リスナーは壁〜超陽キャのVtuberがド隠キャVtuberに恋をした〜

古森きり

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デビューへのカウントダウン 2

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「じゃあよろしく頼むね」
「はい! よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
「いくよー、さん、に、いち――」
 
 収録スタジオにはパソコンを構える俺とパソコンの前に座ってゲームを起動する二人。
 ガワを手に入れた二人を画面越しにみる。
 青と白基調とした爽やか系のガワは織星。
 逆に赤と黒を基調としたダウナー系のガワが明星。
 台本通りに「スターズ!」「バトル!」と二人が声を揃えてタイトルコールを行う。
 そこから薄っぺらい流れだけを記載された台本通りにに進行していく二人。
 かけ合いが漫才のようで面白い。
 一時間の収録を、ここから三十分に絞るのだが削るのがもったいないほど。
 明星ほ織星とならスムーズに話すので、俺は徹底的に存在を消していたが正解だったみたいだ。
 
「お疲れ! 二人ともいいものが撮れたよ。ここから三十分番組に編集するけど、ここは使ってほしいとか希望はあるか?」
「うーん、よくわからないのでお任せします!」
「明星は?」
「え、あ、い、いえ……なんか、テンション高くて……あれでよかったのか、よく、わかんなくて……」
 
 と言って顔を背ける。
 相変わらず対人だと自信がないようだ。
 
「そうなのか? どこもすごく面白かったよ。織星と話している時は素の自分を曝け出せてるって感じで。デビューしたあともそんな感じの方がいいと思う。毒舌なところも魅力的だったよ」
「っ――」
「あーーー……」
 
 俺がそう言って褒めると、明星は耳まで真っ赤にして織星の後ろに隠れてしまった。
 ライバーを褒めてモチベーションを上げさせるのは、スタッフとして当然のことだ。
 このあと第二回の収録もある。
 二人には「第三回分までだから三本収録予定」と話てあるので、第二回分も頑張ってもらいたいのだが。
 
「えっと、希望がないなら俺の方で面白かったところをまとめておくな。それじゃあ、続けて第二回の収録も始めていいかな? 台本でなにか質問ある?」
「はい!」
「うん、なんだ、織星」
「甘梨さんをゲストに呼んだり、甘梨さんの話をしたりしてもいいですか?」
「ダメ。まだアマリのデビュー日決まってないし。それを言ったら織星たちのデビュー日も正式に決まってないだろ? 他のライバーデビュー日との折り合いもあるから、まだゲストは呼べないかな。第四回以降はゲスト考えてみようか」
「よ、よろしくお願いします!」
 
 元々積極的にゲストを呼んで、ゲームバトルをしていく予定であった。
 まあ、ゲストを呼ぶとしても最初は茉莉花や夜凪の人気勢から順番に、だろう。
 そして織星はアマリのこと、マジなんだろうか。
 いくらイケメンだからってそう簡単に妹はやれないぞ。
 
「新人、俺たち以外だと何人くらい決まってるんですか?」
「アマリと織星と明星を含めて八人は確保できたよ。でも、スムーズにデビューさせたいから残り四人を確保してからデビューさせる予定なんだ。待たせて申し訳ないとは思ってるんだけど、スタートダッシュで差をつけられるようにせっかくのデビューまでの準備時間を有効に活用した方がいいかなって思う」
「そうですね! 俺、歌みたもう二つくらい準備してるんです! ヒナタも! ね!」
「はい、まあ、そのくらいしか、できないし……」
「そっか。期待してるよ。二人でデュエットした歌みたとかもあげたりするの?」
「はい。まだイラストが届いてないんですけど」
 
 うんうん、二人ともちゃんと準備してるんだな。
 
「それと、二人もデビュー後に茉莉花や夜凪の番組なりゲスト出演してほしいな。あと、二人の後輩になる予定の唄貝カインっていう子がやる十五分番組にゲスト出演してほしい。占い番組でさ、毎週一人ゲストを呼んでその人の運勢を占うんだ。俺も占ってもらったけど、結構当たるからビビったよ」
「えー! 面白そうですね!」
 
 デビュー後の話はなんぼしてもいいな。
 あれやりたいこれやりたいがどんどん出てくる。
 
「甘梨さんとコラボできたらいいなぁ」
「………………」
 
 だが、織星。
 お前のそれは、お兄ちゃんの俺はどう受け止めればいいのかわからないよ。
 
「ハルト……」
「あ、うん。えっと、そういえばその占い、というやつ、椎名さんはなにを占ってもらったんですか? もしかして、彼女さんとの今後とか? えっと、彼女さんいましたっけ?」
「え? 俺? いや、いないよ? 仕事一筋っていうか……出会いがないっていうか」
「え? でも、茉莉花さんとか……」
「茉莉花は普通に仕事相手だよ。こういう仕事してると女性ライバーとは知り合えるけど、仕事相手と恋愛関係になるとバレた時に大炎上間違いなしだからお互いそういう目で見ないようになるんだ。茉莉花だって俺のことそんなふうに思ってないって」
「そうなんですね」
 
 なぜか織星は安堵したような笑顔を浮かべる。
 そして明星を振り返り、「よかったね」と声をかけた。
 なにが? なんで?
 
「どうして?」
「それはヒナタが――」
「よ、余計なこと言うな!」
「あいたぁ!」
 
 うわあ、鳩尾はまずいて。
 手刀を鳩尾に喰らった織星が沈む。
 なんで? ほんとになんで?
 
「だ、大丈夫か?」
「も、もおおおお……ヒナタはほんと……そういうところぉ……」
「? よくわからないけど、そろそろ第二回収録開始していい?」
「は、はぃー」
 
 無慈悲かもしれないが、スタジオ借りてる時間ってもんがあるのだ。
 それにしても明星はよくわからないなぁ。



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