終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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18歳編

皇帝の資格(1)

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 ニコニコ、笑顔を崩すことなく告げたこれ。
 訳:お前ら、世界的な立場わかってる?
 である。
 俺がセドルコ帝国を“最後”にしたのは、セドルコ帝国とルオートニスの長年の因縁が原因。
 ステファリーの偏りまくった考え方は、なにも皇帝一族に限ったものではない。
 代表団の貴族たちはまだマシだが、帝国主義なのは同じだろう。
 謝罪も含めた会談に来ているというのに、立場がいまいちわかっていない。
 いや、別にいいよ?
 国を守るというのであれば守ればいいと思うけど、今のセドルコ帝国には戦力もなければ財力もない。
 国力で圧倒的な差があることに、この瞬間まで気づいていなかったのだ。
 別に彼らが悪いわけではない。
 井の中の蛙というやつだ。
 自国に引きこもり、自国最強、自国万歳でやってきたのだからまさか自国がこんなに弱くなっていたなんて思いも寄らなかったんだろう。
 しょーがない、しょーがない。

「新国には外交官も設けるべきでしょう。その辺りも、僭越ながら弟のレオナルドからお聞きになればよろしいかと。ハニュレオの外交官が後日貴国を訪れると思いますので、彼らの指示に従ってどうか民のため、国を建て直していってくださいませ。皆さんは引き続き新国でも重要なポストに就かれるかと思いますので、いつか西方諸国の王侯貴族もご紹介する機会もありましょう。ぜひとも仲良くしていただきたいものですね」
「……っ!」

 よかった。
 代表団はようやく理解した表情をした。
 ——自分たちが、世界から取り残されていることを。
 愕然とした表情のおっさんたちと、怯えを滲ませたエリステレーン伯爵。
 いやいや、女性にそんな表情をさせるつもりはなかったのだが。

「…………」

 なのになぜナルミさんはまた「甘いねぇ」と微笑んでおられるのか。
 解せぬ。
 俺結構ガッツリ言ってやったと思うんだけどなー。
 まだ足りないのかぁ。

「えー……では、別室にご案内します。ステファリー殿下には今決定した処遇を伝えた上、お持ちいただいた箱を開けていただきましょう」
「か、かしこまりました」

 全員で場所を移動する。
 さすがに客人を地下牢に連れて行くわけにはいかないので、玄関ホール脇にある商人が高級にドレスなどを売りにくる広めの多目的ホール。
 そこに一人、ポツンと座らせられた白い囚人服の女。
 部屋の八方向に騎士が立ち、警備と監視を行っているため、逃げ場はない。
 俺が立ち入ると、場の緊張感が引き締まる。
 でも、元々の緊張感が高すぎた。

「シズフさん? どうしてここに?」
「ん……最近なにもしてないとデュレオに言われて……じゃあなんかやるかな、と」

 適当~~~。
 そしてもうすでに眠そう。
 立ったまま寝ることはない、ってデュレオが言ってたから、突然倒れられたら騎士たちが不憫なんだけど。

「あと、城にナルミがいると聞いて」
「そ、そういうのいいから」

 はいはい。
 さりげないイチャイチャ、やめて。
 俺は結婚後レナと初夜もまともに迎えられてないんだから。
 マジ忙しかったからね。
 今日代表団が来るっていうから資料整えたり、おもてなしあれそれを指導したり、場所の予定を押さえたり。
 レナはレナで結界の破損箇所修復で国中飛び回ってて、二日に一度しか王都に帰ってこないし。
 ふふ、ステファリー・セドルコ……俺の新婚生活をぐちゃぐちゃにしてくれやがったのは一生恨む。

「さて、ステファリー殿下。こちらがセドルコ帝国代理政権代表団の皆さんです。処刑の件は考え直していただけたので、安心してくださいね」

 でもそれをおくびにも出さずに爽やかな笑顔で恩を着せるよ。
 自分でもえぐい笑顔だな、って思いながら。

「ちなみに、皆さんセドルコ帝国の貴族ですが、彼らのお名前はわかりますよね?」
「え……?」

 訳:俺から紹介する必要はねぇよな? だって自国の貴族だもんな?
 という意味である。
 普通に考えれば当然知ってるはずなんだわ。
 俺も国内貴族は若干怪しいけど、粗方頭に入っている。
 特に元聖殿派は警戒しなければならないから、親族関係までちゃんと覚えているぞ。
 代表団は皇帝候補たちの横暴により、帝都から地方に追い出された者たち。
 いわゆる“敵”だ。
 名前を把握しておくのは、最低限だと思うよ。
 彼らに尻拭いしてもらい、俺に命乞いの手伝いまでさせてマジでなんにも感じないのならいっぺん死ぬ目に遭わせようかな……。

「……な……なぁ、なまえ……」

 あ、いらんな。
 そりゃそうか。
 真ん前に武神が立ってるんだ。
 俺は全然感じないのだが、普通の人は神と対峙すると『生物学的に格上』の存在に畏怖を感じてしまうらしい。
 ただ、これらは意図的に抑え込めるしわざと放つこともできるそうだ。
 ラウトはわざと威圧感を放つし、ディアスはその畏怖を説得力に使ったりしている。
 シズフさんは背も高いし、拘束されて床に座らせられた状態で見下ろされたらたとえシズフさんが威圧を出してなくても威圧されてる感じするよね。
 精神的にすり減っているステファリーは、ちらりと代表団を見る。
 なお、代表団の貴族たちの表情は険しい。

「……なんだ?」
「ひっ!」
「シズフさん、ステイステイ! シズフさんを睨んでるわけじゃないよ!」
「……そうか」

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