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文化祭に出張中(2)

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「音無さんの妹さん……絶対あとで調べます! ありがとうございます! では、次は花房魁星くん」
「あ、俺は……俺は彼女ほしいなーって思ってるけど、彼女作っても多分、アイドルとしてのレッスンとかで幸せにしてあげられないと思うから作れないかな。彼女に使う時間ないっていうかさ」
「なるほど~。では、星光騎士団最後は狗央周さん」
「自分は……自分の家は……非常に問題が多いので……恋人はおろか結婚も正直考えていません。巻き込めば大変な苦労を強いることになると思うので……」
「アマリンちは、そうだよね」
「周の家は……そうだね……」
 
 花崗と宇月と後藤もなんとも言えない表情。
 複雑そうな司会女子は「え、えーと」と困惑。
 とりあえず周が「家に問題があるので生涯独身を貫く覚悟なのです」と言い放つと司会女子は「そうなんですね! それでは――」と隣の『御輿ミコシDE・JUMPジャンプ』にマイクを向ける。
 賢い判断である。
 あちらもそつなく返事をして、次のコーナーに移行。
 次のコーナーはグループメンバーのことをどのくらい知っているか。
 こちらは事前にメンバーへアンケートをしていた。
 
「まずは星光騎士団の方々へ問題です! 花崗ひまりさんの好きな食べ物は!」
「はい! ベイクドチーズケーキ、チーズハンバーグ、チーズケーキタルトなどチーズ系全般! ちなみにピザなども生地から作れますし、チーズソムリエの資格もお持ちです!」
「う……ぇ……あ、せ、正解――え?」
「淳ちゃん、わしアンケートにそこまで書いてへんねん……。わしがチーズソムリエの資格取ったの今月の頭なんよ、なんで知ってんねん」
「え、十月二日の個人SNSツブヤキッターで呟いておられたので」
「お、おう……」
「そ、そうなんだぁ。ひま先輩、おめでとう……」
「ありがとうさん……」
 
 ドルオタの本領が発揮されすぎている。
 これは淳がドルオタ無双してしまうのでは。
 いや、若干こうなる気はしていたけれど。
 
「ジュンジュンは色々知りすぎだから解答権なしの方がいいんじゃない?」
「わしもそう思うわ」
「僕も」
「俺もそう思う」
「自分もやめた方がいいかと……」
「まさかのメンバー全員一致? 確かに答えられないことはないと思うけど……」
「え、そ、そうなんですか……」
 
 と、いうことで淳には解答権なしの方向で。
 ものすごくうずうずしていたが、気を利かせて司会女子が「では第二問! 音無淳さんについての問題!」と言い放つ。
 解答権をなしにしたので、逆に出題対象にしたということだ。
 
「音無さんの趣味はファッション雑誌を読むのがお好きとのことですが、特に海外から取り寄せてまでも読んでいる雑誌があるそうです! それはなんでしょうか!」
「「「「「birthday」」」」」
「えっ!? せ、正解! え、すごい!」
 
 全員即答。
 思わず恥じらう淳。
 海外で神野栄治が載っている雑誌はいくつかあるのだが、そのすべてを通販するのは難しい。
 なので、家族総出で○○誌は誰が担当、と担当が決まっている。
 淳はイギリスのファッション誌『birthday』が担当。
 なので、『birthday』だけはやたらたくさん持っている、ということ。
 他の雑誌は父の地下書斎に保管してある。
 で、そのことを知っているメンバーは真顔で即答。
 
「では次の問題です! 音無淳さんの特技は料理、とのことですが」
 
 あれ、また淳の問題? と首を傾げる星光騎士団。
 
「狗央周さんは『自分だけが知っているメンバーの特技』欄に音無さんの特技は○○である、とお答えがありました。それはなんでしょう!」
 
 そんな問題ありなのか?
 目線だけで全員が全員、意思疎通を行う。
 この場合、淳も解答していいのか?
 
「あの、その問題は俺も解答していいのでしょうか」
「はい! どうぞ!」
 
 すごい斜めきた。
 とはいえ、淳にも『第三者から見た淳の特技』を当てろ、と言われても即答ができない。
 こればかりは腕を組んで悩む。
 が、魁星が元気よく「はい!」と手を挙げる。
 
「はい、花房さん」
「演技!」
「え」
「正解!」
「え」
 
 淳だけが困惑。
 二、三年も「あー」と納得の声。
 
「え、俺は確かにミュージカル俳優志望だけれど、演技はイマイチだと思うんだけれど」
「「いやいやいやいや」」
 
 全力で首を振る魁星と周。
 二人は「マジで雰囲気まで変わる」「この間のドラマの公開オーディション番組の時の演技、凄かったですよ」「プロの俳優まで度肝抜かれてたもんね」「あとこの間の日守との対話の時のも演技ですよね? 凄かったです、本当に別人で」等々絶賛。
 あの時のことと、そして日守を追い詰めた時の“演技”はよほどインパクトがあったのか。
 
「ミュージカル俳優志望なので、演技を褒められるのは嬉しいです。でも、本当にまだまだ未熟者なので、なんだか過大評価ですね」
「「あれで?」」
「でも演技指導の依頼きてるんでしょぉ? そんなに謙遜することないと思うけどぉ」
「身に余るお仕事です。俺では本当に役不足だと思っているんですよ。演技の世界は本当に、なんというか……アビス?」
 
 深淵アビス……。
 黙り込むメンバー。
 言っていることはわかるのだが、言い方はそれで合っているのか。
 
「えっと、では……御輿ミコシDE・JUMPジャンプの方々に問題を出してみましょう」
 
 司会女史がマイクを隣の三人に向ける。
 葛たちも問題を答えて、次はいよいよライブ。
 先に準備に入る星光騎士団。
 
「~~~♪」
 
 続いて御輿ミコシDE・JUMPジャンプ
 終わってから控室で着替え、淳がスマートフォンを確認すると千景からメッセージが来ていた。
 
『直接相談したいことがあるのですが、ご都合のよい日はございますか?』
 
 とのことだ。
 
(千景くんが”直接”……? なにかあったのかな?)

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