ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

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アイドルグランプリ解説

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「撮影は以上です。いい映像がかなりたくさん撮影できましたので、パソコン室の方でざっくり切り貼りしてきます。デモ版ができたらすぐに確認させていただきます。デモ版で皆さんの要望をいただき、完成品は一週間以内に納品させていただきますね」
「そんなにすぐにデモ版ができるんですか?」
「ええ、本当にざっくりした切り貼りしたものになるので。早速作業に移らせていただきます。それで双方に必要な画がほしいとなりましたら、またご協力をお願いするかもしれませんのでご了承ください」
「智子ちゃん、スタジオ復帰手伝ってくれる?」
「はぁ~い、お父さん!」
 
 花崗が音無母をパソコン室に案内している間、スタジオを囲んでいた青い生地を回収して畳んでいく音無父と智子。
 淳もそれを手伝う。
 
「少し休憩してから、本番想定して初日から本戦二日目、三日目分まで通してみようか」
「はぁーい」
「Bスタジオ準備してきます」
「あ、僕も行くよー」
 
 後藤と宇月が隣のスタジオに行って、その間床にへたれ込んでいた魁星と周はゆるゆる顔を上げる。
 さらに三日分歌うのか、と若干目が遠い。
 
「はあー、それにしてもお披露目前の星光騎士団の新曲を振付つきで見られるなんて最高♡ 受験勉強めっちゃ頑張れそう~。今年は初日しかチケット取れなかったからな~」
「お父さんは二日目だけだったよ~」
「母さんは全日程外れたって言ってんだから、行けるだけマシでしょ? 俺なんて出演者側だから応募そのものができなかったんだから」
 
 と、頬をふくらませる淳。
 綾城がペットボトルのキャップを閉めながら「座席の抽選応募していたんだ……」と驚く。
 ドルオタの嗜みである。
 
「あのー、綾城先輩」
「うん、なぁに?」
「先輩はプログループの方でも出演するんですよね? 時間とか大丈夫なんですか?」
「一応出演時間は確認したけれど大丈夫。向こうで僕の忙しさとか鑑みて、二日目から出番を入れてくれているし」
「え?」
 
 顔を見合わせる魁星と周。
 青い布を畳み終わって、鞄にしまい込む淳が「どうしたの?」と話しかける。
 
「あのさー、俺いまいちIGのシステムわかってないみたいなんだけどさー」
「ええ? この間ちゃんと説明したのに?」
「だって綾城先輩、初日はプログループの方出ないって……」
「え? そうなんですか? 綾城先輩」
「栄治先輩に『初日なんて俺と一晴だけで十分だよね』って言われちゃって。気を遣ってくれたんだよね、二つのグループのリーダーとして練習詰め込んでたのに渋い顔されちゃったし」
「「「さすが栄治様」」」
「様……」
 
 音無家が栄治を様づけするのはいつものことなのに、周が思わず引いてしまう。
 実際『 Blossomブロッサム』の方も予選は軽々突破した。
 プロなので当たり前ではあるけれど。
 
「なんかたくさんアイドルグループが参加するんだよな? 俺たちっていうか、星光騎士団はプロっていう扱いじゃないのに本戦? に出られるの?」
「ええ~、そこからぁ?」
「だってこ難しくて一回聞いただけじゃ覚えらんないよぉ」
 
 もお、と肩を落とす淳。
 後ろで智子が「魁星くん、お馬鹿キャラが素なんて可愛い~」と褒める。
 それは素直に褒めていいのか。
 
「しょうがないなぁ。あのね、アイドルグランプリ、通称IGは夏と冬にそれぞれ開催される全国のアイドルが参加権利を持つ最大級のお祭り! 参加登録をしたあと運営が二ヶ月かけて予選を執り行い、勝ち抜いた四十三グループが本戦初日会場でパフォーマンスを行うの」
「うんうん」
「本戦に出られるグループは予選を通っていれば事務所に所属していないプロじゃなくても大丈夫。たとえば星光騎士団、魔王軍、勇士隊は学生セミプロの代表格として割と書類だけで予選通過できるぐらいの知名度になっているの。これは先輩たちの努力の賜物でね、全国的に見ても強豪として認知されているんだけどね」
「うんうん」
「十月に学生セミプロ――芸能科のある学校で行われる『学アイラブトーナメント』もあるんだけどそれは今回説明は後回しにするとして」
「う、うん?」
 
『学アイラブトーナメント』についても喋りたくて仕方なさそうなのだが、今回は我慢する、と耐える顔。
 可愛いな、と真顔で思う魁星を眺めながら「可愛いとか思っているんでしょうね」と察する周。
 純粋にスルーする綾城。
 
「本戦のシステムはシンプルな勝ち抜き戦。対戦はランダムで決められて、二つのステージに一グループずつ登場してパフォーマンスを行う。初日のパフォーマンスは一グループにつき一曲のみ。MCもなし! 現地会場の他、動画サイトやSNSなどのネットのアンケート機能や地上波のBボタンなどでも投票を受けつけている。パフォーマンスより知名度で選ばれることが多いから、素人グループやセミプロは初日で負けるのがほとんどだね。ちなみに四十三グループ中三つのグループはシード。三日目にようやく出番があるよ。なので初日にパフォーマンスするのは実質四十組。サクサク進むよ。二日目は審査員が加わり、パフォーマンスも二曲プラスMC三分の持ち時間。トーク力も見られるし、その時間を自己紹介に使うかまったく使わないか、どう使うかも見られる。二日目に上がれた場合星光騎士団は花崗先輩がMCを担当するからお任せしていいよ」
「ほ、ほお……」
「そして三日目は完全勝ち抜き戦。シード枠の三組と敗者復活の一グループが加わってパフォーマンスも二曲プラスMC三分間を最大四回繰り返す。シード枠は前回のベスト3。当然全部プロ。マジで体力勝負だし、同じ曲とパフォーマンスの繰り返しは飽きられるから持ち曲が多く、体力お化けなグループが圧倒的に有利って言われているよ」
「ッ……」

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