ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

文字の大きさ
144 / 553

コラボユニット始動(2)

しおりを挟む

「――ということで以上十四名となりました。ここから辞退、というのはご遠慮ください。なお、コラボユニットは特別制度ですが、必ずグッズを作ることも義務づけられており物販にサイリウム、ハンドタオル、フェイスタオル、バッチ、個別サイン入りチェキを予定しています。サイリウム、ハンドタオル、フェイスタオル、バッチはユニット名ロゴのみのものですでに発注済みです。後日衣装が完成後に個別チェキの撮影及びサイン入れも行いますので、その日程もチャットルームからスケジュールに記載お願いします。同等雑務系はこちらで行いますが、ここまでで質問はありますか?」
 
 にこ、と笑顔で聞く淳に、ポカーンとしている一年生たち。
 少なくとも『SAMURAI』のリーダーである芽黒は知っていないとダメだろうに。
 
「え、ええと……ろ、ロゴ……っていうのは? ユニット名ってもう決まってる?」
「え? チャットルームの方に書いておいたけど……。ロゴはもうデザイン発注済みだし、仕事の早いデザイナーさんだからもうデザインもいただいているよ。こちらでーす」
 
 と、タブレットからデータを表示する。
 おお……という声。
 日守と熊田は苦い表情をしている。
 この程度のことも覚えていないのか、と内心で落胆しつつ、他のグループの人はもっと死ぬ気で覚えないと埋もれてしまうだろうな、と憂いも覚えた。
 
「ちなみにこういうデザインや衣装、グッズ発注も『イースト・ホーム』からできるんだけど知ってる?」
「「「えええ!?」」」
「そうなの!? できんの!?」
「『イースト・ホーム』のメニュー『外注』を選択して、なにを発注したいのかのカテゴリから東雲学院芸能科と提携している業者に依頼することができるんだよ。もちろん外注だからお金はかかるけれど」
 
 正直言うと外注は本当にお金がかかる。
 今回は千景が以前勇士隊に提供した楽曲著作権使用料――サブスクによる収入と第二部隊の仕事の売り上げを周と魁星にも確認を取って使わせてもらった。
 楽曲は千景が作ってくれたし、演奏もパソコンで仕上げてくれた上、衣装デザインは後藤がホクホクしながらやってくれた。
 さらに振付は朝科と宇月がソワソワ作ってくれたので、かなり先輩たちに助けてもらえたと思う。
 これらを全部外注していたら、一年生には到底支払えない金額である。
 
「ちなみに振付は朝科先輩と宇月先輩が作ってくれたし、衣装は後藤先輩が全員分作ってくれることになっているし、ユニット名ロゴのデザインは石動先輩と柴先輩伝手で格安にしてもらったので、各先輩方を見かけたらお礼を言ってほしいです」
「えええ……三大大手グループの大御所が……!?」
「あと綾城先輩と花崗先輩もSNSですでに宣伝もしてくれているので、これから脱退する人は衣装代を徴収します。逆に最後まで出演してくれた人には物販売り上げを配分します。この辺りは制度で決まっていることなので、もし脱退を考えている人は今日中に申し出てくださいねー」
 
 さらに周が「物販売上は年末の『聖魔勇祭』出演コラボユニット『トップ4』の一年生ランキングに大きく関わることになるので、上位を狙うなら脱退はお勧めしません」とつけ加える。
『トップ4』が選出される一年生売上ランキングは“校内売上”が条件であるため、コラボユニットによる物販売上はそれに該当するのだ。
 上半期のランキングは星光騎士団第二部隊が上位を占めており、四位は日守。
 だが、三位と四位はそれなりに差があり五位の御上とは僅差。
 むしろこのコラボユニットで目立てなければ、日守は一気に降下する。
 上位は事務所から注目されやすいため、今だに目立てていない一年生アイドルたちは一発逆転の好機。
 しかも、予定である十月の定期ライブ物販売上は下半期ランキングの締切でもある。
 滑り込みのチャンスなのだ。
 それを聞いた途端、全員が顔を見合わせて顔つきを変えた。
 
「さて、というわけで雑務系は俺と周で行うので、みんなには歌とダンスのレッスンに注力していただきます。で、こちらに朝科先輩と宇月先輩という奇跡のコラボダンス見本映像がありますので、これを見ながらダンスを覚えてください。なお、俺と周と魁星は大体覚えたのでわからないところは魁星に聞いてください。俺と周はいる時に聞いてくれれば答えます」
「「えっ」」
 
 双子のびっくりした声。
 まあ、びっくりするだろう。
 そして歌詞カードと仮歌音源も配布。
 仮歌は千景による千景のイメージ通りの仮歌である。
 全員各々、ダンスの振付を確認しながら歌も聴き始めた。
 だんだん、顔が青くなる一部。
 
「それと、今回シャッフルして二つのユニットに分かれ、当日に『決闘』を行います。『決闘』なので、二つに分かれたらそのユニット同士で練習をしてください。なお、先程報酬の話をしましたが『決闘』で勝利した方がサブスク配信用の歌唱を担当することになります。つまり、東雲学院芸能科の校則及びコラボユニット制度の契約に基づき、卒業までの三年間、サブスク配信による売り上げが自動的に勝者ユニットメンバーに分割で支払われることになります。それらはすべて“校内売上”にカウントされることになる――ここまで言えばわかりますよね?」
「それって……!」
「三年間、売上が入り続けるってこと……!」
「そう。ランキングに超有利になるってことー」
 
 全員が驚愕の表情で、顔を見合わせてる。
 当然三大大手グループのメンバーはそのサブスク配信売上の配分をもらっているため、ランキングにも多大な恩恵を受けているわけで、それに参加できていない小規模・中堅どころのグループはサブスク配信そのものに参加が難しいため差が開く。
 今回のコラボユニットの参加によるサブスク配信売上は、そういう生徒にとってはあまりにも魅力的。
 特に御上千景の作詞作曲は、今後注目度が上がるだろう。
 千景のビジュアルとパフォーマンス力で話題が広がらないわけがないからだ。



しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...