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18歳編

帝国の未来(2)

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 馬鹿だろお前。
 はっきりは言わないけど、とてもオブラートに包んでお伝えする。
 どうやら復権のために王都を襲い、ルオートニスの街や村を壊滅させて俺を捕えようとしたらしいが——舐めすぎだろう。
 二度の侵攻でマジなんにも学んでない。
 宇宙側で情報共有してないのかな?

「だいたい、現状だとあなた自身が俺に捕まっている状態なんですよ? だからせっかく連れてきたギア・マレディツィオーネのパイロットが身動き取れなくなっている」
『……え!?』

 え? 嘘。自覚がなかったのか、この人。
 雇い主がこんなにわかりやすく捕まってたら、雇われた方は動きづらくなるに決まってる。
 うちみたいに護衛の実力が人外レベルならいざ知らず、他の護衛まで管理下に置かれたら多勢に無勢でも逆転裁判だよ。逆転裁判やったことないけど。
 俺も大概「護衛対象が率先して前線に出るな」って怒られるけど、やらかしてる自覚はあるつもりなのでここまで鈍いと護衛たちに同情しちゃう。

「護衛対象がこんなだと苦労するでしょう? うちの国には“医神”がいますし、宇宙側はこちらの和平に応じるつもりはないんですか? 仲良くした方が得だと思いますよ? お互い」
『なっ!』

 簡単に言えば「そこのバカ放っておいて、うちと仲良くしませんか?」という裏切りのお誘いである。
 宇宙の思惑がこちらの調べた通りであるなら、瓦解を待つばかりのセドルコ帝国自称皇帝候補さんの肩を持つのはもう旨味がない。

「宇宙で発展した科学技術には俺も興味があります。土地が石晶巨兵クォーツドールで増えれば、開拓や入植してくれる労働力もほしいところ。お互いWin-Winな関係を築けると思うんですがねぇ?」
『……デュレオ・ビドロというヒューマノイドを知っているな?』

 お。
 やっとギア・マレディツィオーネのパイロットが喋った。

「知ってますねぇ。うちの国の守護神の一人です。まあ、半分くらい邪神ですけど」『引き渡せ。我々の事情はそのヒューマノイドで解決する』
「短命の呪いが、ですか? ……それを解決したいのであれば尚のこと、こちらの和平に応じていたたければ医療技術も協力いたしますけど? ルオートニスの守護神には医神がいる」

 “デュレオ”を研究しなくても、ディアスという医神が解決法を見つけてくれると思う。
 宇宙の医療技術がどれほど進歩しているかはわからないが、ギア・フィーネを作り上げた天才、王苑寺ギアンと同等の天才と呼ばれるディアスなら瞬く間に宇宙の医療技術に追いつくだろうし追い越すはずだ。

『医神? 馬鹿馬鹿しい』
「!」
『神などと都合のいい言葉を使い、石晶巨兵クォーツドールを使って世界を洗脳支配しようとしている強かな王子が、いかに千年前の最終兵器——ギア・フィーネを用いようとも、我らはその手には乗らないぞ……!』

 あ。
 あー、なるほどね。
 まずそこからか。

「なら、どうする? 千年前の兵器など骨董品。本来なら動くわけもないモノがこうして動いているのを、目の前で動いて戦えている現実から目を逸らすか? 神がただの都合のいい言葉だと決めつけて、現実から目を背け続けるというのなら、君はそこで終わりだよ」
『っ!』
「そもそも不老不死なヒューマノイドだって、自分たちで解明できないから手に入れようとしているだろう? デュレオは優しくて残酷だから、宇宙の人類のために自分を研究させると思う。でもその先にある答えはきっと絶望だよ。誰も幸せにならない」

 むしろわざと捕まって、宇宙を混沌に陥れるまでやるぞあいつ。

『だから従えとでも?』
「……宇宙って“対話”の概念失われてんの?」

 なんだろう?
 言葉は通じるのに会話がすれ違っている気がするんだよなぁ。
 ただ、この人の中で俺は“存在しない神を持ち上げて世界中を洗脳しているペテン王子”固定らしい。
 でも多分、この人は自分の目で見たものなら信じるタイプだ。
 うちの神々に会えば考えは変わるかもしれない。
 なら——

『シズフさん、降りてこられます?』
『話は聞いていたが、俺を見て信じるだろうか?』
『シズフさんを見て神の存在を信じられないのなら、その時また考えればいいかなって……』
『ふむ』

 それならば、と“連結”で呼んだシズフさんがイノセント・ゼロの隣に現れる。
 魔法だと思うレベルの速度だろ?
 物理移動なんだぜ、これ。
 二号機のギア5による機体性能の向上にプラス、シズフさんの神としての神力が加わり人智を超えた動きをする。
 ディアスの使う[瞬間移動]の魔法と言われた方がまだ納得だ。

『っ……! 新手のギア・フィーネ、だと!?』
「神の存在が信じられないのなら、その目で見て確認すればいい。神以外のなにかに見えるのなら、あなたは彼らをその存在として認識すればいいだけの話だ。ただ、俺たち地上の者たちにとって彼らは神以外の何者でもないし、神々は別に地上の人間の味方というわけでもない。宇宙の人間たちが神々の怒りに触れて滅ぶのならば、それは宇宙の人間たち自身の責任だ」

 俺は親しくさせてもらってるけどね、と、わざと小首を傾げて告げる。
 地上すれすれに飛んでいた戦闘機型の二号機が一瞬で人型に変形する。
 はぁーーー! 何度見てもかっけえええええぇ!


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