終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
320 / 385
18歳編

地下牢改革した方がいいかも

しおりを挟む
 
「ん? おい、雑兵。お前こんなとこんでなにしてんだ?」
「おやおや、これは殿下」
「え? あれ? リーンズ先輩とファントム? 二人ともなんでここに? 地下牢ですよ? ここ」

 思いも寄らない人が現れた。
 あまりにも思いも寄らなすぎてファントムに「なんか悪いことしたの? 自首?」と聞いてしまう。
 まあ、殴られましたけども。
 殴られただけでよかった。
 アイアンクローなら死んでた。

「王太子こそなんで地下牢にいるんだよ」
「ステファリー皇女に話があったんですよ。あとまあ、一応女性だし。うちの衛兵が乱暴なことをするとは思いませんけど」

 地下牢の看守たちから「ヒュ」という息を呑む音。
 俺が直々に来るとは誰も思わなかっただろうし、これだけで十分牽制になる。
 やったことがやったことなので、城内からも敵意が凄まじいのだ、ステファリーは。

「殿下自らそのようなことをなさらずともよかったのでは……」
「リーンズ先輩はどうしてこちらに?」
「地下牢に変なキノコが生えたと聞いて」
「変なキノコ?」
「ええ、最近地下牢はずっと人がいる状態なので、掃除に行き届かぬところがあるそうなのです。湿気も篭りやすく、キノコが自生してしまったのでしょう。囚人がうっかり食べて死んでしまったらと、看守長が心配して相談してきたのです。キノコは触っただけでも危険なものがありますから、わたくしめが直に採集に参った次第です」
「なるほど」

 掃除中だけ隣の牢屋に移動できるようにするとか、色々改善しなければいけないな。
 危ないキノコではないといいのだけれど、とリーンズ先輩がキノコ採取するのを思わず見守ってしまう。
 [鑑定]してみると毒はなさそうだけど、確かに不安を煽るような真っ黄色をしていて鳥肌がたった。
 キッショ!

「これは珍しい! アンモニアタケですね! 備付けのトイレに排泄していただければ、もう生えることはありませんよ」
「すべてを察してしまうキノコだな」
「やだなーもうー……」

 次に牢を使う人のことも考えてください。
 というか備え付けのトイレを使いやがれ。
 トイレも魔法で綺麗にしているから、汚いわけないと思うんだけどなあ?

「あ、で、ファントムはなんの用だったの?」
「ああ、ギア・マレディツィオーネのパイロットがこっちに収容されているって聞いて」
「なにか聞きたいことがあるの?」
「前回より綺麗な状態で回収できただろう? コクピットも潰れてないし、以前よりも深度の深い情報にアクセスできそうなんだ。それにはパイロットの網膜が必要だから、目玉一個借りてこうかと思って」
「なんて?」

 途中までは「うんうん、なるほど」って聞いてたんだけど最後だけ俺の理解を吹っ飛ばしていったぞ。
 なんで言った?
 目玉を、なんて?

「だから目玉を一個借りて行こうかと思って」
「いやいやいやいやいやいや?」
「ちゃんと返すって」
「いやいやいやいやいや。な、なに言ってんの? 捕虜虐待だよ?」
「元通りにするって」
「いやいやいやいや」

 せめて本人に協力をしてもらおうよ、と言ったら今度は「え? いいのか? 人格上書きしても」とか言い出す。
 やばいってこの人本当にもうー!
 ステファリーのところから壁裏側にいるギア・マレディツィオーネのパイロットのところにスタコラ移動していくファントムを引き止めようと「ダメだよ? ダメだよ?」と言いながらついていくと、当のパイロットは俺が想像していた倍、すでにやばい姿になっていた。
 ラウトによって腕と顔以外拘束用の結晶に包まれ、右腕にはディアスの採血用注射が容赦なくぶっ刺さっている。
 それを引き抜き、箱のような機材に入れると「では撹拌して検査をしてみよう。もういいぞ」と言うディアス。
 医療行為のはずなのに、えげつなさすぎて言葉が出てこないよ。

「ちょうどいい、まだ拘束を外すな」
「外して! ラウトすぐ拘束外して!」
「? どうした?」
「目玉を引っこ抜く」
「ダメダメダメダメ!」
「な、なにを言っているんだ?」

 ラウトがガチで困惑している。
 それはそう。
 俺もファントムに縋りつくようについてきているし、ラウトはそりゃ困惑するだろうよ。
 ディアスが冷静に「どうしたんだ? ファントムがついに医療に興味を?」とわくわくし始めたので、ファントムもスン……となりつつ事情を説明する。
 この二人の温度差も独特だよね。

「網膜をコピーすればいいのではないか?」

 そしてなんかしれっと無茶苦茶言ってるんだよね。

「網膜コピーは機材が足りねぇ」
「だが捕虜の体に手を加えるのはダメだろ」
「お前が言うか? 本当は人格の上書きをして、強制的に情報にアクセスする方が楽なんだけど元の人格に影響出るからなぁ」
「俺のは医療行為だから大丈夫だ」

 本人は全然納得してなさそうだけどなぁ。
 牢の中にいるのは黒髪に青いシャギーが入った、俺と同い年くらいの男の子。
 青い目を剥いて、体と顔半分、口の中まで結晶で侵蝕され、身動きが一切取れそうにない状況。
 可哀想……。
 しかし、右半分の顔と右腕の一部は無事。
 この恐ろしい会話はバッチリ聞こえていることだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...