終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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18歳編

地下牢改革した方がいいかも

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「ん? おい、雑兵。お前こんなとこんでなにしてんだ?」
「おやおや、これは殿下」
「え? あれ? リーンズ先輩とファントム? 二人ともなんでここに? 地下牢ですよ? ここ」

 思いも寄らない人が現れた。
 あまりにも思いも寄らなすぎてファントムに「なんか悪いことしたの? 自首?」と聞いてしまう。
 まあ、殴られましたけども。
 殴られただけでよかった。
 アイアンクローなら死んでた。

「王太子こそなんで地下牢にいるんだよ」
「ステファリー皇女に話があったんですよ。あとまあ、一応女性だし。うちの衛兵が乱暴なことをするとは思いませんけど」

 地下牢の看守たちから「ヒュ」という息を呑む音。
 俺が直々に来るとは誰も思わなかっただろうし、これだけで十分牽制になる。
 やったことがやったことなので、城内からも敵意が凄まじいのだ、ステファリーは。

「殿下自らそのようなことをなさらずともよかったのでは……」
「リーンズ先輩はどうしてこちらに?」
「地下牢に変なキノコが生えたと聞いて」
「変なキノコ?」
「ええ、最近地下牢はずっと人がいる状態なので、掃除に行き届かぬところがあるそうなのです。湿気も篭りやすく、キノコが自生してしまったのでしょう。囚人がうっかり食べて死んでしまったらと、看守長が心配して相談してきたのです。キノコは触っただけでも危険なものがありますから、わたくしめが直に採集に参った次第です」
「なるほど」

 掃除中だけ隣の牢屋に移動できるようにするとか、色々改善しなければいけないな。
 危ないキノコではないといいのだけれど、とリーンズ先輩がキノコ採取するのを思わず見守ってしまう。
 [鑑定]してみると毒はなさそうだけど、確かに不安を煽るような真っ黄色をしていて鳥肌がたった。
 キッショ!

「これは珍しい! アンモニアタケですね! 備付けのトイレに排泄していただければ、もう生えることはありませんよ」
「すべてを察してしまうキノコだな」
「やだなーもうー……」

 次に牢を使う人のことも考えてください。
 というか備え付けのトイレを使いやがれ。
 トイレも魔法で綺麗にしているから、汚いわけないと思うんだけどなあ?

「あ、で、ファントムはなんの用だったの?」
「ああ、ギア・マレディツィオーネのパイロットがこっちに収容されているって聞いて」
「なにか聞きたいことがあるの?」
「前回より綺麗な状態で回収できただろう? コクピットも潰れてないし、以前よりも深度の深い情報にアクセスできそうなんだ。それにはパイロットの網膜が必要だから、目玉一個借りてこうかと思って」
「なんて?」

 途中までは「うんうん、なるほど」って聞いてたんだけど最後だけ俺の理解を吹っ飛ばしていったぞ。
 なんで言った?
 目玉を、なんて?

「だから目玉を一個借りて行こうかと思って」
「いやいやいやいやいやいや?」
「ちゃんと返すって」
「いやいやいやいやいや。な、なに言ってんの? 捕虜虐待だよ?」
「元通りにするって」
「いやいやいやいや」

 せめて本人に協力をしてもらおうよ、と言ったら今度は「え? いいのか? 人格上書きしても」とか言い出す。
 やばいってこの人本当にもうー!
 ステファリーのところから壁裏側にいるギア・マレディツィオーネのパイロットのところにスタコラ移動していくファントムを引き止めようと「ダメだよ? ダメだよ?」と言いながらついていくと、当のパイロットは俺が想像していた倍、すでにやばい姿になっていた。
 ラウトによって腕と顔以外拘束用の結晶に包まれ、右腕にはディアスの採血用注射が容赦なくぶっ刺さっている。
 それを引き抜き、箱のような機材に入れると「では撹拌して検査をしてみよう。もういいぞ」と言うディアス。
 医療行為のはずなのに、えげつなさすぎて言葉が出てこないよ。

「ちょうどいい、まだ拘束を外すな」
「外して! ラウトすぐ拘束外して!」
「? どうした?」
「目玉を引っこ抜く」
「ダメダメダメダメ!」
「な、なにを言っているんだ?」

 ラウトがガチで困惑している。
 それはそう。
 俺もファントムに縋りつくようについてきているし、ラウトはそりゃ困惑するだろうよ。
 ディアスが冷静に「どうしたんだ? ファントムがついに医療に興味を?」とわくわくし始めたので、ファントムもスン……となりつつ事情を説明する。
 この二人の温度差も独特だよね。

「網膜をコピーすればいいのではないか?」

 そしてなんかしれっと無茶苦茶言ってるんだよね。

「網膜コピーは機材が足りねぇ」
「だが捕虜の体に手を加えるのはダメだろ」
「お前が言うか? 本当は人格の上書きをして、強制的に情報にアクセスする方が楽なんだけど元の人格に影響出るからなぁ」
「俺のは医療行為だから大丈夫だ」

 本人は全然納得してなさそうだけどなぁ。
 牢の中にいるのは黒髪に青いシャギーが入った、俺と同い年くらいの男の子。
 青い目を剥いて、体と顔半分、口の中まで結晶で侵蝕され、身動きが一切取れそうにない状況。
 可哀想……。
 しかし、右半分の顔と右腕の一部は無事。
 この恐ろしい会話はバッチリ聞こえていることだろう。
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