ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

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『さあ! ついに三日間の長い戦いに決着がつきます! 勝ち抜いたのは学生セミプロで名を馳せる東雲学院芸能科、三大古参グループの一角星光騎士団! 約四年前、当時在学中で騎士団長だった神野栄治こうのえいじ鶴城一晴つるぎいっせいがプロの独壇場だったこのIGアイドルグランプリに殴り込み、学生セミプロという呼び方を定着させた伝説が今、パワーアップして蘇りました! リーダーはなんと同じく決勝に進んだBlossomブロッサムのリーダー、綾城珀あやしろはく! メンバーを改めてご紹介します!』
 
 司会の羽白とCRYWNクラウンの四人がステージに上がり、手を広げて決勝に進んだグループを出迎える。
 最初に出てきたのは綾城。
 続いて花崗みかげひまり、宇月美桜うづきみお後藤琥太郎ごとうこたろう音無淳おとなしじゅん花房魁星はなぶさかいせい狗央周くおうあまね
 魁星と周はもう、笑顔が怪しい。
 引き攣っているところを淳が「頑張って」と応援している。
 
『そして新進気鋭、なんと今年の五月にデビューしたばかりの超絶新人がIG夏の陣を暴れ回った! そう、卒業してモデル、俳優として活躍し、アイドルの世界から一度は飛び去ったあの伝説の学生セミプロアイドルが、再びこのアイドル界に旋風を巻き起こしている! リーダーは星光騎士団と同じく綾城珀! もはや時代の新星! アイドル界の寵児と呼んでも過言ではないだろう! 伝説の学生セミプロアイドル神野栄治と鶴城一晴、そしてシンデレラボーイ甘夏拳志郎あまなつけんしろうを率いる綾城珀のグループ! その名の通り、今日、今この場で完全に開花する! Blossomブロッサム
 
 星光騎士団の反対側から現れるBlossomの三人。
 綾城が登場順の関係で星光騎士団の制服で登壇したので、副リーダーの甘夏が一番前へ出た。
 先輩二人がニマニマ笑っているのに、甘夏自身はこれほどの大舞台で前へ出されるとは思っていなかったのか泣きそうな顔である。
 モニターから響く羽白アナウンサーの声のあと、CRYWNの岡山リントがマイクを握って手を掲げた。
 
『そして! 今日出演した三日目まで勝ち残ったアイドルの入場だよー! みんなの推しが出てきたら拍手で出迎えて、健闘を讃えてね!』
 
 流れ作業のように名前を呼ばれていく本日まで勝ち残った出演グループ。
 広いステージがあっという間に狭く感じるほどになる。
 勢揃いしたことで、いよいよ感が高まっていく。
 さっきまで疲れ果てて笑顔も怪しかった魁星と周が、後ろから感じる敗者の圧に背筋を正す。
 そうだ、自分たちは多くの敗者を踏み潰して、このステージの一番前へ立っている。
 アイドルを初めたのはBlossomのメンバーよりも日の浅い自分たちが、だ。
 努力して努力して努力して、ようやくここに立っている彼ら。
 その努力に見合う努力をしてきただろうか?
 少なくとも淳は胸を張ってここに立つ。
 もうなにも出せないほど出し切った。
 魁星と周にも「笑顔笑顔~」とにこにこ振り返って告げるくらいには、音無淳も“アイドル”。
 このステージにいるのは、全員自分の体や疲れなど二の次で、笑顔を振り撒く超人の集団。
 
『さあ、今日の出演グループが揃い、投票の結果も出たようです』
『いよいよでありますね! 我々まで緊張してまいりました!』
『緊張するよねぇー! 投票は参加したけど、結果は僕たちもまだ知らないからねー!』
『投票には参加してるんだけどねぇ~』
 
 と、好き放題に言うCRYWN。
 羽白が『CRYWNの皆さんも気になっておられるとのことで、早速結果発表にまいりましょう……!』と言い出す。
 が、当然のように『その前にCMです!』と続く。
 そうなる気はしていたが、アイドルたちも疲労が激しい。
 この時間はどうしても焦れる。
 
「珀ちゃん、大丈夫かいな?」
「大丈夫だよ。ホテルまでは多分、もつから。でもお風呂とご飯は無理かな。すぐ寝たい」
「ほな、部屋まではわしが運んだるわ」
「……うん、ありがとう。ひまりちゃん……。君が僕と同じ代になってくれて、本当によかったと思うよ……。僕がいなければ君が星光騎士団の団長だったのに、ずっとこうして支えてくれて……本当に感謝している。ありがとう……」
「そんなん、言いっこなしやん。やめてーな。まだ早いて。そういうんは卒業ん時に言うて」
「うん……そうだね」
 
 漏れ聞こえる、三年生同士の会話。
 三年の重み。
 間もなくCMが明ける。
 仕切り直しのCRYWNと羽白のMCが入り『それでは皆様、モニターにご注目ください!』と手を掲げられた。
 
『20XX年、アイドルグランプリ夏の陣――優勝は――』
 
 音楽が鳴る。
 初の学生セミプロ優勝か。
 デビュー四ヶ月の新人の初出場初優勝か。
 どちらも快挙には変わりない。
 テレビ、ネット、そして会場で観ていた視聴者、観客、スポンサーの選んだ今年の顔ともいうべきアイドルグループは……。
 
Blossomブロッサム! なんと、CRYWN以来の初出場、初優勝という快挙です!!』
 
 
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