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世界再生編
五人目の神(1)
しおりを挟む「申し訳ありません……」
「いや、大丈夫よ。わかってから」
「全員無茶をする。トニス、お前までも」
「も、申し訳ありゃせん……」
はい、全員実験後にぶっ倒れました~。
八階の医療室に運んで三人にデュレオが治癒魔法をかける。
わかる、同調障害マジキツいよね~。
「だが実験結果は今までで一番いいな。全員ギア4に到達。予想以上だ。これならギア5が六人いなくても、初期シリーズ五人が融合して創世神化することはないな」
「だが、配置場所は遠いのだろう? “歌い手”四人の歌でギア上げしたら、後続機パイロットたちの体調を診てやれなくなるのだが」
「それなら事前に治癒魔法の使える“歌い手”三人を、後続機三人の落下地点に配置すればいいだろう。王子んところはデュレオ・ビドロ置いておけばいい」
「う、うむ……」
ディアスにいいのか、と言わんばかりの顔で見られる。
俺の落下地点にレナがいないけど、いいのかっていう意味だ。
うーん、それは確かにちょっと、レナが心配、かも。
ランディのところにシャルロット様、ルーファスのところにミレルダ、トニスのおっさんのところにレナ、ならギリギリ許せる。
「あとはアレだっけ。地上との媒介。アレはルレーン国の『神代の大穴』に建設してあるんでしょ? そっちは完成してるの?」
デュレオが水を飲みながらソファーに腰を下ろす。
ルレーン国にある『神代の大穴』とは、ファントムが軸発電機を作った場所のことだ。
地核の永遠に祝福された地球と地上を繋ぎ、地核にいるクレアを地上に戻す依代となる。
クレアは現在肉体を捨てて霊魂体だけの状態。
デュレオと同じ不老不死である以上、地上に戻れば肉体が再生するだろう。
デュレオが「それはもうグロ映像だろうね」とほくそ笑んだので、依代の中で復活していただこう、という算段である。
「あちらは半年前に完成している。調整も終わっているから、当日は俺とナルミで八機の“連結”をサポート、管理する。むしろ想定外のことが起きた時に対応するのはお前に頼むしかないから、一番大変なのはお前だぞ。デュレオ・ビドロ」
「うぐぅ……そういうプレッシャーのかけ方良くないと思うなぁ!」
そして依代の中ではファントムとナルミさんが俺たちのサポートをしてくれることになっている。
研究塔みたいな内装で、新たな創世神が生まれたあとは依代から地核に戻ってもらうのだ。
新たな創世神は初期シリーズ五名の人格を融合したものになるだろう、と言われている。
ちょっと想像がつかないけれど、ディアスとジェラルドの善性、ラウトの荒神らしい一面、とシズフさんの冷静さと戦闘センス。
バラバラなそれらを、俺の人格で調和を取る形に構成するそうだ。
俺の人格にそんな大役務まる? って感じだけど……まあ、人格データのあれそれはファントムに丸投げしてるからなんとかしてくれるでしょう、多分。
「ふええぇ……ヒューバートぉ~~~」
「お、ジェラルド」
「やーっと帰ってきた」
「遅っせぇんだよ」
デュレオとファントム、ジェラルドにもう少し優しくしてあげてほしい。
疲れた顔のミレルダも入ってきて、夫婦でぐったりしている。
まあ、ファントムの「遅い」にはギア5に二年もかけやがって、という意味も入ってそうだけれども。
「あれ、ランディたちどうして寝てるのぉ~?」
「三人ともギア上げの同調障害でぶっ倒れているんだよ。元気になったらすぐにルレーン国に移動だけどな」
「マジっすか……」
トニスのおっさんはもう逃げられないので観念してほしい。
この二年で粗方の準備は終わっているし、トニスのおっさんの思わぬ伏兵っぷりで八号機のパイロット問題も解決したし、そりゃもうサクッと儀式して世界救っちゃおうよ。
悪阻の酷いレナに負担をかけるのは心苦しが、生まれてくる子どものためにも世界終末からは脱出したい。
それに——レナの悪阻があまりにも長引いているのは俺のせいかもしれないのだ。
一応、俺は今、人ではない。
みんなには「考えすぎ」と言われるけれど、神格化した俺の子どもってことはレナのお腹にいるのって少し前のディアスのような半神半人ってことでは?
それって無事に生まれてくるの?
俺が普通の人間に戻らないと、お腹の中の子どもにも神格が受け継がれるのでは?
頭を抱えてしまう事案である。
レナになにかあったらと思うと、それだけでも吐きそうなのですよ。
「でも、ジェラルドは本当に神格化したの? 全然変わり映えないけどな? いや、変わり映えがないという意味ではヒューバート様も全然変わったところがないって、今でも思うけど……」
と、首を傾げるのはミレルダ。
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「確かにぼくもなにが変わったのかわかんな~い」
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