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『侵略』開始!(2)
しおりを挟むえー!?と客席から困惑の悲鳴があがる。
慣れた東雲学院芸能科ファンは「魔王軍の『侵略』三年ぶりくらいじゃない?」「もうやらないのかと思った」「きゃー! 顔のいい男に可愛い一年生が公式に拐わかされる最高ご褒美シチュキタコレェ~~~~~~~!」という若干変な感想も込みで声が。
今月はIG夏の陣準優勝から興味を持って来たファンが多いため、その星光騎士団の淳が魔王軍のメンバーにされてしまうなんて、そりゃあ驚愕。
かつて、三大大手グループの”特権”『決闘』『侵略』『下剋上』が横行していた頃はどこの誰が今どこのグループに所属していたかわからないほどになっていた。
三大大手グループが”大手”と言われているのもそうして他のグループを吸収して人数を増やし、勢力争いをしていた時代があるから。
星光騎士団の『決闘』は、その仲裁としての意味合いが大きい特権だ。
で、その仲裁のための特権を悪用して使っていたのが蔵梨柚子。
そんな色々歴史深い”特権”について、星光騎士団のIG夏の陣準優勝で東雲学院芸能科の定期ライブを知って初めて遊びに来た層は、初めて来てこれはそりゃあびっくりする。
狼狽える魁星と周は二、三年の方を窺う。
フッと微笑む綾城。
「では星光騎士団側からは魔王軍へ『決闘』を申し込みましょう。歌う曲は東雲学院芸能科公式曲、『Idol Songs』。我々が勝ったら淳くんを返してもらいますね」
「おや? 『決闘』を申し込む側は得意曲を選ぶことができるのに、星光騎士団の歌を選ばなくっていいの?」
「練習させる時間を与えるつもりはありません。今、この場で返してもらうので」
綾城の笑顔の返答に、朝科が笑顔で「オッケー」と答える。
心なしか魔王軍の二年生ズの顔色が青ざめたような気がしないでもないような。
「ほな、曲のセッティングしよか。先制はどっちかな?」
「「最初はグー! じゃんけんぽん!」」
じゃんけんぽん。
顔面偏差値カンストしているような高身長アイドルグループリーダーが「じゃんけんぽん」。
淳だけでなく客席の方からも、うっとりした胸キュンの吐息が漏れる。
客席は星光騎士団のファンが九割なのに、これは魔王軍朝科の兼業ファンが爆増しただろうな。
「星光騎士団が先行ですね」
「ふっふっふっ、後攻の方が有利だからこれでマイスイートは魔王軍のメンバーにいただいたも同然だね」
「あげへんて」
「いや! もらう! ウチで可愛い可愛いってするから!」
「そうですよ! 我々が卒業するまでに立派な魔王に仕上げてみせます!」
「練習環境ならうちが一番優れているんだから、うちが全力で魔王にするよ!」
「あ、暑いです先輩方……! さすがに! 毛……ファーがっ」
魔王軍、衣装にファーが多い。
講堂はクーラーが一番効く、体育館よりもお客さんが入るステージだ。
それでも真夏真っただ中の八月にスポットライトの当たるステージでモフ率の高い衣装の高身長先輩三人にもみくちゃにされたらどうあがいても暑い。
ついでに言うと――
(か、顔がいい~~~)
朝科旭の国宝級の顔面。
整った美人系檜野と可愛い系雛森も、淳の大好きな東雲学院芸能科アイドル『魔王軍』。
ドルオタ、大好きなアイドルの顔が近くて唇を強く噛み締めてしまう。
が、宇月に「こらぁ、ステージ上で唇噛みすぎ、血出たらどうするのぉ!」と怒られる。
すみません。
「では、淳くんはここで勝負の行方を見守っていてね。私たちが必ず勝利して君を迎え入れるから」
「え、ええと……」
騎士なのに、魔王軍に捕らわれる姫状態。
ステージ中央の一人掛けソファーに座らせられ、先制の星光騎士団がステージ中央にスタンバイする。
イベントスタッフが音響設備を操作して、東雲学院芸能科公式曲『Idol Songs』のイントロが流れ始める。
東雲学院芸能科公式曲は、一年が授業で教わる校歌のような曲。
新入生が最初のライブオーディションで歌ったり、新規でグループを立ち上げたはいいが、歌える楽曲がないのではアイドルとして成り立たない。
そんな新人のために用意されている楽曲が、東雲学院芸能科公式曲。
公式曲は『Idol Songs』以外にも四曲ほどある。
専用曲を大量に持つ大手三大グループ、中堅グループは歌わないので星光騎士団と魔王軍が歌うとなると比較的新鮮な感覚で聴くことができるだろう。
「~~~~♪ ♪ ♪」
花崗が周と魁星を「鍛え直すで」と笑顔で言っていたのは、公式曲を星光騎士団の持ち歌レベルで歌いあげられるようにすること。
振付も一応決まってはいるが、三大大手グループの一角がなんのオリジナリティーもなくお決まり通りにするわけにはいかない。
なにしろ、これは『決闘』だ。
星光騎士団が負ければ淳が魔王軍に獲られる。
星光騎士団らしさも交えた型通りでありながらも美しい均衡のとれたダンス。
一糸乱れぬ完璧な振付と、各メンバーの特質を押し出したパート分け。
講堂に集まっているのは星光騎士団のファンなので、歌い終わると歓声が上がる。
続けて再び同じイントロが流れ始めた。
次に歌うのは魔王軍。
星光騎士団がすぐに舞台袖に引き上げて、代わりに中央位置につく。
星光騎士団と同じ歌のはずなのに、アレンジが強い歌い方と完全に自前の振付で挑んできた。
同じ曲なのに、思い切り変えてきたのだ。
客席からワア、という歓声。
魔王軍らしいセクシーで艶めかしいダンスと歌声に、恐らく初めて魔王軍を見た層からは「きゃあああ」という悲鳴が上がっている。
くどいようだが同じ曲のはずだ。
歌うグループによって、こうも変わるとは。
アウェイのはずなのに、さきほどの「じゃんけんぽん」で最初に杭を打ち込まれたお客さんの目は完全に虜になっていそうだ。
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