も教えてないのに……」
淳のプロデュース能力に引いている花崗と宇月。
使える公式は全力で使え、である。
という感じで本日限りのコラボユニット企画はそれなりに幅広く告知していた。
コラボユニットは本日限りであり、コラボユニットグッズもロゴ入りのサイリウムと缶バッチ、ハンドタオルしか間に合わなかったけれど。
「上手くいくといいね」
「一ヶ月練習しましたから、大丈夫です」
「一人足引っ張るヤツがいましたけど、最低限仕上げたからなんとか……なるかなぁ」
「まあ、出たとこ勝負だよね。少なくともチームAは大丈夫」
自信満々な淳と周。
しかし、魁星は自信がなさげ。
やはり日守が間に合わなかった感じがする。
「わしらも絶対観に行くで。なにしろうちの末っ子たちがそれぞれのチームリーダーなんやろ。楽しみやなぁ」
「チームBのリーダーは芽黒くんですよ……」
「実質的なリーダーはブサーなんでしょ。ならリーダーと変わんないよぉ」
無茶苦茶言いよる、この先輩たち。
しかし綾城も後藤も「観に行く」と頷くので、急に緊張感が増した。
先輩たちが来るなら、変なパフォーマンスはできない。
いや、もちろん手を抜くつもりはないけれど。
特に魁星が顔を青くした。
宇月に見られる=チェックされる、と思うとなにを言われるか。
完全に主従関係のようになっている。
「コラボユニットのライブも楽しみだけれど、まずは本家ライブも忘れないでね。今年はもう新曲を覚えなくてもいいけれど――新しいアレンジ曲は覚えてもらわないといけないし、今月は僕と淳くんの誕生日月だからセンターは僕らだし」
「は、はい! もちろんですっ」
「そっかー、ジュンジュン今日は綾城先輩とダブルセンターだもんね!」
最初で最後の綾城とのダブルセンター。
なぜなら誕生日月なので。
練習は手を抜いていないが、コラボユニットの打ち合わせや宣伝、練習と演技指導の個人依頼もあり、星光騎士団の練習時間は以前よりも減った。
綾城も年末の『聖魔勇祭』や『Blossom』の練習や仕事もあって、最近登校も少ない。
寂しいけれど、忙しいのは活躍しているということ。
「年末の『聖魔勇祭』コラボユニット一年生の部もかかっとるけど、これなら淳ちゃんは堅そうやなー」
「確かに~。前期も一位だったしねぇ。ブサーとクオーも維持してればいいけどぉ~。ね?」
「「ひぃ」」
宇月に圧をかけられて、震え上がる魁星と周。
花崗が「それ言うたら、みーちゃんも怪しいやん。二年生の部」とわざわざ宇月の頭に顎と腕を乗せる。
きぃー! と叫ぶ宇月がそれを払い除けて振り返り「縮む! やめろ! この嫌味男!」と胸ぐらを掴もうとした。
すぐに綾城が「衣装よれちゃうよ。美桜ちゃん、可愛い笑顔が台無しになっちゃうよ」とやんわり宇月を引き離す。
すぐさま宇月が振り返って「はぁい♡ 珀先輩♡」と手のひら返し。
逆に「すごい」と思ってしまう身代わりの速さ。
真似できるかと言われると絶対できない。
蔵梨柚子のファンとはいうが、年々宇月は彼に似てきているような気がしないでもないような。
「それじゃあそろそろステージに行こうか。早くライブを終わらせて、お客さんにもケーキを食べてもらおう」
「そうですね! 俺も早く先輩たちや魁星、周が作ってくれたケーキ食べたいです!」
「うんうん。僕も!」
「そういやぁ、珀ちゃんは誕生日当日婚約者はんに会えたん?」
「うん、ゲームの中で祝ってもらった」
婚約者さんは今海外。
だが、ゲームの中なら距離は関係ない。
いい時代だな、と思う。
「うわぁ~、モンブランだ~!」
綾城珀、好きなケーキ:モンブラン。
「さすが先輩たち! 完璧なショコラケーキ! ありがとうございます!」
音無淳、好きなケーキ:チョコレート系全般。
「まあ、このくらい余裕よな」
「余裕余裕! この二年で僕らのケーキ作りの腕も上がったよねぇ」
「珀先輩と淳くんに喜んでもらってよかったです」
ドヤ顔の花崗と宇月。
SD越しで微笑む後藤と、心底安堵したような魁星と周。
未だに料理は練習中の魁星と周は、今回誕生日月の綾城と淳のために必死にお菓子作りの上手い先輩たちの足でまといにならないように頑張ってくれたのだろう。
綾城も淳もそういう心遣いが一番嬉しい。
「あ、そうだ……今日の夜なんですけど――」
「うん、大丈夫。二十時にログインしてくれるって」
「ありがとうございます」
こっそりと淳が隣の綾城に耳打ちする。
実はとあることを綾城に依頼していた。
無事に実行できそうで、胸を撫で下ろす。
「お、なになに。SBOの話?」
「うん。魁星たちも今日、ログインする?」
