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世界再生編
変わるものと変わらぬ関係
しおりを挟むというわけで翌日。
本日は歓迎パーティーです。
会議は明日からということで、今日はひたすら遠方からお越しの皆様には疲れを癒して楽しんでいただく、ということでですね。
「レナ、大丈夫? 無理しなくていいからね。つらかったら我慢しないで言ってね。パティに言ってもいいし」
「だ、大丈夫ですよ、ヒューバート様。心配しすぎです。ディアスが吐き気止めを作ってくれましたから、大丈夫ですっ」
「でも絶対無理しないでね」
「は、はい」
歓迎の場なので俺とレナは出ますよ。
王太子と王太子妃ですから逃げられませんよ。
レナは悪阻が酷いんだが、押して参戦だ。
しかし、前日にレオナルドとマリヤに結婚式をしてもらったおかげで俺たちの方にはあまり人が残らない。
それを見越した上で結婚式の日取りを、前日に動かしてもらった。
マリヤにはかなりの負担だと思ったのだが、レナの侍女だったマリヤは「レナ様のためです! お任せください!」と胸を叩いてくれたのだ。マジありがたい。
しかし、社交の場にも不慣れな彼女に二日連続で大量の人間に挨拶をされるのは大変すぎる。
細かに休憩を挟んでもらわねば。
そして、マリヤとレオナルドを休ませるために俺はとある秘策を仕込んでいる。
「ヒューバート~! 久しぶり~!」
「お久しぶりです、ヒューバート王子」
「ジェラルド、ミレルダ。よく来てくれた」
その第一弾!
辺境からジェラルドとミレルダのミラー辺境伯夫妻、参戦。
一見すると「どこが?」と思われそうだが女性陣の騒めきと瞳のきらめきが半端じゃない。
それもそのはず、ミレルダは男物の礼服をオーダーメイドで発注し、着こなしているのだ!
夫人がドレスではなく礼服で登場した上、めちゃくちゃ似合っててかっこいいので会場の女性たちの視線は釘づけ。
旦那のジェラルドもめちゃくちゃイケメンだしね。
ああ、神よ……幼馴染の顔面が整っていることをここに感謝申し上げる。
ジェラルドの顔が今日も良。
「例の話は明日するの?」
「その予定だよ。レオナルドがスケジュールと儀式の詳細を作ってくれるそうだから、それに沿って行う予定」
「そっかぁ。いよいよなんだねぇ~。ぼく間に合うかなあ」
「間に合うだろ……多分。シズフさんも俺も『神になる』って覚悟決めたらギア5に上がったし」
ジェラルドは二年経つが今だにギア4。
同調率は問題ないのだが、ファントム曰く「多分気合いが足らねー」らしくてギア5にまだ到達していない。
気合いというより、多分……覚悟の問題だと思う。
神になる覚悟。
神になってからなにを行うか、願いが足りないんだろう。
俺は……俺は神格化した時、前世の世界にいた。
レナに俺が気を失っていた時間はほんの数分と聞いているから、意識だけ異世界に行ってたっぽい。
もしかしたらそれが俺の権能なのかもしれないんだが、あれから一度も成功したことないんだよなぁ。
シズフさんやディアスが自分の権能に自覚がないのもよくわかる。
全然わからん。
自分の権能、わからん。
調べる術もないしね。
「あ! ヒューバート、ランディ来たよ!」
「お。ってことはシャルロット様もか」
「シャルロット~っ!」
「ミレルダ~」
シャルロット様は国賓である。
昨年ランディとも無事に結婚して、腕を組んで入場してきた。
父上と母上、隣にいるレオナルドに挨拶をしてからすぐに壁の側に立つ俺たちの方へ歩み寄ってくる。
え? 俺も「王族席にいるべきでは?」って?
まあ、それはそう。
でもレナがいつ吐き気を催すかわからないので、すぐ控え室に連れて行ける場所にいたいんです。
あと、昨日結婚したレオナルドとマリヤのお披露目の意味もある。
他国の人は、レオナルドの顔を知らない人までいるからね。
「今日のドレス似合ってる!」
「ありがとう、ミレルダの格好も素敵よ」
うわぁ、シャルロット様、オフホワイト基調のドレスに淡いピンクと金色の糸で蝶が刺繍された、プリンセスラインのドレス。
髪飾りまで蝶なので本人が花のようだ。
ちなみにレナは妊娠中なので、ゆったり体のラインが隠れるエンパイヤ型のドレスだよ。
ランディもオレンジ色と白の礼服が非常に似合っている。
イケメンって結局なに着てもイケメンだよなぁ。
ミレルダ嬢とシャルロット様は手を握り合い、久しぶりの再会を喜んでいる。
百合、健在。てぇてぇ。
「ヒューバート様、おひさです」
「ランディ、息災か?」
「はい。レナ様もご懐妊おめでとうございます」
「ありがとうございます」
シャルロット様と結婚したから、ランディの言葉遣いにはほんの少しだけ距離ができた。
でも仕方ないし、ここは公的な場だから当然のことだろう。
「レオナルド様の臣籍降下はいつ頃になるのですか?」
「んー、ある程度他国への顔見せが終わったあとだな。来年くらいに手続きも終わると思うし、領地の屋敷もできてるだろう」
「そうなのですね。そうなるといよいよ——」
「いやいや、まだ早い。父上は現役バリバリだって」
ランディが言わんとすることは父上の退位と俺の戴冠である。
正直絶対嫌だ。
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