リスナーは壁〜超陽キャのVtuberがド隠キャVtuberに恋をした〜

古森きり

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アマリのコラボ

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「それじゃあ、明日のコラボよろしくね」
『は、はい! よろしくお願いします!』
 
 唄貝とのラジオ番組収録後、明日のコラボの話を甘梨リンとする、ということで話がまとまった茉莉花は電話を切る。
 これで収益化申請に必要な千人の登録者数に届くだろう。
 しかし、存外アマリのチャンネル登録者数は伸びがいい方だと思う。
 あまり認めたいとも思わないのだが、織星のチャンネルからの流れがかなり助力してくれたのだ。
 そういう面では、正解なのかもしれないなぁ。
 
「わたし、ゲームあんまり詳しくないから甘梨ちゃんに教えてもらおうっと。十八歳って言ってたから、コスメの話題とかも好きかしら?」
「どうかなぁ。あまり外に出ないから……その辺あんまり詳しくないんじゃないかな。男の俺はわからんけど、もしかしたら結構興味あるのかも」
「じゃあ、明日コラボ前の打ち合わせの時に聞いてみるわ。お兄さんには言えない悩みとかもあるかもしれないしね。あ、それは家庭の事情に突っ込むことになるから聞かない方がいいかしら?」
 
 と、茉莉花に聞かれて「うーん」と頭をひねる。
 そう言われると、確かに女の子特有の悩みとかは、多分俺には絶対相談できないだろう。
 
「そう、だなぁ。聞いてあげられるのなら、茉莉花に聞いてあげてほしい、かも」
「わかったわ。甘梨さんが嫌でないのならいつでも相談してって言っておくわね」
「なんかごめんな」
「気にしなくていいわよ。じゃあ、動画編集よろしくね」
「ああ」
 
 今日収録した動画を必要のないところを切り、文字を入れてBGMを入れて……という作業を行う。
 そのあと唄貝の占い番組の動画編集もして、気がつけば外は暗くなっていた。
 
「椎名、唄貝のデビュー呟きしてくれたか?」
「ああ、予約済みだから大丈夫」
「ついに三月も無事にデビューだな」
「来月の子は松永ナカマルか。この子のデビュー画像も一応できたけど、本人にチェックしてもらってくれ」
「ありがとう。送っておくよ」
 
 声をかけてきた金谷に画像を送る。
 来月、四月にデビューするのは松永ナカマルという男性ライバー。
 FPS系のゲームが得意で、根っからのゲーマー。
 かなりランクが高いらしく、腕前も相当。
 
「ゲーマーが増えてきたから、箱のゲーマー同士でコラボしてプチゲーム大会とか開催できるかもな」
「ああ、いいな。企画書作っておくか。そふらのと、アマリと、松永ナカマルと、織星と明星も結構ゲーム配信してたから二人も誘ってみるか」
「他のライバーで参加したいライバーがいないかディスコで聞いてみるよ」
 
 こういう企画も楽しいなぁ。
 とか思いながら、金谷と話し込んでしまった。
 
 
 
 ◆◇◆◇◆
 
 
 
 翌朝。
 無事に帰れた俺は時計を見てベッドから起き上がる。
 朝食を作り、コップに牛乳を注ぐ。
 アマリの部屋をノックしてみる。
 
「おはよう、アマリ。コラボ何時からだ?」
「おあああっ!」
 
 声をかけたら、ベッドから落ちる音。
 しかし、妹の部屋なので入室許可が出るまで入らない。
 
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫……コラボは九時からなの!」
 
 ああ、とアマリが慌てていた理由がわかった。
 今朝七時。
 打ち合わせは八時から。
 早く朝ご飯を食べてコラボの準備をする必要があるんだろう。
 
「あ、焼き魚っ! 朝から……ありがとう!」
「まあ、簡単なやつだけど……昨日も遅かったのか」
「う、うん。私の配信は早く終わったの。でも、昨日の二十二時から……その……織星くんの配信、見てた……」
「………………。へーーー」
 
 相変わらず恋愛相談をウォッチしているんだなぁ。
 なんとも言えない顔になっていると思う。
 しかし、この話題は渡りに船だな。
 
「アマリは、織星がそうしてアマリへの恋心をエンターテイメントとしてネットで配信しているのについてどう思うんだ? 気分悪いとかないのか?」
「え? あ、えーと……あんまりそんなこと考えてなかった。恥ずかしい気もするけど、配信してくれると織星くんがリスナーたちにどんなアドバイス受けてるのかわかるから、私もどうするべきなのかな、とか、考えちゃう……私は、私自身は……嫌じゃないかな……」
「そうか。そういうものかぁ」
 
 俺だったらどうだろう。
 想像してみるが首を傾げてしまう。
 本人がいいのなら、いいのかなぁ?
 
「で、で、ね?」
「ん?」
「昨日の配信で、織星くんがコラボ……申込もうかな、とか、言ってたの……わ、私……どうしたらいいのかなっ」
 
 と、顔を真っ赤にして凝視してきた。
 一口サイズにした魚を白米に乗せて、食べようとした時だったから口を開けたまま目をぱちくりさせてしまう。
 どうしたらって……。
 
「アマリの好きにしたらいいんじゃないか?」
「で、でもっ」
 
 ドギマギとしている。
 可愛い。
 うちの妹はやはり世界一可愛いな。
 しかし、ピーンと思いついた。
 アマリ本人が「気にしない」というのなら――。
 
「アマリのリスナーに聞いてみたらいいんじゃないのか? まあ、コラボのお誘いが来たあとでもいいと思うし。もしくは茉莉花に相談してみたら? 今日のコラボでさ」
「っ! そっか!」
 
 あれ、半分冗談だったけど、やっぱりアリなのか?


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