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第23話ですわ!
しおりを挟む「なにか緊急事態でも……?」
「あ、ああ、実はこの学院の側のフィールドで狩りをしていたプレイヤーたちが学院の中に逃げ込んできたんだ。フィールドで『呪われたモンスターの壺』を発動して、手に負えなくなったらしい」
「え、ええ!? そ、それはレアモンスターを呼び出すという、あの壺ですか? な、なぜよりにもよってこんな微妙な場所で……」
「いや、この辺りのフィールド、出現率0.02%の超激レアモンスター『ティラビッツ』が生息する唯一の場所なんだ。知ってる? 『ティラビッツ』って」
「は、はい、一応。幻の食材に数えられる超激レアモンスター肉ですわね。ゲーム内のお肉では他の追随を許さないSSR食材ですわ」
なるほど、ティラビッツ自体は大変弱いモンスターですが、出現率が低すぎますから『モンスターの壺』を使って探そうとしたんですわね。
ですがハイル様は『呪われたモンスターの壺』と仰いましたわ。
効果は『ビッグ種モンスターの発生』。
使うと取り囲まれてPSが足りない方はゲームオーバーになりますわよ。
モンスターに敗北し、HPがゼロになると『ペナルティ』として六時間ログインできなくなりますの。
ちなみにPDで負けると倍の十二時間、ペナルティでログインできなくなりますわ。
「で、ビッグモンスターたちが学院の敷地内にプレイヤーたちを追って入ってきてしまっているらしい」
「ええ!? ビッグ種が入り込めるような入り口ございまして!?」
「校内にはまだ、だな。玄関ホールからは入ってこれそうなんだが、なぜか立ち止まって中へは入って来ていない」
「それは良かったですわ……ですが、それもいつまでもつか、という事ですのね……」
「そうだ」
それは確かに怖いですわね。
魔除けの魔法を使えるNPCなんていないでしょうし……魔除けの……魔除け……。
「魔除け! モンスター避け! ありますわ!」
「え?」
アイテムボックスを開く。
そうですわ!
さっき作って失敗してしまった『モンスター避けの罠』が余ってますの!
水風船のようなそれを、ハイル様に差し出します。
「これは……! 『モンスター避けの罠』か! これだけあればビッグ種が入ってこれそうな出入り口は間に合う! ありがとう、キャリー!」
「は、はい!」
「でもなんでそんなものをそんなに持ってるの?」
「もちろん! エルミーさんに投げつけて嫌がらせする為ですわ!」
「「え……」」
「ですが投げつけて消費してしまうと効果を残して色は消えてしまうんですの。……失敗でしたわ……!」
「そ、そう……」
「あはは……頑張ったんだな、キャリー」
「はい! まだまだ頑張りますわ!」
あら!?
ハイル様、エルミーさんを虐めるわたくしに対してなぜそんな鴨の親子の行進でも眺めるような優しい眼差しを向けますの!?
そこは軽蔑の眼差しで見て頂きませんと!
……いえ、実際そんな目で見られたら、落ち込むと思いますけれど……。
でも、シナリオではそうなるはずなのです!
「手分けして大型の出入り口に仕掛けてこよう! エイラン、手伝ってくれ」
「分かったよ。あ、でも例のプレイヤーたちはどうする?」
「そうだな……生徒会役員たちに……引き続き探させてはいるが……」
ああ、フィーフドで『呪われたモンスターの壺』を使ってしまったという残念なプレイヤーさんたちですわね。
学院の中に逃げ込んできたと仰っていましたわよね。
っな……まさか!
「行方が分かりませんの?」
「そうなんだ。生徒のNPCを突き飛ばして入ってきて、そのまま院内に……。直後ビッグ種が押し寄せて来たから裏は取っていないが『呪われたモンスターの壺』の使用は疑いようがない」
「そうですか……迷惑な話ですわね」
「学院の中って入出許可を持ってなくても入れるんだね?」
とハイル様に問い掛けるエイラン様。
まあ、普通のプレイヤーさんはそう思いますよね。
「入る分には可能だ。スキル取得は不可能だがな。それと、特定条件でしか入れない場所もある」
「へえ、そうなんだ? 特別な依頼じゃないと入れなかったり、報酬で入れるようになる感じ?」
「まあ、そうだな。だが、まずはこれを設置してこよう。キャリー、君は俺と一緒に来てくれ。プレイヤーたちも探さなければいけない」
「分かりましたわ!」
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