「なにかイベントがあるのですか?」
「ううん。いや、まあ、イベントといえばイベントなんだけれど」
と、濁す。
首を傾げつつ、魁星と周もSBOの中での戦闘はダンスと歌の同時タスクを行わねばならないのでとてもいい練習になるので「ログインするー」と即決。
遊びながらダンスも歌も練習できるので、本当にアイドル向きのゲームだ。
「ほな、星光騎士団の“客寄せ”ライブから始めて……一年生ズのコラボユニットは午後一番、十三時の野外大型ステージやっけ」
「はい。人数が多いので二つのユニットに分かれて『決闘』をすることになっています」
「告知はちゃんとしてきたぁ?」
「一応、SNSでは毎日告知してきました。自宅のプリンターですけどポスターも作って学院の入り口にも貼り出しましたし、東雲学院公式チャンネルにショート動画にして、あげてもらいましたよ」
「……結構ガチで上手い告知しとる……」
「僕も教えてないのに……」
淳のプロデュース能力に引いている花崗と宇月。
使える公式は全力で使え、である。
という感じで本日限りのコラボユニット企画はそれなりに幅広く告知していた。
コラボユニットは本日限りであり、コラボユニットグッズもロゴ入りのサイリウムと缶バッチ、ハンドタオルしか間に合わなかったけれど。
「上手くいくといいね」
「一ヶ月練習しましたから、大丈夫です」
「一人足引っ張るヤツがいましたけど、最低限仕上げたからなんとか……なるかなぁ」
「まあ、出たとこ勝負だよね。少なくともチームAは大丈夫」
自信満々な淳と周。
しかし、魁星は自信がなさげ。
やはり日守が間に合わなかった感じがする。
「わしらも絶対観に行くで。なにしろうちの末っ子たちがそれぞれのチームリーダーなんやろ。楽しみやなぁ」
「チームBのリーダーは芽黒くんですよ……」
「実質的なリーダーはブサーなんでしょ。ならリーダーと変わんないよぉ」
無茶苦茶言いよる、この先輩たち。
しかし綾城も後藤も「観に行く」と頷くので、急に緊張感が増した。
先輩たちが来るなら、変なパフォーマンスはできない。
いや、もちろん手を抜くつもりはないけれど。
特に魁星が顔を青くした。
宇月に見られる=チェックされる、と思うとなにを言われるか。
完全に主従関係のようになっている。
「コラボユニットのライブも楽しみだけれど、まずは本家ライブも忘れないでね。今年はもう新曲を覚えなくてもいいけれど――新しいアレンジ曲は覚えてもらわないといけないし、今月は僕と淳くんの誕生日月だからセンターは僕らだし」
「は、はい! もちろんですっ」
「そっかー、ジュンジュン今日は綾城先輩とダブルセンターだもんね!」
最初で最後の綾城とのダブルセンター。
なぜなら誕生日月なので。
練習は手を抜いていないが、コラボユニットの打ち合わせや宣伝、練習と演技指導の個人依頼もあり、星光騎士団の練習時間は以前よりも減った。
綾城も年末の『聖魔勇祭』や『Blossom』の練習や仕事もあって、最近登校も少ない。
寂しいけれど、忙しいのは活躍しているということ。
「年末の『聖魔勇祭』コラボユニット一年生の部もかかっとるけど、これなら淳ちゃんは堅そうやなー」
「確かに~。前期も一位だったしねぇ。ブサーとクオーも維持してればいいけどぉ~。ね?」
「「ひぃ」」
宇月に圧をかけられて、震え上がる魁星と周。
花崗が「それ言うたら、みーちゃんも怪しいやん。二年生の部」とわざわざ宇月の頭に顎と腕を乗せる。
きぃー! と叫ぶ宇月がそれを払い除けて振り返り「縮む! やめろ! この嫌味男!」と胸ぐらを掴もうとした。
すぐに綾城が「衣装よれちゃうよ。美桜ちゃん、可愛い笑顔が台無しになっちゃうよ」とやんわり宇月を引き離す。
すぐさま宇月が振り返って「はぁい♡ 珀先輩♡」と手のひら返し。
逆に「すごい」と思ってしまう身代わりの速さ。
真似できるかと言われると絶対できない。
蔵梨柚子のファンとはいうが、年々宇月は彼に似てきているような気がしないでもないような。
「それじゃあそろそろステージに行こうか。早くライブを終わらせて、お客さんにもケーキを食べてもらおう」
「そうですね! 俺も早く先輩たちや魁星、周が作ってくれたケーキ食べたいです!」
「うんうん。僕も!」
「そういやぁ、珀ちゃんは誕生日当日婚約者はんに会えたん?」
「うん、ゲームの中で祝ってもらった」
婚約者さんは今海外。
だが、ゲームの中なら距離は関係ない。
いい時代だな、と思う。
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