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世界再生編

“歓迎”パーティー(1)

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「え? ルルアさん? お噂は聞いたことがあります! 多種多様な薬草を組み合わせてお薬を開発している方だとか!」
「そうだ。今度連れてこよう。今はヒュリー付きの侍女として働いてもらっている」
 
 ああ、ディアスの弟子の一人で一番若い女の子か。
 母上が妊娠したので、助産師としての経験を買われ母上付きの侍女になったと聞いてる。
 本当はレナにもつけてほしかったんだが、立場的にやはり王妃の方が重要性が上になってしまう。
 まあ、どうせ同じ後宮内だからとあまり気にしていなかったが、十代後半の女の子と二十代前半の着ぐるみ男って……いくらリーンズ先輩が優秀で将来有望で実績ありまくりでも大丈夫なんだろうか。彼女の方が。
 
「ぜひお話しして見たいです!」
「そうか。……ちゃんと女性として扱ってほしい」
「え?」
 
 そして男女的なあれそれ的にも。
 ディアスが釘をすレベルだよ?
 
「じゃあ、それはそれとして。国王と国賓への挨拶? お前らするの?」
「そうだな。遅れてしまったがしておこう」
「レオナルドは結婚もしたらしいな。おめでとう」
「おめでとう、レオナルド殿下。マリヤ王子妃。あとで俺から歌を贈るね」
「ほ、本当ですか、デュレオ様! 嬉しいです!」
 
 おお、珍しくファントムとラウトがまともなことを言うな、と感心していたらレオナルドがデュレオに「歌を贈る」と言われて大声で名前を呼んでしまった。
 会場内にピリつく感覚。
 そして、隣室のテーブル席に座っていた宇宙連邦のお偉方の顔つきが変わる。
 わざとではないのだろうが、レオナルドはたまにすごいタイミングでやらかすなぁ。
 
「貴様がデュレオ・ビドロか」
「ん~?」
「自律起動超速再生被験体D型ヒューマノイドプロトタイプ、デュレオ・ビドロ。間違いないのか?」
「マフォルダ様……!」
 
 席を立ったのは『バベル』の大統領、オーガスタ・マフォルダ。
 ルーファスが慌てて引き止めようとするが、一瞥されて終わる。
 部屋から出てくることなく、尊大な態度でデュレオに“本物”か聞いてきた。
 デュレオは姿を変えることができるが、今日はオリジナルの姿。
 それでも確認してくるということは、どうしてもデュレオを捕らえて研究したいんだな。
 ディアスの治療法は長期的になってしまう。
 ゆっくり千年をかけて侵蝕された宇宙の民の寿命は、どうやっても同じ時間をかけて戻していかなければならない。
 それでもディアスが考えた延命治療法は十分すぎる効果を持つし、ルーファスたちもそれを実感したからこそ宇宙に報告した。
 結晶病のことは自業自得としか言いようがないが、それだって地上側でできる最大限の対応はしたはずだ。
 にもかかわらず……。
 
「なぁに? 揶揄い甲斐がありそうなおっさんたちがいるねぇ。俺がデュレオ・ビドロだけど、それがなに?」
「そうか、では我々とともに来てもらおうか」
「ナンパ下手くそか。髭面のおっさんが上から目線で命令してくるナンパなんかについていく女の子いると思う? 通報されるのが関の山でしょ、現実見な?」
 
 逆にど正論で諭してやがる。
 部屋から出てきて父上たちのいる玉座の壇上前で、守護神と宇宙連邦の偉い人たちがバトルを始めるというパーティーにありがちなトラブル。
 いや、ありがちではないか。
 普通じゃないよね、これは。
 
「「止めないのですか?」」
 
 はい、ランディとシャルロット様からも心配そうな表情で見られました。
 もちろん止めません。
 
「まあ、見守りましょう。どうせ宇宙の者たちが可哀想な目に遭うだけです」
「可哀想な目に遭うとおわかりになった上でお止めになりませんのね?」
「はい」
「それでヒューバートは玉座の方じゃなくてこっちにいたんだぁ?」
「そういうわけではないけど」
 
 ジェラルドもいい線いってるぅ。
 玉座のある壇上の方は父上とレオナルド、マリヤ、母上が座っている。
 ライモンドは危ないのでお城に待機。
 ワインを傾けながら「荒事になればうちの神様たちがなんとかしてしまうし」と言う他ない。
 荒事にならないのが一番なのだが、宇宙側は荒事にする気満々なので俺としても対応せざるを得ないのだ。
 妊娠中なのは同じだが、レナの方が悪阻が重いのもそうだしね。
 
「レナは体調大丈夫?」
「心配で具合が悪くはなりそうです」
「そ、そっかぁ」
 
 そればかりはどうなるか俺にもわかりません。
 
「まるで自分が初心な生娘のような言い方をする」
「これを見ても同じことが言えるかな?」
 
 おっさんたちが手を挙げると、父上たちのいる場所に黒いパイロットスーツの男たちがライフル銃を突きつけた状態で現れた。
 宇宙の迷彩技術だろう。
 千年前の時点ですでに瑪瑙メノウという疑似歩兵前身兵器に、完全な光学迷彩機能がついついた。
 それを疑似歩兵前身兵器よりも小さな人間に応用するのは、難しいことではないだろう。
 しかし、彼らの欠点を指摘するのならば人間であるが故に探知系の魔法には引っかかる点だろう。
 俺以外にも[探索]や[索敵]や[鑑定]などを持っている者たちは、会場に紛れ込んでいる光学迷彩兵の存在にそれなりに気づいている。
 そう、俺たち以外の、普通の貴族たちですら、だ。
 彼らが騒がないのはこの状況でも父上たちや俺たちが、まったく気にした様子がないからだろう。

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