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世界再生編

番外編 子どもの終わり(3)

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「あ、ひっ、ひいいい!? 助け、助けてくれええ!」
「なぜだ! さっき、聖女がっ!」
「助けろ! 早く! 歌え、歌え!」
「いやだ! どうしてこんなことに!?」
「な、なんで! ボクはちゃんと歌って、治癒したのに!?」
 
 瞬く間に頭まで結晶化した。
 まるでラウトの怒りに触れた者のように。
 
「あ、ぐぅ、う、撃て、撃ち殺せぇ!」
 
 最後に、まるで断末魔のように一人の男が外の石晶巨兵クォーツドールに指示を出す。
 石晶巨兵クォーツドールに乗れるということは、宇宙で生まれ育った人間ではない。
 亡きセドルコ帝国の難民の子どもが成長し、武装した石晶巨兵クォーツドールで攻め込めるよう訓練されたのだ。
 
「ジェラルド……!?」
「ミレルダ、聖女たちをお願いしてもいいかなぁ」
「……っ! もちろんだ、聖女たちはボクに任せて、キミはあの不届者どもを殲滅してくるといい」
「……うん」
 
 あれだけ胸に溢れそうだった怒りが穏やかになっていく。
 ミレルダは頼りになるし、背中を任せるのに相応しい相手だ。
 でも、本当にたくさんのものをジェラルドのところに嫁ぐために捨てさせてしまった。
 だからジェラルドが、守らなければ。
 聖女という特別な存在は、ジェラルドの命を救ってくれた。
 ヒューバートと同じ、尊敬され守られるべき大切な存在だ。
 [瞬間転移]でアヴァリスの操縦席に戻ると、その瞬間魔力の流れが自分の中で変化した。
 
「ギアが、勝手に、上がる」
 
 一気に4まで上がり、[隠遁]が剥がれて石晶巨兵クォーツドールたちに銃を向けられる。
 ヒューバートが世界を守り、救うために作り出した石晶巨兵クォーツドールを——戦争と殺戮のために悪用しようとするなんて。
 
(絶対許さない。ヒューバートは自分が全部やるって言ってたけど、ぼくも武装した石晶巨兵クォーツドールは許せないよ)
 
 もしも——もしも世界に一つだけのルールが追加できるなら?
 そう問われたらジェラルドははっきりこう答える。
 聖女を信じない者、感謝しない者に結晶病の治療は必要ない。
 そして武装した石晶巨兵クォーツドールには、ジェラルド自身の手で鉄槌を下す!
 
「誤差修正。連射準備。魔力補助、演算計算終了」
 
 治療院の周りにいた八体の武装した石晶巨兵クォーツドールに向けて、ライフルを構える。
 突然現れたギア・フィーネに石晶巨兵クォーツドールたちがもたもたと陣形を作ろうと動き出す。
 おそらく宇宙の機械科学で操縦サポートが行われているのだろう。
 ギア・フィーネの『ハッキング』でそれらがすべて停止している以上、操縦士たちは自力で魔導具としての石晶巨兵クォーツドールを操作しなければならない。
 
「そんなよちよち歩きじゃただの的だよ」
 
 ランディならば、トニスならば、リーンズならば。
 そしてヒューバート、ジェラルドならば、あんなみっともない操縦はしない。
 光炎コウエンを模した石晶巨兵クォーツドールなので操縦席は胸部。
 その胸部を、遠慮も容赦もなく全機撃ち抜いてやる。
 装甲は光炎コウエン気焔キエンよりも分厚く硬かったが、ギア5に到達した狙撃特化のアヴァリスに撃ち抜けないものはない。
 
「ギア5。なっちゃった」
 
 登録者になって二年。
 一向に上がらなかったのに、突然上がってしまった。
 ファントムには「気合いが足りない」と言われていたけれど、気合いというよりは『覚悟』が足りなかったような気がする。
 ミレルダのことを、夫として支え守るつもりはあったけれど、それは表面上だった。
 今なら『そうなった時に守ればいい』と思っていたんだな、と思い知る。
 でもそうではなかった。
 夫としてミレルダを支え守るというのは、彼女の一生を背負うことだ。
 聖女としても、辺境伯夫人としても、ジェラルドの隣に立ち、背中を守ろうとしてくれる彼女を……。
 
『大丈夫?』
「あ、う、うん。大丈夫。それより、ぼく神格化した? アヴァリスも、ちゃんと神鎧になったのかな?」
『なってるみたいだね。……ということは、条件が揃ってしまった。新しく作ったギア・フィーネは、まだギア3ぐらいが最高なんだよね? 本当に大丈夫なの……?』
 
 おそらくルーファスはギア5に到達できる。
 ジェラルドと同じくある種の覚悟さえ乗り越えれば。
 ただ、ファントムやナルミが言うに神鎧のギア・フィーネと神格化した登録者が五人いれば創世神は生まれる。
 補助としてナルミ、クレアとの連携にデュレオ、演算管理にファントム、そしてギア4が一人でもいれば、バックアップが可能になり余裕が生まれて登録者は融合する必要は無くなる。
 もちろんギア3がもう一人いるだけで成功の可能性もあがるし、ギア2だけでもエネルギー補助にはなるだろう。
 つまり——。
 
「うん、大丈夫そう。準備が終わり次第実行しよう。アレンさんも手伝ってくれるんでしょう?」
『うん、もちろんだよ。……誰も犠牲にならなくていいんだよね?』
「うん。ヒューバートならやり遂げてくれる。ぼくらも全力で手伝うしねぇ~。きっと大丈夫だよ!」
『……そう。そうだよね。うん。僕は君たちを——未来の人々を信じると決めている。僕も最後まで手伝うよ』
 
 
 
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