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18歳編
ルーファス・カナタ(3)
しおりを挟むああ、ファントムとも“連結”したからその手のジャンルにも興味出ちゃったんだろうな、ディアス……。
これからもどんどんすごくなりそうだな、うちの医神様は。
「デュレオの再生能力は食人細胞が急速な細胞分裂で欠損箇所を補っているのかと思ったが、肉片まで消失しても血痕で再生に至るということは情報による再生なのだろう。しかし世界に一個体限定になっているところは、俺の知識でも及ばないところだな」
「もう俺にはディアスがなに言ってんのかわかりませんよ」
神様がわからんこと俺がわかるわけもないのだが。
「ま、どっちにしても地下牢で話すことじゃないし~、用事は済んだなら上戻ろうよ~。飽きた~」
小学生か、この邪神。
「ちょっと待って。ルーファス・カナタといったよね? 君、我が国と宇宙で会談を行う手助けをするつもりはある?」
「な、に……?」
「今経験したと思うが我が国の技術力は宇宙の半分もない。千年の時の中で失われてしまった。その代わりに魔法が発達し、技術と引き換えに宇宙の民が失った寿命も持っている。我々地上と、貴殿ら宇宙の民は手を取り合って未来をよりよいものにできるのではないか?」
彼らのほしいものを、こちらは用意できる。
こちらがほしいものを、そちらは持っているだろう?
そう持ちかけて、こちらに有利に——交渉する。
ナルミさんに教わった、交渉術。
俺はつい、与えすぎてしまうらしいからそれを気をつけて。
「俺はこの惑星から戦争を根絶し、人類が掲げるだけの理想であった『世界平和』を実現したい。セドルコ帝国との件が終われば、事実上それが果たされるだろう。しかし、宇宙が不穏なままでは長続きしそうにない。……はっきり言って今我が国とまともに戦争ができるのは宇宙だけだからな」
まあ、正直なところを言うとルレーン国もかなりの技術力を有している。
ルオートニス王国と戦争ができるといったら、宇宙の他にルレーン国を置いて他にはないだろう。
なにより千年前の世界と喧嘩していた悪魔——ファントムは、ルレーン国の国守なのだ。
今は色々都合がよくてうちの国の研究塔にいるだけで。
シャルロット様もミレルダ嬢も、文句のつけようがない強者だ。
単純に敵に回したくない。怖いし。
「君は軍人だからわかりづらいかもしれないけれど、国同士仲良くしたいって話なんだ。で、宇宙との架け橋がほしい。同意が得られるのならば、条件と書状つきで釈放するのも吝かではない。パイロットということもあり、調べたところ君が一番階級が高かったからね」
懸念点があるとすれば、宇宙の勢力図。
『宇宙連合軍』というからには、連盟で協力しなければ勝てないなにかと戦っていたということになる。
とはいえ、今のところ地上からすると宇宙は宇宙でひとまとめとしてしか認識ができない。
宇宙とは仲良くしたいが宇宙の厄介ごとは持ち込まれたくない。
軍人としての階級が一番高かったこともあるが、ルーファス・カナタを交渉人に選んだのにはもう一つ理由がある。
彼の所属が大和だからである。
これまでの宇宙軍捕虜の身元は聞いたことのない地名ばかり。
しかし大和が出てきた。初めて。
大和といえば、ルオートニスがあった地にかつて存在していた国の名前。
なんならナルミさんは元大和所属の偉い人!
もっというとデュレオも一応身分は元大和所属の軍人!
どの程度大和感が残っているかはわからないが、聞いたことのない国名よりは親近感が湧く!
「どうかな? 話を受けてくれるのなら、こちらの医神と千年前のノーティスナノマシンデータだけでなく、破棄されている研究データや今ディアスが作って君に打ち込んだ薬品データなども提供すると約束しよう。希望するのなら書面に残すし、紙でよければレシピも持たせる。君が拒むのなら別の者に頼むことになるけど、君より階級が低い者に重要な情報を持たせることになってしまう。そのあたり君の立場としてどうなのかなー?」
一応別の角度からも彼の立場をわからせるようなことをつけ加えておくよ!
一番偉い人なのに、私情で国の国交に関することを下の者に任せるのってどーなのって話である。
餌はかなりでかいのをぶら下げたし、立場的な部分からも断るのは厳しいはず。
まあ、もう少し警戒心がなければ口約束でも宇宙側からの妥協を引き出したいところだったが仕方ない。
彼の中で俺はずーっと非科学的な“神”を騙るやつらのボスなのだ。
ずっと睨みつけてくるルーファスには、ここらで折れてもらえると助かるんだけど……。
「なぁ、目玉の件忘れてねぇよな?」
「ちょっとマジで黙っててもろてよろしいですかねえ!?」
タイミングが悪すぎる。
絶対わざとだろファントム。
「待て、ファントム。ナルミとデュレオとの“連結”で興味深い技術を見つけたから試してみたい。劣化した内臓などを切り取ることなく、人工細胞で完全コピーする技術だ。俺が千年前に研究していた義眼技術と合わせれば、目玉を取り出すことなく完全コピーして義眼を作り出すことができるかもしれない! 試してみたいのだがいいだろうか!」
「へー。まあ、俺はそいつの網膜が手に入ればなんでもいいわ」
「了解した!」
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