38 / 319
オーディション結果(2)
しおりを挟む
「花房くんと狗央くんも今回ダメでも、芸能事務所オーディションはこれから何回も開催されるから大丈夫。活動を続けてアイドルとしての実績を重ねれば、指名も来ると思うしね。自分に合った事務所を探していくといいよ。音無くんも、研修生の件はよく考えてね。春日芸能事務所はまだ所属している人そのものが少なくて、事務所の方向性も定まっていない感じなんだよ。多方面に手を広げるか、いくつかのカテゴリーに絞るか。少なくともアイドルタレントは増やす予定みたいだけれど、音無くんの目標はミュージカル俳優でしょう? ミュージカル俳優に強い事務所は『宝船プロダクション』とか『東峰』とかちゃんとあるし、そういうのを考えて選んだ方が君のためだと思うな。栄治先輩はモデルだし、一晴先輩はマルチ俳優だし、音無くんの夢と二人の職業って重なってないし」
「あ……そ、そうか……」
「は、はい。ありがとうございます」
「なるほど。そういうものなんですね。……自分のやりたい方向性に合う事務所選び、ですか……」
三人して「うーーーん」と悩む。
綾城のフォローと助言は的確で、淳も『研修生』の用紙を改めて眺める。
自分のやりたいこと――ミュージカル俳優になりたい。
その夢を、果たして春日芸能事務所は叶えてくれるだろうか?
一応俳優のカテゴリで鶴城一晴がいるが、彼は劇場だけでなく幼い頃からテレビや映画、他にも声優、ナレーターのような声の仕事にも出演しているマルチ俳優。
今は主に2.5次元俳優として活躍している。
同じ俳優だが、一晴は自称「歌はあんまり得意じゃない」という。
2.5次元、歌を歌うことが多いのだが。
実際東雲学院芸能科在学中に猛練習して今のレベルに到達した。
時代劇王子としてのイメージがつきすぎていたので、歌を練習して2.5次元俳優として若い人に認知を広めたいという目標の通り、今の活躍ぶり。
なるほど、鶴城は最初から将来の展望が見えていたのだろう。
ちゃんと将来に向けて学ぶべきことを学び、伸ばすべきところを伸ばして今の活躍ぶりと知名度なのだ。
ならば、淳もミュージカル俳優としてなにをするべきか――。
(う、う~~~~ん……声変りがぁ~~~~~……)
まず、一番重要な”歌”が歌えない。
焦れて焦れて仕方ないけれど、無理は禁物。
無理に歌えば、二度と歌えなくなることもある。
少なくとも、同じ声で歌うことはできない。
(最近、普通に話すのにも違和感があるしな……)
喉に手を当てて考える。
自分の喉は、これからどうなってしまうのだろうか?
声変りごときで病院に行くのも、と考えていたけれど、一度病院で診てもらうのもありなのかもしれない。
そんなふうに三人でうんうん唸っているのをニコニコ眺めていた綾城の横で、凛咲が痺れを切らした。
「お前ら、そんな贅沢なことを言う前に実績を重ねないとダメだろう! 音無も贅沢言うなよ! 綾城の言うことはもっともだけれど、プロの側で学びを得られる機会はアドバンテージだ! 綾城もいる事務所だし、入れるところに入っておくのも手だゾ!」
「あ、え、あ、そ、そうですね」
「あと、フルフェイスマスク型のVR機、用意しておいたから花房と狗央は持って帰れよ」
「「「え」」」
よいしょ、っと。凛咲が二箱のフルフェイスマスク型のVR機を持ってきた。
ギョッとする三人。
マジで買ってきたのか。
「あの、もしかしてそれで『SBO』をやって練習しろ的な……?」
「うん! でもそれだけじゃないゾ! なんかギルドがこんどあれしてこれしてこーなるからこうするんだ!」
「「「「……?」」」」
なんて?
