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世界再生編
ブラコンの邪神
しおりを挟む「ジェラルド・ミラー」
「なぁに~、ルーファス」
ファントムに当日の流れを説明してもらっていると、ルーファスがベッドから起き上がる。
最後にもう一度登録者と“歌い手”と後続機パイロット、全員揃って最終確認したいな、って話をしていたのだがもう大丈夫ならシャルロット様とレナとラウトとシズフさんとナルミさんも呼んでこようかな?
「マフォルダ様たちは、どうなったんだ……?」
あ、忘れてた。
聖女の治療院に押しかけて、好き放題やらかしてジェラルドに見捨てられた宇宙の偉い人たち。
ジェラルドの権能が“聖女を信用していなければ聖女の魔法が効かなくなる”だとするのならば、死んでない?
「それが、結晶化したまま動かしてないんたけど壊れることなくそのままだったんだ。生きてる、のかな? 戦神に確認してもらった方がいいと思う」
「マジか。とはいえラウトに行ってもらったら——死なないかな?」
「あ……」
誰も安心できないから、沈黙が流れるよね。
「……まあ、でも、正直昨日みたいな態度が続くようならラウトに半殺しにされた方がいいかもね。宇宙の人たちも大変でしょ?」
「いや、うっ……そ、それは……いや……だが」
「素直になりなよぉ。ああいう傲慢で疑り深いヤツが一番上にいると、碌なことにならないんだよぉ。お兄さんたちは詳しいよ~、その辺。なにしろミシアはそういうヤツばっかりだったから俺にめちゃくちゃにされて、国としてやっていけなくなっちゃったんだから☆」
ニコ、と笑いながらえっぐいこと言ってるデュレオ。
それにルーファスが顔を青くしながら起きあがろうとして、ディアスにベッドへ戻される。
無理すんな。
「ま、宇宙の体制は宇宙でなんとかしてほしいって感じだな。“エネルギーを生み出す概念”が千年前以前に戻れば、宇宙のエネルギー問題も解決するだろ。それを利用してのし上がる者が、地上に友好的であればいい」
「そうだねぇ。その辺の裏工作、やってきてあげよっかぁ?」
「ま、まあ、それはそのー、追々……? 今すぐじゃなくていいよ……?」
デュレオに任せると地獄を見る未来しか見えないので。
めっちゃ笑顔で「そう?」って言われると恐怖しか残らない。
「まあ、話を戻すけど結晶化している宇宙のお偉方には五号機の坊やに行ってもらった方がいいだろうね。でもあの子だけ行かせると確実に皆殺しルートだから、シズフを連れて行ったら?」
「え? なんでシズフさん?」
デュレオの見張りとして、実際役に立っているかと言われるとそんなこともないシズフさんだが離れられるとそれはそれで不安だ。
デュレオが提案したのも違和感。
まさかなにか悪さしようとか思ってないよね?
「あ。別になにか悪さしようとか思って提案してるわけじゃないよ」
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「単純にシズフと五号機の坊やは相性が悪いの。ロス家の坊ちゃんもそうだけど、あの坊やは天然に弱い」
「あーーーー……」
ぐうの音も出ない納得の理論。
「俺は天然ではないと思うのだが」
「天然はだいたい自覚がないから黙っておきな」
むう、と唇を尖らすディアスを一蹴するデュレオ。
自覚がある天然は確かに天然ではないなぁ。
「でもまあ、六号機の坊やはもっと真剣に故郷のことを考えた方がいいよ」
「っ」
「短命だからと他人任せになりがちになれば、あんな野心だけのゴミに舵取りさせたら結局こういうことになるんだから」
「……ゴミ……」
「まあ、短命だからこそ人が育たないのだろうけれどね。ここが宇宙のターニングポイントだろう。ここで踏ん張らないと落ちる一方だよ」
「……わかっている……」
デュレオに言われて、ルーファスの顔つきが変わった。
そういえばルーファスは宇宙に子どもを残しているんだっけ。
俺のことはまだ信用ならない、みたいな態度だけど、パパ友として今後子育てについて色々相談できたらいいんだけど……。
「よし。とりあえず一度ルレーン国に行こう。レナは体調を見ながらだな」
「ミレルダ、久しぶりの里帰りだねぇ~。お土産なに持ってくぅ?」
「え、そ、そうだなぁ。最近アグリットがハニュレオのレッドデータから栽培に成功したマンゴー? あ、あれを持って行ってもいいだろうか?」
「マンゴー! 美味しいよねぇ~!」
ジェラルドとミレルダはファントムの血筋らしくめちゃくちゃに甘党。
マンゴー美味しいのはわかる。
マンゴーが栽培成功した時はリーンズ先輩様々すぎて、伯爵位まで陞爵させちゃおうかと思った。
「それにしてもいよいよなんだねぇ。ようやく……やっと、またクレアに会えるんだ」
「ちょっとお待たせしちゃったけどね」
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「へ」
「あ、もちろんクレアに会ったあとね」
「……あ、ああ、うん……」
舌ペロからのウインク。
でも、その声色はマジだったし思いも寄らなかった。
ブラコンがすぎるぞ、邪神。
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