終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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世界再生編

リーンズ先輩のお見合い(1)

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「ん?」
 
 じゃあ締めて帰るかな、と思った時、ジェラルド似の超絶美形が入れ違いで入ってきた。
 ば、ばかな……?
 面食いの俺があんな超絶美形の高身長イケメンを見逃していた、だと……!?
 あれ? でもそこはかとなく知ってるような……?
 
「だ、誰かしら? あんな方いた?」
「ミラー伯爵家の長男ジェラルド様に似ておられるような?」
「す、素敵……」
 
 長い瑠璃紺の髪を三つ編みにして垂らし、着崩した礼服が逆にワイルドな空気を醸し出す男のエッセンスになっている。
 不機嫌そうな表情なのに視線を吸い寄せるほどの美形。
 ——の、後ろにナルミさんと……誰? もう一人見知らぬ青年が泣きながらしょぼしょぼとイケメンの後ろについてきた。
 
「ナルミさん? どうかされたんですか? そ、そちらは?」
「おい、綿菓子王子まで顔知らねーってどういうことだよ」
「……は!? そ、その声、ファントム!?」
 
 なんと、不機嫌そうな表情のワイルドなイケメンからは、ファントムの声がした。
 普段つけている薄葉甲兵装ウスハコウヘイソウのゴーグルをしていないから、素顔を初めて見たのだ。
 蛍光のような黄緑色の、キレ長い瞳。
 イケメンだろうな、とは思っていたけど想像の数十倍超絶美形で腰抜かすと思った。
 登録者イケメン揃いすぎだろ!?
 登録者条件に顔面偏差値絶対入ってるだろ!?
 千年前は千年前で乙女ゲーかなにかじゃありませんでしたか!?
 
「どうしてファントムがここに?」
「コイツのつきそい」
「コイツ……だ、誰?」
「アグリットだよ」
「え? アグ……リーンズ先輩!?」
 
 ファントムの後ろに隠れた鳶色の礼服、紫紺の髪は長く、特に右側の顔半分を覆う長い前髪、赤い眼鏡のよくよく見ればイケメンのこの人がリーンズ先輩?
 え、いつも花の着ぐるみを着ている、あのリーンズ先輩?
 リーンズ先輩!?
 
「リ、リリ、リ、リッ? リー? リーンズせ、せせ先輩? リーンズせんぱ、い、に、にんげんのかっこ……?」
「落ち着きなさい、ヒューバート。人前で狼狽えすぎだよ。確かに長い付き合いなのにも関わらず、着ぐるみじゃない姿は見たことがないだろうけれど」
 
 そうだよ?
 ナルミさんが落ち着かせてくれたけれど、リーンズ先輩が研究塔の外にいるのもびっくりしたし人間の姿なのも初めて見たし……どゆこと!?
 
「というより、ランディやジェラルドは無事に婚約者を見つけて結婚しただろう?」
「え? は、はい。しましたね?」
「レオナルドも今日結婚したしね」
「そ、そうですね?」
「その件に関しては後ほどお祝い申し上げるけれど」
「あ、ありがとうございます、ナルミ様」
 
 流れるようにナルミさんから祝福を受けるレオナルド。
 お礼を言って立ち上がって頭を下げるあたり、俺が頭が上がらないところを見ているレオナルドだ。
 
「婚約者もいない21歳引きこもりとはいえ、王宮植物研究員にして石晶巨兵クォーツドール初期開発者の一人。個人で男爵位を与えられているし、国への貢献度は高く伯爵家以下の爵位の貴族令嬢と結婚して子を残すようなら子爵家への陞爵しょうしゃくも検討されているよね」
「そうですね」
 
 リーンズ先輩の国への貢献度はジェラルドと同等度として扱われている。
 ジェラルドの家が陞爵して伯爵家になっている以上、当然リーンズ先輩にも同等の褒美が与えられて然るべき。
 なのだが、リーンズ先輩は実家と疎遠であり、先輩自身の強い要望で王宮植物研究員という今までない部署と名称を望んだ。
 しかし、その部署が石晶巨兵クォーツドール関係以外——ギア・フィーネ関係でも結果を出してしまった。
 魔樹の量産生育体制が比較的早く整ったのは、リーンズ先輩が長年魔樹を研究していてくれたからだ。
 もっと言うと、リーンズ先輩が俺の毒殺未遂事件で解毒薬を作って飲ませてくれたのも大きな功績になっている。
 あの時リーンズ先輩がいなかったら、俺はこの世にいないのだ。
 俺自身の価値が高まることで、リーンズ先輩の功績も大きくなっているということである。
 なので、正直もう男爵にしておけない。
 可能ならば身分が高い嫁をもらって子どもを作り、子が産まれたら子爵の爵位を与えたいって話なのだ。
 なので、お見合いの話はかなり大量にきていたと思う。
 全部返事がないと、ナルミさんがぼやいていた、が……。
 
「ヒューバートにもアグリットをお見合いやパーティーに参加させたいって頼んだじゃない?」
「そうですね」
「言ってくれていたでしょ?」
「一応言ってましたね」
「来ないでしょ?」
「……来ませんでしたね」
「祝賀パーティーは割と、アグリットにちょうどいい爵位の者が多いからね、ファントムに頼んで連れてきてもらったの」
「なるほど」
 
 ナルミさんの堪忍袋の尾が切れたんですね。
 
「無理です無理です、こんなたくさん人がいるところ恥ずかしいです、やっぱり返してくださいぃ」
「うっせーな、腹ァ括れや。テメェ、ツラはそこまで悪くねぇんだから上手く使え。ツラの使い方なら教えてやるから」
 
 ファントムが言うと説得力あるなぁ……。
 
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