一年三人が視線だけで綾城に通訳を求めるが、綾城も凛咲がなにを言っているのかわからない。
しかし、一応事前に凛咲から色々聞いていたらしい綾城が「もしかして計画の話ししてます?」と聞いたら満面の笑顔で「うん!」と頷く。
それでようやく「ああ……」と察してくださった。
「ほら、前回音無くんに誘ってもらって『SBO』にログインして時に、星光騎士団の名前を騙る残念な人たちがいたでしょう?」
「いましたね」
「星光騎士団の名を騙る不届き者を、ゲーム内といえ見過ごすなんて名折れだ! 潰すなら徹底的にぶっ潰すぞ! だからお前らもこのゲームに自分のアバターを作っておけ! 盛大に、ド派手にぶっ潰してやるからな! にゃははははははは!」
「あ、あの、自分はゲームをしたことがないのですが!?」
「お、そっか! じゃあ音無と綾城に教えてもらえ!」
「え」
凛咲にそう言われて、オロオロした周が助けを求めるように淳と綾城を見る。
うっかり綾城と顔を見合わせてしまうが、この話の流れ。
合法的にみんなでゲームで遊べる!
それを察した淳と綾城、口元に笑み。
「うんうん、僕たちでゲームの楽しさを教えてあげるね! 明日なら夜時間があるからみんなで遊ぼうね!」
「うんうん、大丈夫だよ周。『SBO』は面白いゲームだから!」
「ひっ!? え? なに? なんか怖いんですけど!?」
「大丈夫大丈夫なにも怖くないですよー」
「うんうん、なにも怖がらなくていいよー」
「綾城先輩、淳ちゃん、それ逆に怖いって!」
「あ……そ、そうか……」
「は、はい。ありがとうございます」
「なるほど。そういうものなんですね。……自分のやりたい方向性に合う事務所選び、ですか……」
三人して「うーーーん」と悩む。
綾城のフォローと助言は的確で、淳も『研修生』の用紙を改めて眺める。
自分のやりたいこと――ミュージカル俳優になりたい。
その夢を、果たして春日芸能事務所は叶えてくれるだろうか?
一応俳優のカテゴリで鶴城一晴がいるが、彼は劇場だけでなく幼い頃からテレビや映画、他にも声優、ナレーターのような声の仕事にも出演しているマルチ俳優。
今は主に2.5次元俳優として活躍している。
同じ俳優だが、一晴は自称「歌はあんまり得意じゃない」という。
2.5次元、歌を歌うことが多いのだが。
実際東雲学院芸能科在学中に猛練習して今のレベルに到達した。
時代劇王子としてのイメージがつきすぎていたので、歌を練習して2.5次元俳優として若い人に認知を広めたいという目標の通り、今の活躍ぶり。
なるほど、鶴城は最初から将来の展望が見えていたのだろう。
ちゃんと将来に向けて学ぶべきことを学び、伸ばすべきところを伸ばして今の活躍ぶりと知名度なのだ。
ならば、淳もミュージカル俳優としてなにをするべきか――。
(う、う~~~~ん……声変りがぁ~~~~~……)
まず、一番重要な”歌”が歌えない。
焦れて焦れて仕方ないけれど、無理は禁物。
無理に歌えば、二度と歌えなくなることもある。
少なくとも、同じ声で歌うことはできない。
(最近、普通に話すのにも違和感があるしな……)
喉に手を当てて考える。
自分の喉は、これからどうなってしまうのだろうか?
声変りごときで病院に行くのも、と考えていたけれど、一度病院で診てもらうのもありなのかもしれない。
そんなふうに三人でうんうん唸っているのをニコニコ眺めていた綾城の横で、凛咲が痺れを切らした。
「お前ら、そんな贅沢なことを言う前に実績を重ねないとダメだろう! 音無も贅沢言うなよ! 綾城の言うことはもっともだけれど、プロの側で学びを得られる機会はアドバンテージだ! 綾城もいる事務所だし、入れるところに入っておくのも手だゾ!」
「あ、え、あ、そ、そうですね」
「あと、フルフェイスマスク型のVR機、用意しておいたから花房と狗央は持って帰れよ」
「「「え」」」
よいしょ、っと。凛咲が二箱のフルフェイスマスク型のVR機を持ってきた。
ギョッとする三人。
マジで買ってきたのか。
「あの、もしかしてそれで『SBO』をやって練習しろ的な……?」
「うん! でもそれだけじゃないゾ! なんかギルドがこんどあれしてこれしてこーなるからこうするんだ!」
「「「「……?」」」」
なんて?
