ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

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IG夏の陣、三日目(7)

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「というわけで、準決勝を勝利し、決勝に駒を進めた学生セミプロアイドルグループ『星光騎士団』に来ていただきました。リーダーは快進撃を続ける『Blossomブロッサム』と同じく綾城珀さん! そして一緒に来られたのは――」
「みんなに笑顔と胸キュンあげちゃう♡ 星光騎士団第一部隊所属、次期団長で可愛い担当・宇月美桜ちゃんだよぉ~」
「アイドル大好き! 星光騎士団第二部隊隊長、ドルオタ担当・音無淳でーす!」
 
 なんの打ち合わせもしてないのに、唐突に淳が『ドルオタ担当』に就任した。
 え? と一瞬思ったがツッコミを入れることはせずスルーする綾城と宇月。
 二人とも疲れているので「まあそれでいいか」と思っている。
 インタビューを担当するのはアナウンサーの羽白真湖はねしろまこ
 その顔を見た瞬間、淳が「羽白真湖はねしろまこだ~! 勇士隊十代目君主!」と嬉しそうな表情で呟いたので、羽白が驚いた顔をする。
 
「え、あ、はい。そうです。よくご存じですね」
「俺が東雲学院芸能科のアイドルにハマったの、星光騎士団十一代目の頃なんです。その前の世代のことも調べて、映像も見たりして知ってます! 羽白真湖さんといえば勇士隊の『下剋上』特権で格上上級生を二人も引き入れたのは伝説的な功績を残されてるんですよね!」
「うわあ、本当にお詳しい……! 懐かしい情報なのに、まだ知ってくださっている人がいるなんて……」
「有名ですし、未だに勇士隊箱推しのファンの方が羽白さんのグッズをバックにつけておられましたよ」
 
 さすがにファンの名前を出すのは憚られたが、心当たりがあるのか羽白の目が見開かれた。
 彼は卒業と同時にアイドルを卒業して西雲大学に進学し、地方アナウンサーになった人だ。
 ファンの人はアナウンサーになった羽白のことも応援しているので、羽白真湖という人物のファンなんだろう。
 それでもアイドル時代のグッズを大事にしているのは、アイドル羽白真湖が今も好きなのだ。 
 そんなに長く愛される、愛してくれるファンのことを想い至らないわけがない。
 だから本当に嬉しそうに微笑む。
 
「本当にアイドルがお好きなんですね」
「俺、妹と一緒にいた時に小学生の時に神野栄治さんに助けてもらったことがあるんです! それ以来本当に大好きで大好きで。神野栄治さん繋がりで東雲学院芸能科のことも知ってドはまりしたんです! 今年のIG夏の陣、俺の大好きな東雲学院芸能科のアイドルが快進撃をしてくれていますし、神野栄治さんと鶴城一晴さんがBlossomブロッサムでまたアイドルをやっている姿を見られて感無量です! その上尊敬する綾城先輩も同じグループでリーダーをされているんですよ! も~~~、Blossomブロッサム、応援しないはずもなく!」
「お前推しうちわ持ってきてたのぉ!?」
「準決勝に残ったグループの推しうちわは全部持ってきました!」
「す、すごいですね」
 
 カメラや音声のスタッフも顔が「わ、ガチだ」という表情。
 綾城が視線で「そろそろ淳くんを止めて」と宇月に合図。
 
「ほらほら、ナッシーがIGに出てるアイドル大好きなのは十分伝わったから、羽白先輩のお話聞こうね」
「はい!」
「すみません、続けてください」
「あははは、とんでもないです。星光騎士団は実に面白い新入生を迎えられたんですね。一年生でこんな大舞台に出場して堂々としてできるなんて、音無くんはなにかの経験者なんですか?」
「鶴城一晴先輩と同じ劇団に所属していました。学業とアイドル活動に専念するので退団しましたが」
「つまり将来的にアイドル一本をお考えなんですか?」
「俺はミュージカル俳優志望なんです。演技も歌も踊りも大好きなので」
 
 初手で完全に羽白の興味が淳にいってしまった。
 綾城と宇月が「決勝への意気込みインタビューが」と少し思わんでもないが、綾城への負担が少し減っているので宇月的にはまあいいか、とうんうん聞いている。
 
「それで憧れで恩人の神野栄治さんや、劇団の先輩の鶴城一晴さんと同じ星光騎士団に入られたんですね。学生セミプロがここまで勝ち進み、ついに次は決勝ですが――綾城さんはBlossomが勝ち進んだ場合双方リーダーということになりますが」
「星光騎士団リーダーとしてBlossomに勝ちますし、勇士隊が勝ち上がっても同じです」
「二つのグループのリーダーとしての参戦は、身体的にも精神的にもかなり大変だったのではありませんか?」
「そうですね。でも、一度死のうと思って死ねなかった僕にとって、僕をここに立たせてくれたすべての人に本気で向き合える時は全力を注ぐと決めています。……まあ、おかげで”彼女さん”にさっぱり会えていなくって、甘えすぎだなってそこだけは落ち込んじゃいます」
「宇月さんは次期団長ということですが、決勝で勇士隊とBlossom、どちらも縁深いグループですよね? 戦略などは考えておられますか?」
「実はもう歌う曲は決っているんですぅ。IGの前にドルオタ担当ナッシーが『この曲を歌ったら熱い展開だよねー』って曲を歌うことになってるんですよ!」
 
 さすがに彼女の話はスルーされた。
 綾城ガチ恋勢には確かに聞かれたくない話題だし、今回の全国放送でファンはさらに増えたことだろう。
 それなのに堂々と”彼女さん”の話をして、知らない”ガチ恋勢”への牽制を欠かさない。さすがだ。
 
「おっと、ここで結果が出たようです」
 
 インタビューの最中に勇士隊とBlossomの準決勝結果が出た。
 そうなるように時間を計算していたのだろう。
 二つ目の準決勝の結果は――

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