一年三人が視線だけで綾城に通訳を求めるが、綾城も凛咲がなにを言っているのかわからない。
しかし、一応事前に凛咲から色々聞いていたらしい綾城が「もしかして計画の話ししてます?」と聞いたら満面の笑顔で「うん!」と頷く。
それでようやく「ああ……」と察してくださった。
「ほら、前回音無くんに誘ってもらって『SBO』にログインして時に、星光騎士団の名前を騙る残念な人たちがいたでしょう?」
「いましたね」
「星光騎士団の名を騙る不届き者を、ゲーム内といえ見過ごすなんて名折れだ! 潰すなら徹底的にぶっ潰すぞ! だからお前らもこのゲームに自分のアバターを作っておけ! 盛大に、ド派手にぶっ潰してやるからな! にゃははははははは!」
「あ、あの、自分はゲームをしたことがないのですが!?」
「お、そっか! じゃあ音無と綾城に教えてもらえ!」
「え」
凛咲にそう言われて、オロオロした周が助けを求めるように淳と綾城を見る。
うっかり綾城と顔を見合わせてしまうが、この話の流れ。
合法的にみんなでゲームで遊べる!
それを察した淳と綾城、口元に笑み。
「うんうん、僕たちでゲームの楽しさを教えてあげるね! 明日なら夜時間があるからみんなで遊ぼうね!」
「うんうん、大丈夫だよ周。『SBO』は面白いゲームだから!」
「ひっ!? え? なに? なんか怖いんですけど!?」
「大丈夫大丈夫なにも怖くないですよー」
「うんうん、なにも怖がらなくていいよー」
「綾城先輩、淳ちゃん、それ逆に怖いって!」
34
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!
ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。
弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。
後にBLに発展します。
子育て騎士の奮闘記~どんぶらこっこと流れてきた卵を拾ってみた結果~
古森きり
BL
孤児院育ちのフェリツェは見習いから昇格して無事に騎士となり一年。
ある魔物討伐の遠征中に川を流れる竜の卵らしきものを拾った。
もしも竜が孵り、手懐けることができたら竜騎士として一気に昇進できる。
そうなれば――と妄想を膨らませ、持ち帰った卵から生まれてきたのは子竜。しかも、人の姿を取る。
さすがに一人で育てるのは厳しいと、幼馴染の同僚騎士エリウスに救助要請をすることに。
アルファポリス、BLoveに先行掲載。
なろう、カクヨム、 Nolaノベルもそのうち掲載する。
魔法菓子職人ティハのアイシングクッキー屋さん
古森きり
BL
魔力は豊富。しかし、魔力を取り出す魔門眼《アイゲート》が機能していないと診断されたティハ・ウォル。
落ちこぼれの役立たずとして実家から追い出されてしまう。
辺境に移住したティハは、護衛をしてくれた冒険者ホリーにお礼として渡したクッキーに強化付加効果があると指摘される。
ホリーの提案と伝手で、辺境の都市ナフィラで魔法菓子を販売するアイシングクッキー屋をやることにした。
カクヨムに読み直しナッシング書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLove、魔法Iらんどにも掲載します。
全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~
雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。
元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。
書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。
自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。
基本思いつきなんでよくわかんなくなります。
ストーリー繋がんなくなったりするかもです。
1話1話短いです。
18禁要素出す気ないです。書けないです。
出てもキスくらいかなぁ
*改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる